keijimahito 006
icon 2013.4.6

KILLER-BONG×マヒトゥ・ザ・ピーポー(下山)対談◆4/10「HERE AND THERE」出演の前に

――なるほど。ところで今回イベントにあわせてウェブマガジンを立ち上げたのは、自分の企画を告知したいっていうのももちろんですけど、新譜を出していなくてもライブは常にしているだろうから、それをすくい取るサイトにもしたくて。リリースきっかけでするインタビューは多いと思うんですけど。音源作りと違って、ライブすることについてはどういう心持ちですか?

 

K:ライブおもしろいよ。めちゃめちゃ疲れるから大嫌いだけどね。なれなれしいんだもん客とか。

 

M:俺もお客さん対応超苦手。顔覚えられないし、挨拶されても「ああ、はい」って。服やアクセサリーは覚えられるんだけどね。赤い服なんかだとパキーンと模様まで思い出せる。

 

K:俺もう酔っ払いすぎてなんにもわかんない。ギャラ配っちゃってるらしい。地方から帰ってきたら、だいたいなくなってるもん。

 

M:太っ腹なところがあるんだね。

 

K:あるね。知らない間になれなれしくなってきた奴にもおごるし。

 

M:優しい(笑)

 

K:正直、ライブはあんまり覚えてない。同じ歌7回くらい歌ってる日もあるよ。まったく歌が出てこないんだよね。ここ2年くらいに出した歌、なんにも歌えないからさ(笑)出てきた歌を歌って、断片でつなぎ合わせる感じかな。あとはゴニョゴニョ言っとけば……

 

M:はははは、それブッ飛んでるって言うんですよ。

 

K:でも超本気だよ。一切手抜きしない。スタッフのひとがどんどん酒持ってくるから、やってる最中もどんどん飲んでんだよ。終わる頃には4合くらい飲んでるんじゃない。汗が半端ないもんね、あれは芋焼酎が出てるだけだと思う。あと結構裸になっちゃうタイプ。チ○コ出しちゃうタイプ。

 

M:パンチありすぎ。

 

K:京都で、朝8時頃に5人くらいで誰がチ○コの皮が一番長いかみたいな勝負を路上でやって、引っ張りすぎて皮切れてたことあるもんね。朝起きたら皮から血が出てて、携帯も壊れてて、聞いたら「めっちゃ皮のばしとったでー」って。

 

M:男ですから勝ちにいくのは当然だね。登りたい場所のために血を流すってことや。

 

K:勝てへんかったけど。

 

――マヒトゥくんはよくライブのことを「戦場」と言ってるよね。この前ラジオで田原総一朗とロバート・ハリスが対談してて、「大島渚や若松孝二は映画じゃなかった、爆弾だった」って言ってたんだけど、奇しくもふたりとも亡くなって。いま、「爆弾」は少なくなってるように感じますか?

 

K:爆弾は下山でしょ。俺は秩序あるからね。

 

M:俺らもありますよ!

 

K:まあ俺ラップするときはK-BOMBだから、爆弾って名前だもん。子どものときからなんでか爆弾って言われてんだもん。下山と俺は家近いってわかったから、今度爆弾の曲作って歌ってやるから、それで満足しろよ。

 

M:ああ裏声でやりますよ。だいぶ話変わっちゃうんですけど、やっぱりエチオピアジャズ好きなんですか?俺もともとTHINK TANKは聞いてたんですけど、ムラトゥ・アシュタケとかモハメド・アハメドとかにはまってた時期があって、それがKさんのミックスに入ってて「ういうい!」ってなって。

 

K:モハメド・アハメドってドラムのひとかな?クードゥーレコードの。俺あんまひとの名前覚えられないんだよ。

 

M:再発は多分エチオピークスってレーベルですね。ミックスのなかで使ってたんですよ。

 

K:なに使ってたのかよくわかんないけど、莫大な数聞いてるからね、たぶん使ってると思うよ。いろんな国のものをたくさん持ってる。

 

M:心斎橋にあるプランテーションってレコード屋がすげえよくて。全部自分で買い付けてて、それこそタイに80回くらい行ってたり。曲はどうやってやってるんですか?

