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icon 2015.6.30

しずくだうみインタビュー――「闇ポップ」ってなに?じわじわと注目を集める鍵盤弾き語りSSWの胸の内を探る

「つらい人とハッピーを共有したい」

――じゃあ、だうみさんが性格悪いって思うのはどんな人ですか?

 

しずくだ:一貫性がない人ですね。ダメならダメで一貫性があればいいんですけど…自分もあまり人のこと言えないですけどね。

 

――具体的には?

 

しずくだ:気分で人を振り回しちゃう人。気分が変わっても、最初にこう言ったから筋を通そうって思う人なら信用できますけど、そうじゃない人はかなり困りますよね。性格が悪いというよりも、甘ったれてるだけだと思うけど。

 

仁郎:まわりに気をつかえない奴はダメだなってことだよね。でもそれは、だうみが自分に思っている性格の悪さではないですよね。自分と似た感じの性格の悪さを持っているなって思う人はいます?

 

しずくだ:根は一緒だと思うんですよ。自分さえ良ければいいというところとか。

 

仁郎:それなのに、だうみは社会性を保っていたいという思いが強いよね。それってすごく大変じゃない?

 

しずくだ:結局、自分に返ってきますからね。

 

仁郎:社会的にうまくやっていた方が、結局は自分のためにもなるってことか。

 

——そういう自分を変えたいって思います?だうみさんの場合は、そういう自分があっての音楽だとは思うんですけど。

 

しずくだ:歌だったら、(こういう自分でも)ありかなと思いますね。 歌うときは自分を肯定しているというか。ただ、せめて表向きはもっとちゃんとしたいですね。

 

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――逆に、自分のそういう部分をなくしたら、曲が書けなくなるとか。

 

しずくだ:自分がハッピーな曲を書いてもしょうがないと思うんですよね。ハッピーなのは、ハッピーな人が作ってくれているので。それよりも私は、つらい人とハッピーを共有したい。

 

――その場合のハッピーは、普通の人のハッピーとは少し意味合いが違いますよね。

 

しずくだ:私の曲のなかで「水色」が人気なのは、他人のつらいところが見られるからだと思うんですよ。それって、完全に傍観してるからだと思うんです。結局みんな人の不幸は好きだから。もしくは、そこに自分を投影することで「あぁ、自分だけじゃないのかな」って思ったり、物語に没頭することで自分のことを忘れる瞬間があったりとか。

 

 

――気休めだったりとか拠り所っていうニュアンスですかね。

 

しずくだ:拠り所にはなりたくないんです。絶望の淵にいるみたいな人を救う音楽ではないから。そこまで沈んではいないけど、慢性的につらい状態が続いている人への処方箋みたいな。そのくらいじゃないと、お互いつらくなりますから。

 

――普段あまりハッピーじゃない人たちと、わずかなハッピーを共有したいと。

 

しずくだ:つらいけど焼き芋はおいしい、みたいな。でも、焼き芋は食べなくても別に生きていけますからね。友達もそうですけど、ファンもみんな優しいんですよ。攻撃的な人は自動的にいなくなる。そういう人は、私がダメなんで。だから、結果的にだうみ現場は優しい人が多くなっていきますよね。

 

――だうみさんの音楽は、そういう人たちに広まっていってほしい。

 

しずくだ:ガチな人に来られても困るだけなんで。いろんな人がいますけど、みんなしゃべるときは明るくしてくれるんですよ。家で落ち込んでたり、メンヘラな部分があってもいいんですけど、それをぶけるかぶつけないかは全く別問題だと思うんですよね。だから、アイドル現場にも行けないというか、なんか違うなって思うような層を狙っていきたいですね。気になってるけど、自分は騒げないって人とか。もちろん、アイドルのライブに行って騒いでる人にも、たまにはちょっと休もう、みたいな感じで来てくれればいいと思いますし。 全国規模で考えれば、そういう人も結構いると思うんですよね。なんとなくほかの場所が居心地悪いなって思っている人に、ここだと思ってもらえれば。

 

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――だうみさんは、自分の音楽だけを聴いていてほしいとは思わない?

 

しずくだ:単推しには、なってほしくないんですよね。選択肢のひとつとしてあってほしい。

 

――それも、重すぎないくらいがちょうどいいってことなんですかね。

 

しずくだ:そうなると、お互い疲れちゃうから。大好きと大嫌いしかなくなっちゃうじゃないですか。そうじゃなくて、ゆるやかな関係でいたいんです。

 

――そこまでは、背負いたいくはない?

