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icon 2013.4.6

KILLER-BONG×マヒトゥ・ザ・ピーポー(下山)対談◆4/10「HERE AND THERE」出演の前に

「もてたいんです」「かなしいんです」「転覆させたいんです」――。芋焼酎の水割りに手を出してしまったときから、筆者が暴走する予兆はあった。3月、都内某所。自主イベント「HERE AND THERE」に出演いただくKILLER-BONGと下山(GEZAN)のマヒトゥ・ザ・ピーポーの対談取材が酒場でできるとあって、最初から胸はやる気持ちだったこともある。方や音の黒煙をふかしまくるBLACK SMOKER RECORDSの首謀者であり、K-BOMB、KILLER-BONG、GUITAR-BONGとさまざまな名義で活動する黒い蠢き。方や「サイコデリシャス・ハードポア」を掲げ、規格外の気概とほとばしりで東京を侵蝕すべく、大阪からやってきた赤い咆哮。平静でいられようか?

そもそもこの自主イベントの発端は、昨年下山に出会って激しく揺さぶられ、さまざまな媒体で書き殴ったことにあった。「ことばだけでは限界がある。百聞は一見に如かず。自分でイベントをおっぱじめてしまおう」。ジャパニーズヒップホップにとんと疎かった筆者が彼らに教えてもらったのが、BLACK SMOKER RECORDS、もといKILLER-BONGだった。アンダーグラウンドやアヴァンギャルドの文脈で語られることの多い双方だが、ポップスということばがいつなんどきも新鮮な気持ちで聞ける音楽という意味なら、彼らこそハードでファニーでセクシーなポップスだと思う。まわりがまっとうなのか自身がいかれているのか、もっと言えばKILLER-BONGはヒップホップでもダブでもフリージャズでもなく夜のガンジス河だし、下山はハードロックでもハードコアでもアシッドフォークでもなく岡本太郎の絵画だ。

酒場での話は今回の自主イベント、ライブをやること、音楽をやること、東京という街についてから、くだんの芋焼酎の水割りのせいで筆者の人生相談に……結果、謎の新感覚特殊対談になってしまった。総会話時間5時間、書き起こし文字数4万字。掲載禁止エピソードのオンパレード、胸を打つことばのパンチライン大量発生、一匹狼なアウトローたちによる筆者へのダメ出しの嵐とまとめるのもてんやわんやだったが、そこには確かに、切実に生きる男たちの志があった。これはRAWでDIYでPASSIONATEな音楽家の邂逅のしるしであり、30歳独身女の五流ライターぶりが否応なくにじみ出てしまった哀愁のかたちである。(取材・文・写真/福アニー、写真エフェクト/カルロス・尾崎・サンタナ)

 

 

――まずは自主イベントへの出演快諾、ありがとうございます!

 

KILLER-BONG(以下K):この企画は年代にまったく当てはまらないし、全員が時代を反映してるわけじゃないからOKしたんじゃないかな?音楽って宝物みたいに作ったらいいわけだから、何年経っても同じように新鮮な気持ちで聞けるものをさ。懐メロじゃねえんだから、あのときの音じゃねえんだから。そういうひとたちが出てていいなと思ったな。

 

――最初、KILLER-BONGさんは筆者を男だと思っていたそうで。そんなにごついイベントですかね?

 

マヒトゥ・ザ・ピーポー(以下M):俺もはじめ男だと思ってたよ。想像のなかでは坊主頭の眼鏡だったよ、完全に。

 

K:ことばの感じとかさあ……色気じゃない?とにもかくにも色気はスカートですよ。

 

――確かに色気はないって言われます。色気も欲しいし、巨乳になりたいし、究極的にはもてたいですね。

 

K:うん、そうだね。じゃあ露出しないと。あと肉つけること。プロテイン飲んで寝てりゃいいんじゃない?すぐ太るよ。外国人と付き合うのもいいかもね……フランス人とかアフリカ人とかは?それで新たに黒人の息吹を日本の音楽界にぶち込んでさ。

 

M:ニグロのパンチ当てようよ(笑)

 

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――いま30歳なんですけど、還暦まで生きられるとしても折り返し地点にきたから、もう人生の大感謝祭モードになってて。いままで出会ったひとや好きなひとに、少しでも恩返しできればいいなって。30歳まで生きられたらほんとに万々歳って気持ちが10歳から続いていたので……

 

K:なんだよ、ここは人生相談所じゃねえんだよ。でもまあ、俺も30歳くらいまで生きるとは思ってなかった。いまじゃ120歳くらいまで生きちゃうんじゃないかって思うけどね。

 

M:俺は30歳まであと何年だ?想像できないもんなあ……いや、無理だと思うよ。この前も血を吐いたし。

 

K:でも、生きてるね。いいんじゃない、そのときそのときの気持ちに付き合うしかない。もっと気楽に生きたほうがいいよ絶対。ところできみはなに?そうやってイベント組んで、ひとにいいって言われて、いい気持ちになりたいわけ?

 

――いや、単純におもしろそうだからやってみました。かっこいいから。

 

M:最高じゃん。

 

K:俺たちが音楽やってるのも、それと同じ気持ちなんだって。なんでラッパーなのかなんでロッカーなのかは知らないけど、いいと思うからやってみただけなんだよ。1回目でこのメンツ集められたのはすごいことだよ。

 

――下山の存在は知っていました?

 

K:JUBEが「シモヤマがー、シモヤマがー」って言うから知ってたよ。渋谷のスクランブル交差点を裸で全力疾走してるMV、見たよ。好きなタイプだね。俺ジャッキー・チェンの映画やスケボーの最後に入ってるようなシーンが好きだから。そういうものを取り込まないで、かっこつける音源に飽き飽きして、だからスキットってものをぶち込むわけだから。感性的に言うとさ、俺はファニーだったりおもしろかったりするひとが好きなんだ。そういう意味じゃばっちりだね。

 

M:ちなみにゲザンです。裸ではないですよ!とにかく一言でくくられたくない。でもほんと血を流すじゃないけどさ、体張るとかさ、リスク背負うとかさ、あまりにもやってる奴が片手間の遊び感覚でやりすぎだよ。ベッドのうえで作っちゃうっていうか。それはやっぱり俺からするとおもしろくないよね。結局人間の部分に興味あるからね。

 

K:チャレンジと失敗がさ、同時に見られるものがいい。

 

M:音なんかはるかあとなのよ、はっきり言って。おもしろい奴がやってたら、そりゃおもしろくなるでしょ。

 

K:そいつならいいんじゃないのって。俺だって絵がいいわけじゃないよ。俺が描いてるからいいだけであって、俺がもし絵描きだったらものすごい叩かれてるだろう……まったく部外者だからいいわけであって。