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icon 2013.7.31

BiS階段インタビュー「これは希望なんだ」◆『BiS階段』発売によせて

キング・オブ・ノイズとオルタナティヴ・アイドル、まさかの邂逅。いや、これはもはや偶然でもなんでもなく、出会うべくして出会った二組として紹介するべきだろう。非常階段とBiSのメンバーによる新バンド=BiS階段。彼らがついにアルバム『BiS階段』を完成させてしまったのだ。

きっかけは2012年11月に四谷OUTBREAK!で開催されたイヴェント〈自家発電 vol.00〉だった。JOJO広重からのアプローチによって実現したという彼らの共演は、結果的に両者の新たな可能性を引き出すことになり、交流はそこからさらに発展。ついにはこうして音源を発表するまでになった。

BiSの楽曲に非常階段の粗暴なノイズが絡みつく。BiS階段の生み出すサウンドの構造は至ってシンプルなものだが、どうにもこれが泣けるのだ。いや、BiSの楽曲はもともと泣けるんだが、そこに脳天を突き刺すような激しいノイズが併せられることで、おセンチ度が一気に2割増し。この楽曲とノイズの相性のよさには、それぞれのファンも思わず舌を巻くに違いない。

現在のBiSは新メンバー加入を経て、ニュー・シングル「DiE」がウィークリーで過去最高順位を記録したばかりだ。上り調子のこのタイミングで非常階段とタッグを組むのは、さすがに商業的な自殺行為なんじゃないか。正直、このインタヴューに臨むまではそんな思いもなくはなかった。しかし、どうやら彼女達の見据える先にはもっと大きな夢がいくつも転がっているようだ。JOJO広重はこう語ってくれた。「これは希望なんだ」と。もしかすると、このプロジェクトは我々の想像以上にスケールの大きなものになるのかもしれない。(取材・文/渡辺裕也、写真/福アニー)

 

 

「これまでのBiSの歩みに怖気づいたりしないで、もっとその歴史に血だらけの爪痕を残したい」(ファーストサマーウイカ)

――まずはBiSのみんなに。「DiE」オリコン・ウィークリー初登場6位、おめでとうございます!

 

BiS一同:ありがとうございます!

 

――まさに悲願のトップ10入りですね。しかも今回はグループの体制が変わった直後で、これまで以上に結果を求められたと思うんだけど。リーダーは今回の結果をどう受け止めていますか。

 

プー・ルイ:「えぇ!?」って。もう絶句しましたよ(笑)。

 

――毎回けっこうドライに受け止めている印象があるけど。

 

プー:いやいや、そんなことないんですよー。表には出さないだけで、悔しい思いもたくさんしたし。「GET YOU」(Dorothy Little Happyとのコラボレーション・シングル。ウィークリー・チャートで最高11位)のときなんか、ものすごく悔しかった。だから、今回の報告が電話できたときは、今までに起こったことが一気に頭をよぎって、ちょっとエモくなりましたね。

 

――たとえばどんなことがよぎったの?

 

プー:もう、初期の頃からぜんぶですよ。走馬灯です(笑)。死ぬんじゃないかと思った。

 

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――じゃあ、その結成時から活動を共にしているノンちゃんはどうでしたか。

 

ヒラノノゾミ:ドッキリかと思いました。特に最近はこれまでにご一緒したことのあるアイドルさん達がチャートでいい結果を残しているのを見て、「みんなすごいな。いいな」と思ってたので。純粋にうれしかったですね。

 

――JOJOさんは今回の出来事をどう見ましたか。

 

JOJO広重:僕も純粋におめでとうと言いたい気持ちです。実際に彼女たちはすごいプレッシャーを感じていたと思う。オリジナル・メンバーはもうノンちゃんとプー・ルイしかいない。しかも今回はこうしてメンバーの半分以上が入れ代わった直後のシングルだったわけで、もしこれで「もうBiSにはがっかりだ」という反応がチャートという形で表れたら、やっぱりものすごく傷つくと思うんです。きっとファンの人たちも、いろんなことを危惧していたはずでしょう。そういう状況でのベスト10入りだから、やっぱり言葉にできない気持ちなんじゃないかな。それにこの結果はユフちゃんにもいい応えを返せたと思う。ホントに素晴らしいことだと思いました。

 

――新メンバーのみんなはどうですか。

 

テンテンコ:最初はやっぱりすごく驚いたんですけど、それからじわじわといろんなことを考えましたね。やっぱりこの6位はここまでのBiSの長い歴史が獲得した順位なので。私はそこにポンと乗っかったままの状態だから、今はここがスタート地点だっていう気持ちが強いです。すごいプレッシャーだけど、ここで高まった期待感をさらに上回っていきたいと思ってます。研究員の方からはよく「なんかダンスがコロコロしてるよね」って言われるんですけど(笑)。

 

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プー:大丈夫だよ。2年やってもドテドテだって言われてるからさ。

 

ミチバヤシリオ:私たちみんなドテドテだよね(笑)。ドテドテ界隈の人達。

 

――(笑)。サキさんとウイカさんはどうですか。

 

カミヤサキ:今回の順位は、ユフちゃんが脱退する日までがんばってくれたことも含めて獲れたものだし、リナハムさんとユケさん、ワッキーちゃんのおかげだという気持ちが強いんです。でも、私が感じているその重みは、ノンちゃんとプーちゃん、ミッチェルの感じているものと比べたら、きっと大したことないと思って。自分としてはこの次に出すものへの気持ちがより強くなりました。

 

ファーストサマーウイカ:私もふたりの言ったことがすべてだと思います。武道館という目標設定も初期のBiSがつくったものだし、今回のオリコンのことも私にはあんまりリアリティがなくて。それでもこうして結果がでてくると、それが本当に夢物語じゃなくなってくる。そうなると私はけっこうネガティヴなので、すべてがプレッシャーに感じてしまうんですよね。

 

――最近のウイカちゃんが目のまわりを黒くメイクするのは、そこで自分なりの見せ方を模索しているからなのかな。それともBiS階段での活動を意識してるから?

 

ウイカ:これは、勝手なイメージとして、遠藤ミチロウさんとか、あの時代の怖い人達がみんな黒くしてたから、その要素を自分たちにも加えていけたらなって(笑)。今回のBiS階段のアルバムで、初めて私たちのことを知る人だってきっといるはずだから。きっと6歳くらいの子が「なんか顔色の悪いお姉ちゃんが歌ってるよ~怖いよ~」ってなる(笑)。でも、その子たちがもう少し大きくなったときに「俺達が最初に聴いたノイズ音楽はBiS階段だったんだ」みたいなことを語る世代になってるかもしれないんですよね。

 

テンコ:それ、すげえ(笑)。

 

ウイカ:だから、これまでのBiSの歩みに怖気づいたりしないで、もっとその歴史に血だらけの爪痕を残したいなって。