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icon 2014.12.18

台北ストーリー 第3回 11月19日号――あの大物俳優主演の新作短編を携え、「中華圏のアカデミー賞」に参加した宮崎大祐監督による台北紀行!

台北ストーリー 第3回 11月19日号

宮崎大祐

 

11月19日

 

どれだけ寝ても朝は眠い。まあでも短期決戦なので眠いだのとは言っていられないのでいつもの会場に向かう。マルトのホームで案内をしている女の子たちがみなカワイイ。全く聞き取れない北京語を日がな延々聞いていると催眠効果のようなものがあるのか、どれだけ辛いミントを飲んだところで畢竟舟を漕ぎ始めてしまう。これは企画全体にとって良くないので、「部屋の片隅にあるソファーの陰に隠して寝かしてくれ」と嘆願してみたものの却下され、誤魔化し誤魔化しどうにか午前は終わる。昼飯は「ベントー」。揚げ物ばかりで異常に脂っこいものの、たいそう美味い。味わいながら食べていたら、プロデューサーであるシンガポールのテイ・ビーピンから「おい、映画祭はビジネスの場なんだ。朝から酒飲んで女のコと管巻いてるだけじゃダメだぞ」という事実と異なるお叱りをいただき憤慨。しかし傍らにいたもう1人のプロデューサー・リーは何故か反省している様子。

 

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台湾弁当

 

午後は日本から日活の方々がいらっしゃったり、憧れのフランス人プロデューサーがいらっしゃったりして好調子。改めて認識したのが中国映画市場、経済規模の大きさ。映画館も好回転している上にソフトもオンライン販売も絶好調だという。聞いていると各作品の予算感が日本とは2桁違うので軽いカルチャーショックを受ける。当然世界中の映画産業が今中国本土販売を目指したものを作り始めている。検閲があるので、決して政治的ではなく、性的でも暴力的でもなく、更には商品宣伝のカットが充分にあるような映画。それでも『薄氷の殺人』から『トランスフォーマー/ロストエイジ』までアウトプットの幅があるところに私は可能性を見た。

 

ディアオ・イーナン『薄氷の殺人』のトレイラー映像

 

 マイケル・ベイ『トランスフォーマー/ロストエイジ』のトレイラー映像

 

会議後はビーピンに「3ヶ月前に予約せねば」という地元の超有名レストランに連れて行ってもらった。超名店というわりにいきなり予約取れたしガラガラだなと思っていたら、初っぱなから血塗れの冷たい鶏肉を食わされ一気に食欲が減退。タイピー(台湾ビール)だけが私の救い。21時からはフランス文化会館主催のパーティーに参加する。これまた会場は小さかったが人の往来は多く、昨日タクシーで一緒に帰った台湾のプロデューサー・Sちゃんと再会。そんな大事な時に夕飯の鶏肉を思い出したら急に気持ちが悪くなったので帰った。ということにしておこう。

 

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フレンチ・パーティー

 

※トップ写真はホームで案内しているコ

台北ストーリー 2 1118日号はこちら

台北ストーリー 4 11月20日号はこちら

 

 

●Profile

宮崎大祐

 

1980年、神奈川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。2004年製作の『10th Room』が、マーティン・スコセッシやジム・ジャームッシュを輩出したニューヨーク大学映画学部主催の「KUT映画祭」でグランプリを受賞。翌年、『Love Will Tear Us Apart』が日本最大級の実験映画祭「イメージフォーラム・フィルムフェスティバル」で特別招待上映される。

2010年にはベテランカメラマン・芦澤明子を迎え、長編処女作にしてフィルム・ノワールに果敢に挑んだ『夜が終わる場所』を監督。トロント新世代映画祭で特別賞を受賞したほか、南米随一のサンパウロ国際映画祭のニュー・ディレクターズ・コンペティション部門やモントリオール・ヌーボーシネマ国際映画祭のインターナショナル・パースペクティブ部門に正式招待され話題を呼んだ。2012年の国内初公開では、上映後のイベントにイルリメやGEZANらを招き、「MIYAZAKI MUSIC FESTIVAL」の様相を呈した。翌年には、イギリスのレインダンス国際映画祭が「今注目すべき7人の日本人インディペンデント映画監督」のうちの1人として選出。

そして2014年、ベルリン国際映画祭のタレント部門に招待されたのをきっかけに、アジア4ヶ国の新鋭監督が集うオムニバス映画『Five to Nine』に参加。ハードボイルドと言えばのあの大物俳優を迎えた『BADS』パートを担当している。なお、筒井武文監督の『孤独な惑星』や吉川岳久監督の『ひきこさんの惨劇』『ひ・き・こ 降臨』の脚本も執筆しており、これからの活躍が本当に楽しみな才人である。

 

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