2月に初来日を果たすLAのアーティスト・D/P/Iが、ロンドンのインターネット・ラジオ局「NTS Radio」内のコーナー「dancing_」にて、ジャパニーズ・ジューク／フットワークで彩られたミックス「Modern Electronic Music – Japan Special」を披露。現在、Mixcloudで視聴可能となっている。
Dancing_ w/ D/P/I (Modern Electronic Music – Japan Special) – 7th January 2015 by Nts Radio on Mixcloud
D/P/IことDj Purple Imageは、電子音響帝国に颯爽と（飄々と？）現れたAlex Grayのソロ・プロジェクト。名前を耳にした当初は解像度の意のDots Per Inchやサイケデリック・アートの巨匠であるAlex Greyを想起させたが、グリッチ・ノイズ／ミュージック・コンクレートを軸にロウからハイまで質度を自在に上げ下げしながら多分にユーフォリア溢れる音を紡いでいくさまは、あながちその連想も間違っていないのではと思わせてくれる。他にも、アンビエント／ドローン／ニューエイジなDeep Magic、陽気なゴッサム・シティでストレンジなヒップホップ／R&B／ソウルをかますHeat Wave、そしてジャングル／ジューク／フットワークによったGenesis Hullと様々な名義で活動。2014年の話題をかっさらったARCAやGiant Clawと並び、現行のオンライン・アンダーグラウンド／レフトフィールドの先鋭として熱い視線が注がれている。
そんなD/P/Iのいまのモードが感じられるミックスは、国産ジューク／フットワークがてんこ盛りの2時間。シカゴで生まれたゲットー・ハウスのBPMをアゲにアゲたダンス・ミュージックが、日本でどのように進化／深化してきたのかも俯瞰できる内容となっている。その黎明期からシーンを支え続ける大阪のレーベル「Booty Tune」主宰のD.J.Fulltonoはもちろん、名古屋から横浜に拠点を移した音の錬金術師・Foodman、広島のレーベル「DUBLIMINAL BOUNCE」からリリースの『Dirtying』もロングラン、同県の重低音マエストロ・CRZKNY、東京のレーベル「SHINKARON」主宰のFRUITY、同じく東京のBoogie Mann、Weezy、KΣITO、本牧埠頭およびPAN PACIFIC PLAYAの最終兵器・Paisley Parks、大阪の七変化ユニット・Satanicpornocultshopなどなど、海外でも注目を集める全国各地の精鋭を網羅した特濃感だ。ちなみに先日紹介した俳句コアのコンピでのヒロポジドッグの「俳句ってなんすか？」、このミックスで取り上げられている吉村元年の「ブーティってなんすか？」へのオマージュと見た！
そんななかグッときたのは、鳥取のノイジシャン・Constellation Botsuの音が随所に散りばめられているところ。とくに彼の「Botsu354」からCRZKNYの「恋・好き・トキメキ・JUKE」へのつなぎがツボすぎる。かわいい。クレイジーな人（褒めてます！）はどんなにエグい音を出していても「ファンシー」で「キュート」だと思っているが、D/P/Iの捌き方からもその人となりがびんびんに伝わってきた。
さて、2月上旬に開催されるD/P/Iの初来日ツアーについてもおさらいしておこう。まず福岡は、MerzbowやNyantora a.k.a ナカコー、Ovalらの作品をリリースするレーベル「Duenn」がサポート。大阪はSeiho率いるレーベル「Day Tripper Records」からのリリースもあるEadonmmとMadegg （Flau）の新企画「INTEL」で、東京はディストリビュート兼レーベル「melting bot」主催のイベント「BONDAID」でのアクトとなる。なお、大阪では先述したConstellation Botsuの出演も決定している。個人的に行くっきゃない。国内外の先鋭電子音楽を牽引する猛者が揃い踏みするツアーをお見逃しなく！
こうした分野においてはこと新参者で門外漢な筆者だが、2014年末に行われたConstellation Botsuの東京初ライブにして人生初ライブは衝撃・圧倒・最高としか言えないくらい凄く、本当に感銘を受けた（十三月の甲虫特集の前文でも少し触れたが）。乱れ飛ぶビート、きらきらさわさわした自然音やボイスサンプル、メタリックなのにリキッドでまるみのあるノイズ――。たった3曲なのに一瞬が永遠だと思わせるような、全身散弾銃で撃たれているのに桃源郷の中を漂っているような、そしてなにより「うたごころ」があるのが美しい。この陶酔感、確かにD/P/Iに通じるところがある！終演後、「今日のパーカーはD/P/Iを意識したんです」「しー没さんとD/P/Iの共演が観たい」と話していたConstellation Botsu氏とカセットテープ・シーンのキーパーソン、Dirty Dirt氏の姿を思い出す。その邂逅がこんなに早く実現するとは。
Constellation Botsuの音に出会わせてくれ、そしてライブに足を運ぼうという気にさせてくれたメディアにこの場を借りて感謝と敬意を。多人数参加型音楽ブログ「Hi-Hi-Whoopee」（現在は休止中）、そのチーフだったLIL_SEGA氏主宰のレーベル兼ブログ「Wasabi Tapes」、および前述したDirty Dirt氏のブログ「Dirty Dirt」（現在はこちらで新章がスタート）。エッジーでエキサイティングな音を欲している人には、ぜひともチェックして欲しいと思う。とまれ、カルチャーやエンターテインメントがますますドメスティックになっている昨今。懐古主義に陥る気はさらさらないが、海外でBOREDOMSや少年ナイフが「FUCKING AWESOME」と言われていた時代のように、こうした動きを通して、よりいっそう新世代の音の交流がなされて欲しいと切に願っている。（福アニー）
●Information
D/P/I JAPAN TOUR
◆2015年2月6日（金）＠福岡KIETH FLACK 19:00～
mew×Duenn presents OBDELAY feat. D/P/I Japan Tour Fukuoka
More Info：http://duennjp.tumblr.com/OBDELAY
◆2015年2月7日（土）＠大阪CIRCUS 16:30～
INTEL feat. D/P/I Japan Tour Osaka
More Info：http://intelplaysprts.tumblr.com
◆2015年2月8日（日）＠東京KATA + Time Out Cafe & Diner LIQUIDROOM 2F 18:00～
BONDAID #4 feat. D/P/I Japan Tour Tokyo powered by forestlimit sound system
More Info：http://bondaid.jp/post/107690545047/bonaid-4-feat-dpi
◆詳細
http://meltingbot.net/event/dpi-japan-tour-2015