 

しずくだ:それを背負う覚悟はないですね。だって、普通に赤坂BLITZくらいでも1200人くらい入るわけじゃないですか。その全員に、それぞれいろいろな思いがあるんですよ。それが何万人規模になったら、何万通りの家や生活があって、みんな好きな人がいて、トラウマがあってってなる。それを全部背負うことができる自信がないんです。

 

――そのくらいの人の前で、演奏したいっていう欲求はないんですか。

 

しずくだ:そうなると、その目標に向けて自分で拡大していかなきゃいけないですからね。それは、お互い耐えられないなって。例えば、私が音楽を辞めて死なれたら困る。音源あるから辞めても大丈夫だ、くらいの人を集めていきたい。

 

——でも、ポップな存在って、そういうことなのかもしれないですよね。誰もが知ってるようなJ-POPって、手軽で身近なもののような気がします。タイアップでみんなが曲を知っているようなアーティストでも、ライブの集客があるとは限らないじゃないですか。

 

しずくだ:それよりは、もう少し寄り添っていきたいですね。お茶の間ほどではなくて、自分の部屋に招く人に聴かせたいくらいの。お母さんには「なにこの音楽」って言われて、お父さんは無言で新聞読んでる。それで自分の部屋に持ち帰って、友達や恋人が来たときにだけかける、みたいな。

 

――親しい人とだけは共有できるような距離感でありたいと。

 

しずくだ:そういうことですね。

 

※しずくだうみプロデュースのアイドルユニット、ニュートリノ温泉のインタビューはこちら

 

 

 

●Disc Information

しずくだうみ3rd E.P.『透明コンプレックス』

 

ライブ会場、ディスクユニオンBridge INC、Amazon、通販などで順次発売中。

特設HP:http://szkdumi.wix.com/3rd-ep

 

 

 

●Profile

◆しずくだうみ

1992年生まれのシンガーソングライター。高校生の時に弾き語りと作詞・作曲を始める。「できることはなんでもやる」の精神で、近年は踊ってみた動画を公開したり大喜利イベントに参加したりと歌うこと以外の活動にも進出している。

 

HP:http://szkduminfo.tumblr.com/

Twitter:https://twitter.com/shizukuda__umi

 

2009年、YAMAHAミュージックレボリューション宮地楽器店大会うたごころ選手権グランプリ受賞。

FM横浜 YOKOHAMA MUSIC AWARD にて楽曲放送 (楽曲名:ペトラ)。

テレビ朝日 THE STREET FIGHTERS出演。

 

2013年12月、1st E.P. 『届かぬ手紙のゆくえ』発売。

 

2014年9月、しずくだうみ初企画「月刊しずくだうみ」を開催。沖ちづる、林ミカを招き古民家生音ライブを成功させる。

2014年12月に2nd E.P.『泳げない街』発売 (手売り、通販のほか、OTOTOYより配信、BRIDGEより翌年1/30より流通)。

『泳げない街』レコ発ライブにタグチハナとやまのいゆずるを招き、新宿カフェアリエで開催。ソールドアウト。

 

2015年1月、レコ発ライブ第二弾を渋谷guestで開催。歌って踊れるバンドウーマン・ぱいぱいでか美を招き、こちらもソールドアウト。

FM横浜 YOKOHAMA MUSIC AWARD にて楽曲放送 (楽曲名:水色)。

3月には同じく渋谷guestにて「スナックだうみ」と称した自身初のワンマンライブを開催。盛況となった。

4月に2nd E.P.『泳げない街』のremixをBandcampでName Your Priceで発売。

『泳げない街』のアレンジを担当した吉田仁郎の他、PARK GOLFなどのremixで知られるHercelotと、ノイズ・逆再生DJのdaitengの3人がそれぞれの持ち味を出したremix集となった。

6月にシンガーソングライター・白波多カミンとタグチハナとの3マンライブが高円寺cafe U-hAにて開催。同日に3rd E.P.『透明コンプレックス』を発売した。

 

 

◆吉田仁郎

サウンドクリエイター。主にゲーム等の音楽、効果音を制作するかたわら、「野獣のリリアン」などのバンドで都内にて精力的に活動中。