――確かに(笑)。5月からは2010年以来となるアコエレのツアーも始まりますよね。これは改めての質問になるかと思いますが、向井さんの中でアコエレをやる意義っていうのは、どういう部分が一番大きいのでしょうか?
向井:歌でしょうね、それは。ZAZEN BOYSでやってる曲をアコエレでももちろんやるし、NUMBER GIRLの曲も、アコエレでしかやらない曲もいっぱいありますけど、ギターと歌だけなんでですね、歌を聴いてもらいたいっていう気持ちが強いかもしれないですね。同じ曲なんだけど、声の出し方が違いますから。ZAZEN BOYSの中でアコギをポロンと弾いてフワッと歌っても、聴こえませんからね(笑)。自ずとがなり立てるんで、メロディを追ってる暇はないし、余裕もないですけど、一人でやると自分のバランスで全部コントロールできますんで……ZAZEN BOYSも私がコントロールしてるんだけど(笑)、でも人と人との呼吸の合わせあいがバンドなんで、一人でやるのとは違いますよね。ただ、同じ曲、同じ言葉を用いてやってるんで、出所は一緒だけど、出し方がちょっと違うってことですね。
――ZAZEN BOYSの最新作である『すとーりーず』は、これまでの作品に比べると、ポップな歌メロを多く含んだアルバムでしたよね。
向井:メロディックな方がお客さんは聴きやすいっていうのは知ってますよ、知ってる知ってる(笑)。でも、あのアルバムでメロディの起伏が結構大きい曲があるのは、「そういう曲が作りたかった」っていうだけです。
――アコエレからのフィードバックということでもないですか?
向井:フィードバックっていうのはないですね。まあ、よくありますよね、別の活動をして、それによってまた新たな刺激を持ち帰るみたいなね。でも、いつも刺激的なんで。確かに、形は全然違いますけど、ZAZEN BOYSでギターを弾いて、ビートを組んで、言葉を放って、お客さんと面白味を共有したいってところと、アコギ一本でチャラーンってやって、「優しげなサウンド、いいでしょうよ?」っていうのを共有したいっていうのは、同じですからね。
――では、今日は「ライブ」がテーマなので、ちょっとベタな質問もさせていただきたいと思うんですけど、向井さんがこれまでに見たライブの中で特に印象に残っているライブ、「生涯ベストライブ」みたいなのってありますか?
向井:ああ、ありますよ。十何年か前ね、NUMBER GIRLでフジロックに出たとき、我々は出番が一番最初だったんですけど、一番最後がNEIL YOUNG & CRAZY HORSEだったんですよ。で、出番が最初だったんで前の日からいまして、フジロックフェスティバル楽しいから盛り上がって、次の日出番なのにガンガン酒飲んでたんですね。まあ、出番あろうがあるまいが飲んでしまうんだけど、一番最初だから昼前で、酒が残ってですね、具合悪かったんです、すっごく。でも、ライブが始まったら具合の悪さはどっか行ってしまって、よかったんですけど、終わってからまた飲むわけですよ。そりゃあ、やっぱ気持ち悪くなってですね。
――(笑)。
向井:その日はMOGWAIも出てたんですけど、ずっと食堂街にいて飲んでたんで、山越えてMOGWAIのステージまで行って爆音聞くのはキツイと思って、断念してしまって。
――僕もその年行ってましたけど、MOGWAIはホワイトでしたもんね。
向井:そう、それぐらい具合悪くなってて、CRAZY HORSEが始まる頃にはもうこれはダメだと、残念だけど宿に戻ろうと、フラフラになりながら宿に向かって歩いて行ったら、CRAZY HORSEが始まったわけです。一曲目“DON’T CRY NO TEARS”のイントロが聴こえた瞬間、ガッと振り向いて、グリーンステージ走っていって、前っつらの方にガッと潜り込んで、見たわけよ。2時間以上やりましたけど、具合の悪さを吹っ飛ばすぐらいのパワーっつうかね、あれはすごく印象に残ってますね。またさらにビールを追加で買いに行きましたからね。
――そこから先は体調は大丈夫だったんですか?
向井:全然、大元気でしたね。CRAZY HORSEの演奏っつうのが、こう言っちゃなんですけども、ギター2人はずっとチョーキングしてて(笑)。
――(笑)。
向井:ベースはボンボンボンボン、図太いけど、ラインがはっきりしないモワモワな感じで、ドラムもポコポコしてて、決してLED ZEPPELINみたいにシャキッとはしてないんですね。しかしながら何とも言えない心地のいいノリっていうのがあって、それを目の当たりにしましたね。CRAZY HORSEのライブレコードとかも聴いてて、それも好きなんですけど、ライブで見て「これか!」と思って。ずっとチョーキングしてるけど、「ずっとしててくれ」って(笑)。ライブバンドなんだなって、すごく認識しましたね。
――あのライブは本当にすごかったですね。では、これは難しいかもしれないですけど、ご自身のライブの中で「このライブは特に印象に残ってる」っていうライブを挙げることはできますか?
向井:やっぱり、ライブの醍醐味っていうのは瞬間瞬間で、「今決まった」とか、「今この観客と歌ってるチャルメラ最高」みたいなね、ホントに瞬間瞬間で「これを求めてやってるわ」みたいなことがよくあるわけです。だから、この日がどうだったっていうよりも、瞬間瞬間ですね。もちろん、いろんなエピソードはありますけど、ひとつ挙げるのは難しいね。
――そうですよね。じゃあ最後に、最近のライブで「こういう瞬間にグッと来ることが多い」っていうポイントがあれば教えていただけますか?
向井:ギターのアレンジが結構変わってまして、フレーズ作って、ギター2本で絡んだりして、ギターロックになってますね。EAGLESみたいな、“Hotel California”のツインリードギターみたいなね(笑)。
――なるほど(笑)。では、4/10のイベントでもその絡みには要注目!ということですね。
向井:まあ、かといって、ギター弾く曲少なかったりするんですけどね(笑)。
●Information
ANNIE FUKU presents HERE AND THERE vol.1~RED SPRING~
2013年4月10日(水、死闘の日)@渋谷clubasia
開場18:30/開演19:00 前売3000円/当日3500円(ドリンク代別)
出演:ZAZEN BOYS、下山(GEZAN)、KILLER-BONG、5lack
【総合インフォメーション】
http://twitter.com/AnnieFuku(主催者直通)
【会場インフォメーション】
http://asia.staging.iflyer.jp/venue/flyer/124504
【予約・購入】
hereandthere2013@yahoo.co.jp(主催者直通)
03-5458-2551(渋谷clubasia)
http://cc.eplus.jp/c/tl?i=giFmKjQ268HxEBhm(e+)
●Profile
向井秀徳
ロックバンド「ZAZEN BOYS」のギター、ボーカル、キーボード