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Koichi(Grimm Grimm)×Kohhei(Bo Ningen)のKK晩酌対談――ロンドン在住の日本人ミュージシャン、その盟友同士に音楽についてあれこれ聞く

「各々のサイケデリックを見つめ直すべきやん」(Kohhei)

――いま「アンダーグラウンド」「エクスペリメンタル」という言葉を聞いて、気になる音楽や映画、アートはありますか?

 

Koichi:うーん、難しい質問きたね。

 

Kohhei:そもそも誤解されがちなさ、エクスペリメンタルとアヴァンギャルドって違うよね。あれまったく別の言葉なんだけど、結構混同されがちで、その辺も正しておきたいね。

 

Koichi:アンダーグラウンドって、言ってみればもうインターネットの存在であるようでないし。なんか嫌だなって思うのは、アンダーグラウンドだからどうこうって言われるのは嫌で、まったくアンダーグラウンドもポップも関係ないよ。

 

Kohhei:本当に表裏一体だよね。アンダーグラウンドにくくられるのは嫌だな。安住の地というか、そこにいることで安心してるというか、凄く狭いサイクルでやってるような気がする。常に前を見ようとして開いていこうとしてるのは唯一、灰野敬二さんくらいかな。

 

Koichi:灰野さんはポップやアンダーグラウンドとか関係なくない?

 

Kohhei:あの人の中でね、周りがそうやって見てるだけで。そういう姿勢が好き。

 

Koichi:ポジティブだよね。生きようとハッピーになろうとしてる。そういうものが好きだね。

 

Kohhei:アンダーグラウンドでエクスペリメンタルかどうかはわからないけど、この間バービカンのイベントでムーグをいじって、いまちょっとモジュラーシンセが流行ってて、新しいランゲージがあるんだよね。音に対するアプローチみたいな。例えばエレクトリック・ギターが発明されたからジミヘンがああいう音楽を作れたみたいな、パラライムの変化があって。アプローチの仕方がミュージシャンではなくて、もっとエンジニア的なアプローチというか、建築家的なアプローチでそういうのをワンステップ進めているような気がして影響を受けた。

 

Koichi:俺はこの間バービカンで観たSuicideのライブかな。音めちゃ悪かったけど。

 

Kohhei:いやー音悪かったね。

 

Koichi:でもエモーショナルなライブだった。

 

Kohhei:よかったよね。音楽自体というかもっとエモーションで。

 

Koichi:なんというか原始的な感じが残っていて。あれ48チャンネルとか使ってたらしくて、モジュラーシンセ並んでるのに、結局拳でシンセを「シー!!」って(笑)

 

Kohhei:Martin Revにあの幅のキーボードいらんからね。どこ押してもホワイト・ノイズしか出ないし(笑)

 

Martin Rev「Cheree(Remix)」のライブ映像

 

Koichi:この一瞬、一発に込める感じ。リハーサルで起きる魔法ってあるじゃん?「なんであの時あんないいリハーサルが?」みたいな、言葉で説明できない感じ。完全に同じようにセッティングして再現しようとしても…

 

Kohhei:なにかが失われてるよね。

 

Koichi:そうなんだよ、あれでケミストリーや魔法が起きた状況で録れたアルバムができたらいいなって思うけど、Suicideのアルバムを聴くとその魔法はあるって思う。

 

Kohhei:あるある、絶対100%適当に録っただけやん(笑)

 

Koichi:ライブで48チャンとかやってたけど、なんなら2チャンでいいよ(笑)

 

Kohhei:ボーカルとキーボードだけ(笑)

 

Koichi:けどあの努力はやっぱりいいじゃん?まったく結束してないのに結束してる感じ。

 

Kohhei:本当、観れて良かった。Suicideとかもはやアンダーグラウンドじゃないけどさ。

 

――先ほど「アンダーグラウンドにくくられるのは嫌」という話も出ましたが、おふたりは「アシッド」「サイケデリック」と形容されることが多いと思います。それについては?

