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icon 2013.11.18

永原真夏&工藤歩里インタビュー「ヒーローじゃなくてスターでありたい」◆SEBASTIAN X『POWER OF NOISE』発売記念企画(後編)

男女4人組バンドSEBASTIAN Xの2ndフルアルバム『POWER OF NOISE』が8月にリリースされてから、はや3ヶ月。

 

HEATHAZEでは、彼らのホーム・吉祥寺の街を散策した発売記念企画の前編に続いて、永原真夏(Vo)と工藤歩里(Key)のインタビューを後編としてお届けする。永原単独のインタビューが多いなか、工藤とふたりでの登場はかなりレアだ。

 

取材は新作リリース前に行った。曲を聴いて感じたことやぐっときた歌詞に触れながら、変化球な質問を投げかけてみることに。東京で生まれ育ったことや学生時代の話、新作制作時に救われた一言から、文化、母性、生命力といったどでかいことまで、たっぷり語ってくれた。

 

11月22日(金)には、恵比寿LIQUIDROOMにて、レコ発ツアーファイナルのワンマンライブを敢行。『POWER OF NOISE』を聴いて、会場に足を運んでみよう!(取材・文/福アニー)

 

 

「なにより歌うこと。作ること。ひたすら行動すること」(真夏)

――今回は新作『POWER OF NOISE』が全10曲ということで、1曲ずつ、聴いて思ったことや歌詞をすくいながら質問していこうかなと。

 

永原真夏(Vo、以下真夏)楽しみ!

 

――さっそく1曲目「POWER OF VITAL」。「命のキャンバスに/自由を描きましょう/聴こえてくるバイタル」の「バイタル」って「生命力」って意味だけど、10代と20代、あのときといまの生命力の違いって感じることある?

 

真夏:10代の頃はそれこそすべてを持て余してる感じでしたね。パワーを発散する場が健全にスポーツとかだったらよかったんですけど(笑)

 

――どんな学生だったんですか。やんちゃだった?

 

ふたり:ふふふふ。

 

工藤歩里(Key、以下歩里)とくに部活をするわけでもなく…

 

真夏:めちゃくちゃ遊びました。クラブで朝まで遊んで、そのまま学校に行って学校で寝るっていう。そうやって実際の現場に出向いて、いろんな大人から刺激を受けて、音楽を掘って…いまだにそのときに学んだことは生きてます。

 

――いまはどう?

 

真夏:音楽活動という基盤ができたので、パワーを発散というよりは、パワーを集中して注ぐ感じになりました。ひとつ注ぐ場所ができたのは昔との違いかな。

 

歩里:私も昔は当たり散らしてましたけど、大人になるにつれて抑えるところはちゃんと抑えられるようになったというか。まわりとのバランスをはかれるようになったって自覚はありますね。

 

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――では、リードトラックでもある2曲目の「DNA」。「身体はコラージュ/心はモンタージュ」って歌詞にはっとしました。

 

真夏:心も身体もオリジナルのように見えて、やっぱりコラージュで、モンタージュで。感性みたいな漠然としたものも、ひとや街や時代や血筋やその日食べたものや、いろんなものが影響し合っていまの自分ができあがってると思って、そういう歌詞が出てきました。

 

――「DNA」を聴いたときに、名前も顔もわからない100年前の祖先のことを思ったんです。そのあとに、名前も顔もまだない100年後の子孫のことも思った。100年後の子孫も、100年前の祖先、つまり自分やこの時代のことに思いを馳せてくれたらすごいすてきだなって。悠久のとき、命のバトン、脈々と続いていく連鎖…でっかい母性みたいなものを曲から感じ取りました。

 

真夏:うれしい!こないだ友人と、女性は対立構造だと成立しないのかもねって話になったんです。というのも、母親になる(自分が体内でなにかを作り出す)可能性を秘めてる人間が対立してたら子どもは育てられないし、脈々と続かせていく役割のなかで機能しなくなるから。

 

――確かに。女性のほうがまんべんに見られてる感じもするね。

 

真夏:最近、社会的にもいろいろ揺らいでて、あっちこっちで「立ち上がれ!」って風潮ですけど…「立ち上がったらいいってもんでもなくない!?」って(笑)ヒーローの綺麗ごとじゃ、にっちもさっちもいかないんだよっていうのは、あると思います。 「お前らはさあ、ドンパチしてりゃいいよ。でもドンパチしてるやつらの飯は誰が作る!?」って気持ちはどこかにあるんじゃないかな。

 

(一同爆笑)

 

――人間ってさ、女からしか生まれないもんね。

 

真夏:そうなんですよね~。

 

――世の中まだまだ男社会だけど、音楽やっててもそれを感じることはあります?バンドやってる女の子って、全体でみればやっぱり少ないじゃない。

 

真夏:ありますね。21歳でCDを出したんですけど、若くて明るい音楽をやってるってだけでなめられることもあったし。でも、なにより歌うこと。作ること。ひたすら行動すること。そしたらライブや作品がちゃんと語ってくれる。その姿勢こそが、なにより意思表示になると思っています。そういえば、カメラマンの友達も、女でバンドの写真撮りたいってだけでなめられるらしくて。「そういう系のバンド好きカメラマン女子いるよね」みたいな。○○系って女の子を括って煽るの流行ってるけど、ほんとつまんない。