icon 2013.6.6

文月悠光×福間健二◆POETRY FOR LIFE(第9回)

息子たちの街

福間健二

 

ゆっくりと動く

小さな箱が

ひとつの希望でありつづけるために。

まちがった想像から街に生まれる

何番目の息子が葬られて

そのまま、その肩、沈ませない

変形性の「車道、歩道、さらに狭い通路」なのか。

押し倒され、起伏を影たちに支配されても

街こそが「たいへん入り組んだ生き物」だったね。

夢中のつま先、退化させないように

歩くだけでもときには重労働。

ポケットの水の精が

ふくらはぎを直撃して

九番目の息子は十番目の息子の上にしりもちをつく。

 

 

 

●Profile

福間健二

福間健二

1949年、新潟県生まれ。詩人・映画監督。高校時代から文学と映画に熱中。2011年、詩集『青い家』で萩原朔太郎賞と歴程賞をダブル受賞して大きな話題になる。そのほかの詩集に、現代詩文庫『福間健二詩集』、『秋の理由』、『侵入し、通過してゆく』(すべて思潮社)など。詩論集『詩は生きている』、映画『岡山の娘』、『わたしたちの夏』など。映画の新作『あるいは佐々木ユキ』が公開中。

『あるいは佐々木ユキ』ブログ:http://sasakiyuki.doorblog.jp/

ツイッター:https://twitter.com/acasaazul

© Toshio Hirayama