 

K:テープに録ってるだけだよ。

 

M:アイチューナーとか?

 

K:MPCからテープに録って、マスタリングしてるだけだよ。

 

M:ネタみたいなのはどうしてるんですか?

 

K:iTunes。Youtubeでもいいし、ラジオでもいいし。無音だと20分しか集中力もたないから、なにかやりながら……

 

――あまりもの置かないんですか?

 

K:全然置かない。俺の家の写真見してあげようか?

 

M:すげえサービス精神……(写真を見る)いやいやこれはないない。マジで!?遊びに行ってもMPCしかないじゃないですか(笑)

 

K:なんにもないんだよ。寝るだけさ。

 

――普段はなにされてるんですか?

 

K:ライブやBLACK SMOKER RECORDSの発送作業してるよ。だから音源作る暇ないよ。

 

M:俺は毎日歩いてるね。近所のおばちゃんに挨拶かましたりして。ただ昨日から飯食ってないし、財布落としたし、家出てかなあかんからへこんでる。こっち、職質もめっちゃ多くありません?

 

K:俺は職質で出すとき用に、肉食系のウ○コのレプリカ持ち歩いてるよ。

 

M:漫画や……飯は食ったほうがいいすね、元気なくなりますもんね。

 

K:飯食わないのと時間がありあまってるのって、毒だからね。

 

――ele-kingの5lackさんインタビューで、KILLER-BONGさんのことを「日本人らしからぬ日本人」だっていうくだりがあったんですけど、自分的に思うところはあります?

 

K:日本人が決まりすぎてるだけでしょ。ネクタイなんて学生服みたいで清すぎる。日本人らしい日本人っていうことこそ、枠にはまりすぎてて俺にはできないことだよ。逆にリスペクトしてる。そういうひとたちが経済回してるわけだから。俺には俺の場所があってさ、やりたいことがあってっていうのが、日本人らしからぬ日本人ってだけでしょ。自分のことを仕事にする、わたくしごとを仕事にしてるわけだから、そういう意味じゃ自由業だよね。でもまあわかんないよ、俺ヤンキーだから。ヤンキーみたいな気分なだけ。負けたくない、気持ち悪い、いわしたいって。音楽やってると何人かってあんまり気にしなくなるんだけど、最終的には日本人だね。

 

――海外に行って、そう実感することが?よくお誘い来るんじゃないですか?

 

K:全部断っちゃったよ。あとインタビューとか無理。BLACK SMOKER RECORDSのドキュメンタリー撮りたいっていう海外メディアもあったけど、それも断っちゃった。海外にはよく行ってるよ。ビジネスや旅で、ニューヨークにシカゴ、ボストン、インド、ネパール、タイ、スリランカ……近年は行ってないけど。

 

keijimahito 008

 

――そもそもやろうと思えばなんでもできそうなおふたりですけど、なんでKILLER-BONGさんはラップを、マヒトゥくんはロックバンドを選んだんですか?

 

K:成り行きだよ。スケボーしてて金が欲しいからそうなったんだよ。パーティーでラップしたら金くれるって言うから。金がなきゃ歌えばいいだけだからさ。

 

M:そもそもなんでって言うけどさ、理由なんか全部後付けなわけよ。俺はいまギター持って歌ってるけどさ、そうじゃない可能性だって全然あったし。なんにも考えてないし、わかんないし、どうでもいいもん。

 

――やってみて、ヒップホップの、ロックの、可能性と限界は感じていますか?

