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BiS階段インタビュー「これは希望なんだ」◆『BiS階段』発売によせて

「最初はどうなるかと思ってたけど、やってみたらまったく違和感がなかった」(ミチバヤシリオ)

――BiS階段が多くの人にとって「はじめてのノイズ」になる可能性は、大いにあり得る話ですよね。

 

JOJO:実際にBiSの研究員のみなさんのほとんどがそうですよね。昨年11月のライヴがものすごくよかったんですよ。BiSのお客さん達が非常階段のノイズをなんとか理解しようとしてくれているのはすごく伝わってきました。とても特別な瞬間だったと思う。だから、「これで終わらせるのはもったいないな」という気持ちがすぐに沸いてきて、CDも出せないかという話をこちらから提案させていただいたんです。

 

――結果的にJOJOさんはBiSのメンバーが入れ替わる時期を間近で見ることになりましたね。この新体制に関してはどう見ていますか。

 

JOJO:ちょっと運命的な感じがしています。僕、新メンバーのオーディションを少しだけ審査員席から見させてもらったんです。そのときにサキちゃんが一生懸命にアピールしている姿を見ていたから、その子とまた会えたことにすごく運命を感じるし。テンちゃんとは今年の春にライブハウスで対バンしてるんですよね。そんな彼女と今同じバンドのメンバーとしてこうして一緒にいることもそう。ウイカちゃんは大阪で演劇もやっていたらしいんですが、僕も大阪出身で、学生時代はずっと演劇部だったんです。それで今度『寺山修司音楽祭』にウイカちゃんも一緒に出ようと誘って。だから、3人ともすでにどこかでつながっていたような感覚があるんですよね。違和感がまったくない。そもそもBiS自体が、初めてPVを見た時から、僕らと遠いところにいるグループじゃないと思ってたので。さすがにブリブリのアイドルだったら難しかったと思うけど、彼女達はこういうパンキッシュな子達だし、もともとの地平が近いような感じがありましたね。

 

――すぐに噛み合うだろうと。

 

JOJO:もともとBiSのことは研究員さん達が教えてくれたんですよ。というのも、ツイッターで「ももいろクローバーZと非常階段で、ももクロ階段が出来たらすごい」なんて話が出てたんです。そうしたら、BiSファンの何人かが「JOJOさん、だったらBiSもいいですよ」と言ってくれて。それで実際にチェックしたら「あ、ホントだ」と。

 

――BiSのみんなにとっても、非常階段みたいな音楽との接点ってそうはなかったと思うんだけど、戸惑いはなかったのかな。

 

プー:楽しかった! 何よりもそれが一番でした。「鼓膜がすげー!」ってみんなで言ってました(笑)。

 

ミチバヤシ:ホントにかっこよかったしね。確かに最初はどうなるかと思ってたけど、やってみたらまったく違和感がなかった。

 

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――非常階段は、BiS階段の前に“初音階段”としてのリリースもありましたね。JOJOさんはBiSと初音ミクのそれぞれどんなところに面白味を見出しているのでしょうか。

 

JOJO:あっちはボーカロイドですから、僕はあくまでも楽器のひとつとして考えています。それこそ昔のヴォコーダーみたいな感じですね。ただ、初音ミクにはああいうキャラクターがあるし、そこにすごい数のニーズが集まっている。そこにノイズを絡めてみたらどうだろう、という発想から始まったのが初音階段です。

 

――初音階段はあくまでも制作アプローチのひとつだと。

 

JOJO:その通りです。で、BiS階段はバンドですから。生身の人間同士が同じステージでやるわけで、初音階段とはまったく意味が違いますよね。

 

――では、今回の音源制作に関してはどういうプロセスで進めていったんでしょうか。基本的にはBiSのフォーマットに非常階段のエッセンスが加わるという作りになっていますね。

 

JOJO: BiSがリリースしてきた既存の楽曲に非常階段の音を足したいということが、まずはひとつ。その上でノイズのコラージュを1曲だけ入れたいという希望を僕ら側から出させていただきました。あとは戸川純さんの「好き好き大好き」ですね。非常階段でお世話になっているテイチクのディレクターさんが、戸川純さんも担当されていたんです。そうしたらテンちゃんが「自分にとってのアイドルは戸川純さん」と言ってたので、これもまた運命的だなと(笑)。戸川さんご本人にもすでに聴いて頂けたんですが、「オリジナルよりこっちの方がいい」と言って頂けたんですよ。

 

――それもすごい話ですね。

 

テンコ:もう、ヤバすぎですよ…。

 

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JOJO:レコーディングで一番神経を使ったのは「hide out cut」でしたね。「PPCC」みたいなノリのよい曲に関しては特に問題ないんですけど、やっぱりあれは歌をしっかり聴かせたい曲だったので。僕らの使うノイズは、センチメンタルなものにうまく噛ませると、より心にぐっとくる。それは今までの経験でわかっていたので、そこをどうやってうまく聴かせるかはかなり考えました。

 

プー:そこまで考えてやってもらえてるんだ。

 

ミチバヤシ:嬉しいね。

 

――JOJOさんはBiSの存在自体だけでなく、楽曲にもすごく惹かれているんですね。

 

JOJO:もちろん。美川さん(T.美川)なんて、iPodで通勤中に毎日聴いているくらいなんですよ(笑)。BiSはとにかく歌詞がいい。女の子らしい気持ちがちゃんと綴られるし、そのすごく切ない部分をはっきりと書いている。「明日に向かって歩いていこう」みたいなものではなく、どこかに影があるんですよね。それが「DiE」みたいに、どんどん絶望的な方に向かっていく(笑)。そのセンチメンタルな部分と僕らの破滅的な部分がうまくシンクロできるんじゃないかと思ったんです。

 

――なるほど。そういえば、ちょうど「DiE」の発売初週の結果が出た日に、DOMMUNEでBiS階段の結成記者会見が開かれましたね。あそこでJOJOさんが、「BiS階段は間違いなく伝説になるからぜひ立ち会ってほしい」と力強くおっしゃっていたのがすごく印象的でした。率直に、JOJOさんにそこまで言わしめるBiS階段って一体なんなんだろうと思ったんです。

 

JOJO:簡単に言うと、アンダーグラウンドでやれることは基本的に非常階段でぜんぶやってきたつもりなんです。つまり、今後どんなにアンダーグラウンドからすごいバンドが出てきたとしても、非常階段以上のものにはならないと思っている。どんな理屈をこねても、どんなパフォーマンスをやっても、それは僕らが30年前にやったことになってしまう。いわゆるアンダーグラウンドの世界で僕はトップにいるつもりなんです。

 

――かっこいい。

 

JOJO:その僕たちが、こうしてBiSと一緒にバンドをやるということもまた、過去になかったことですよね。だって、チャートのベスト10に入る現役のアイドル・グループが、これから非常階段と一緒に極悪なパフォーマンスをやろうとしているわけですから(笑)。それは誰にでもできることじゃないんです。