hikiko1
icon 2014.11.23

映画『ひ・き・こ 降臨』オールスター座談会――主演の秋月三佳と小宮一葉、監督の吉川久岳、脚本の宮崎大祐に聞く、新感覚ホラーができあがるまで

 「一部の方の人生をも変える力を持った作品だと思います」(宮崎)

――ミイラ、次にどこに出てくるか楽しみです。ところで今回の作品はネットやSNSが肝になっていますが、日常生活ではそれらにどう接していますか?

 

秋月:基本的に自分の名前は絶対に検索しないです(笑)最初ツイッターの使い方がわからなくて、フォローされたら全員にフォローし返してたんですよ。そしたらダイレクトメールがすごいいっぱい来ちゃって、慌てて元に戻しました…。でも、1つのつぶやきが1枚のチラシみたいなものだから、自分の作品をいろんな人に見てほしいってときにSNSはすごい大事だと思います。距離感は難しいですけどね。

 

小宮:撮影でもブラインドタッチのできなさを突っ込まれたくらいパソコンは疎いんですけど、ツイッターは宣伝とかも気軽にできるのでやってます。いろいろな人と交流できて温かい気持ちになれる反面、どこか冷めてる部分もありますね。ほんとの気持ちをツイッターに書いてるかっていったら書いてないと思うし、そのうちやめるんだろうなって気はしてます。

 

宮崎:僕は苦手ですね。あまりにもルサンチマンが渦巻いているので、元気なときにざっと見る程度です。

 

――それでは最後に、ホラー映画にとどまらない本作に寄せて読者にメッセージをお願いします。

 

宮崎:端的に、いままで書いたもののなかで一番おもしろい作品だと思っています。それは僕が書いたこと以上のことが画面に映っているからで、俳優部さん、技師のみなさん、関係者のみなさん、なにより監督の執念のおかげだと思います。とにかく強調したいのは主演御三方の芝居ですね。秋月さんは稀に見るほどフィルモジェニックな女優さんで、お顔だけではなく、スタイル含めて見てその映画的所作の素晴らしさを御覧いただきたいです。ワンカットワンカットを素晴らしい重さ、密度のする小宮さんのお芝居も決して見逃せません。そしてサイボーグさんの宇宙人のふりをしてさりげなくハイパー繊細な芝居。この映画で彼女達を発見してください。そして、見終わったあとに呪われて、帰ってください。一部の方の人生をも変える力を持った作品だと思います。よろしくお願いいたします。

 

hikiko9

宮崎大祐

 

小宮:私はわりと自分の肉体や感情で考えるほうなので、宮崎さんや吉川さんの社会的な話を聞いていて、やっぱり自分と違って作る人で男性の視点だと感心しました。そんな2人が組んだ世界のなかに演者として入ってみて、ホラーではあるけどほんとにいろんな女の子に見てほしいと思っています。ちょっとでも心に触れるものがあったり、それでなにかが変わってくれたりしたらいいなって。ちょうど撮影が終わった直後に復讐サイトやリンチが増えているというニュースを見たんですが、タイムリーでびっくりしました。イタリアの死刑制度について知人から聞いたり、イタリアで娘をレイプされた母親が犯人を焼き殺したというニュースを見たりしたときに、私も自分の子どもになにかあったら冷静でいられるだろうかと思うし、法がそれを裁けない場合、被害者の思いはどうなるんだろうってすごい感じるものがあって。『トガニ 幼き瞳の告発』という実際に韓国の社会を変えた映画もありましたし、そういう難しいテーマについてもある種の答えを出せるのが、フィクション映画のできることだと思っているんです。単純にひきこは演じていて楽しかったし、みなさんと出会えてほんとによかったです。

 

秋月:おばけが出てくるホラーよりもすごく身に沁みるホラーだと思います。ひきこはやってることは悪いけど、悪い人かっていったらいままでの理不尽な人生のなかでそういう人格ができちゃったわけで…。復讐を実行するかしないかの話で、しない人が多いってだけで、生きてたら誰にでも起こりうることですよね。でもやっぱり恨みは怖い感情で、それがこの映画にはちゃんと映されてると思います。人間って怖いなってなる映画なんですけど、がんばったので見ていただきたいです!

 

こっくりさんラフ1

 

吉川:『ひ・き・こ 降臨』はホラーですけどおばけも出てこないし、個人的な情念を超えたところにある恐怖、コンテンポラリーな恐怖を描くっていうのが当初の狙いとしてありました。その出発点になっているのがひきこのねじ曲がった愛情や復讐心で、もしこの映画がコンテンポラリーなホラーとして成立しうるのであれば、それは各キャラクターを演じてくれた3人の女優の強度が礎となっていると思います。自分が現場をコントロールするというよりは、彼女達とのセッションを毎カットやっていた感じですね。それぞれが奏でる音を俯瞰しつつ、バランスを取っていくというような。次にどういう芝居や表情を見せてくれるのかって、撮っててすごい楽しかったです。幸せな現場でした。そういえば、北大生がイスラム国に渡ろうとしていたことがニュースになりましたけど、潜在的には彼のような心持ちの人が日本国内にいっぱいいると思うので、そういう怖さの領域にちょっとでも触れられたらいいなと思いますね。普通の日常生活を送っていた人がいきなり反転しちゃう可能性はどこにでもあるわけですから。

 

――このメンバーで続編ができることをとても楽しみにしています。ありがとうございました!

 

 ※映画『ひ・き・こ 降臨』主演のサイボーグかおりによるコラムはこちら

 

 

 

●Information

『ひ・き・こ 降臨』

 

2014年11月29日(土)~12月4日(木)、シネ・リーブル池袋にて6日間限定レイトショー!

公式HP:http://www.amumo.jp/event/movie-hikiko-korin.html