ミディアム・テンポ
福間健二
会話でも文章でも
恋のために
遠まわりして
さわりたい手をかくしている
この箱、どうなるのかな。
容積、温度、速さ。
推測とたくらみが
それぞれおなじ破滅の引き算を用意して
中くらいの板、その痛む色
ミディアム・テンポで
あかるく歌いながら
鬼になる。
色には不自由しないけど
大風の吹く夜も、外。
●Profile
福間健二
1949年、新潟県生まれ。詩人・映画監督。高校時代から文学と映画に熱中。2011年、詩集『青い家』で萩原朔太郎賞と歴程賞をダブル受賞して大きな話題になる。そのほかの詩集に、現代詩文庫『福間健二詩集』、『秋の理由』、『侵入し、通過してゆく』(すべて思潮社)など。詩論集『詩は生きている』、映画『岡山の娘』、『わたしたちの夏』など。映画の新作『あるいは佐々木ユキ』が公開中。
『あるいは佐々木ユキ』ブログ:http://sasakiyuki.doorblog.jp/
ツイッター:https://twitter.com/acasaazul
© Toshio Hirayama