icon 2013.5.1

文月悠光×福間健二◆POETRY FOR LIFE(第4回)

変身

文月悠光

 

この指とまれ と

さかんに名前呼び合って

頬杖のなかに溶けていく。

この箱、どうなるのかな。

ふたりで破きはじめた包み紙。

蝶のリボンは、風に手渡す。

空っぽだったら、どんな顔しよう。

名前を当てずっぽうにつむぎ出し、

わたしたち、指から指へとびうつる。

ユキからユイへ/ユリからユミへ

中くらいの季節だから

誰を連れても春は体温。

旅はさびしい変身です。

 

未明、箱は開けずに埋めてしまった。

きれいなので土をかぶせた。

土はすみずみまで秘めている。

見えないふたをこじ開けるため

ひとはかかとで土を抱く。

この土とまれ。

わたしの足はこうばしい。

 

 

 

●Profile

近影正面(小)文月悠光

1991年北海道生まれ。 2008年、第46回現代詩手帖賞受賞。2010年、第1詩集『適切な世界の適切ならざる私』(思潮社)で第15回中原中也賞、第19回丸山豊記念現代詩賞を受賞。エッセイ・書評などを執筆。ナナロク社のホームページにて詩を連載中。タイツブランドtokoneに参加し、タイツに詩の言葉を載せる。2013年6月、第2詩集『屋根よりも深々と』を刊行予定。早稲田大学教育学部に在学中。

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