 

K:調子いいよ。明日うまくいけばいいかなって感じだよ。常に希望も絶望も持ってるしさ、隣り合わせで生きてんだ。ヒリヒリするよ。ムヒかな?こんなときは。

 

M:毎日嫌気がさしてるけどね。ギターが折れたらギタリスト終了さ。希望だけ持ってたら「パーマン」だよ(笑)

 

K:そういう奴はちょっとした発言で潰れるわけだよ。俺が一番必要だと思ってるのはスキルよりメンタリティだから。そうだろ?言いたいことは言って、叩かれてもいいんだよ。それで明日があるのかって言われたら、それは俺が作るわけだから。

 

M:ほんとにシンプルだよね。怪物か否か。友川(かずき)さんにもよく言われたよ。「音楽やるならやくざだろ?」って。

 

K:シンプルだよ。いいか悪いか、ゼロか100かだよ。途中の気持ちを持ってるひとたちに聞いてもらいたくないね。好きか嫌いかでしか聞いてもらいたくない。顔も出さない。嫌だったら嫌って言えないように生きるなんて嫌。みんな、嫌だっていう理由を作品として残せばいいんだ。ブログでもなんでも、この時代に残せないことはないなって思うよ。

 

――KILLER-BONGさんはBLACK SMOKER RECORDS、マヒトゥくん率いる下山は十三月の甲虫、ZAZEN BOYSはMATSURI STUDIO、5lackさんは高田音楽制作事務所と、それぞれ自主レーベルで活動していますね。

 

K:誰の言うことも聞きたくねえからだよ。へつらうことはできない。あと待てない。いますぐ出したいのに、いますぐ金が欲しいのに、3ヶ月待って6ヶ月先の金が欲しいわけじゃないからさ。あとこの際言っとくと、リスナーに歌いたいことはない。自分や同業者に歌いたい。もっと言えば自分や同業者を殺したいからやってんだよ。リスクを背負ってやるのが好きなんだよ。だから違うジャンルのイベントに出て、爆弾仕掛けて。全力でやってるから周りがどう思おうが関係ない。

 

――おふたりはアヴァンギャルドやアンダーグラウンドの文脈で語られることが多いと思うんですけど、それに対するフラストレーションもありそうですね。

 

K:そんな文脈だけでやるつもりはないよ。オーバー/アンダーどっちもいけなければやる意味がない。アンダーグラウンドってある意味逃げ。俺はもう常に勝負したいからどっちもいくっていう。

 

M:それは同感だね。そう言われるのが嫌で東京に出てきたところもあるしさ。「関西なんちゃら」って、俺別に関西人じゃねえしさ。アングラもメジャーもない、対人間用の劇物を放り込むだけや。音楽のための音楽じゃない、生きてる人間のためのね。

 

K:俺は俺なんだよ。きみはきみだし。

 

M:ほんと好き勝手やりたいのがあるよ。ジャケットからMVから、自分らでやったほうが楽しいし。そのプロセスを適当に誰かに任せて、なにが楽しいのって。やる意味もないよ。楽に金稼ぎたいならなんだってやり方はあるだろ?

 

K:そうそう。自分の音楽にひとが絵描いたらさあ、あべこべになっちゃうよ。内容とかことばとか、伝わる幅が狭まるよ。

 

――ジャンルも越境していきたいようなところが……

 

K:ヒップホップだったりフリージャズだったりダブだったり、そういうジャンルにわけられちゃうとなると、ちょっとつらいよね。だったら自ら作りたいよね。

 

M:ジャンルなんてさ、とっくに壊れてんじゃん。守ろうとしてる奴らがいるだけでさ、わざわざそこに入る必要もないよ。

 

K:ね。いまは得意じゃないことやりたいってのはある。20年くらい歌ってればさ、甘んじられちゃうっていうか。全然知らないところに行きたい。

 

――そのモチベーションってなんなんですか?

 

K:「なになに?なにヒップホップってなんなの?」って、知らないからはじめたときのモチベーションと同じなんじゃないの。俺は常に知らないから知りたいって思うけどね。じゃなきゃやりたくもない。