 

Koichi:サイケデリックはなんか言葉が…パンクもそうだけど…

 

Kohhei:あ、僕いまだったら言葉はパンクのほうが好き。いわゆるパンク・ミュージックっていうよりNYパンクって言われてる人たちとか全部好き。Ramonesは聴いてないけど、Televisionとか好きだった。でもUKのパンクは全然好きじゃなかった。

 

Koichi:俺は完全に70’sパンクだった。音楽的なパンクっていうところじゃなくて。

 

Kohhei:彼らはちゃんとアティテュードがあるよ。

 

Koichi:そうなんだよね。別に反抗することでもなく、思うのは凄くリアルに感じて、現実に立ち向かっていく感。そのチャレンジしていく時に出てくるものがグッとくる。サイケデリックでずっと嫌いだったのが、どこかで逃避してる感があって。

 

Kohhei:基本的には、ことの始まりは逃避主義な気がするんだよね。サイケデリックとかみんな、各々のサイケデリックを見つめ直すべきやん。

 

Koichi:そうなんだよ。

 

Kohhei:言葉自体はいいよ。言葉は言葉じゃん。自分でちゃんと定義しないと駄目だよ。

 

Koichi:俺はKohheiくんたちと会って、これがサイケデリックだって思ったのは、現実の日常生活の中で出てくる非日常じゃないけど…

 

Kohhei:ちょっとした瞬間だよね。ちょっとスライドする感じ。

 

Bo Ningen「Daikaisei」のライブ映像

 

Koichi:そこに真実があるような。例えばABBAとか…

 

Kohhei:ABBAはヤバいね(笑)Acid Mothers Templeの河端さんも大好きなんだよ。わかるようなわからんようなってなる。

 

Koichi:俺はわかるよ。ABBAは究極だよ、おかしいもん。ミックスとか自分でやるようになってから、作業した後にABBAがかかったりすると…「え!?」って(笑)

 

Kohhei:変なんだ?

 

Koichi:めちゃくちゃ変。ドラムの音とかドラムとして捉えてないし。

 

Kohhei:あの人たちはスウェーデンだね、田舎者だ。

 

Koichi:田舎で発生した奇跡。

 

Kohhei:いや、もちろんいい意味だよ。クラウト・ロックだって田舎者の勘違いじゃん。日本のいわゆるアンダーグラウンド、60~70年代の音楽とかも元々は田舎者の勘違いだし、勘違いするのはいいよね。

 

Koichi:名前がつく前に勝手にやってるみたいな。

 

Kohhei:サイケデリックっていう言葉が使われ始めたのが1950年くらいで、どっちだったかな…ティモシー・リアリーか化学者でLSDを作った人か、名前は忘れたけど…最初は確かサイコデリックって言ってて、その後「Psycho」とギリシャ語かなんかの「魂」みたいな言葉を組み合わせて、それをよりヒッピイズムにウケるようにサイケデリックにして。

 

Koichi:魂ってのは凄いわかる。

 

Kohhei:もともとサイケデリックが発生したところはドラッグカルチャーじゃん。いまは違うと思うけど。違うっていうか、いまはそうでなくてもいいと思う。

 

Koichi:サイケデリックは日常に潜んでいるものかもね。

 

Kohhei:パンクは姿勢だけど、サイケデリックはスタイルかな。いま凄い軽く扱われているし、猫も杓子もサイケデリック。

 

Koichi:なんでだろうね?

 

Kohhei:みんな現実から逃げたいのかな?しかも解釈が凄く浅い。

 

Koichi:名前とか後から付けられてラベリングされて。

 

Kohhei:サイケデリック・ミュージックをやろうと思ったら終わるよ。

 

Koichi:まあ、なんでもそうだけど。

 

 

 

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Kohhei(Bo Ningen)

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●Disc Information

hazy eyes maybe

Grimm Grimm『Hazy Eyes Maybe』

 

発売中!

2300円+税

詳細:http://p-vine.jp/music/pcd-93925