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A,B,CIVILMAGAZINE 第3回 中山晃子――クリエイティブ集団・CIVILTOKYOが注目アーティストにインタビュー

「重力から解放されたい、上に行きたい、というような感覚がある」

――作品をつくる上でのこだわりはありますか?

 

中山:そうですね…色の見え方の話になりますが、地域や年代によって決められる色の意味っていうのもありますよね。例えば、紫が最高位の僧侶の象徴だった時代もあれば、下品な色の代表とされている時代もあるし、国旗に現れるような地域的な色の側面もあります。それと同時に、時代性や地域性は関係なく、色自体が人に作用する性質もあるんです。

 

――青は心を落ち着かせる、みたいな。

 

中山:そうです。赤い店内だと時間がゆっくりに感じるけど、青いと早く感じる、みたいな。そういった、歴史的・地域的な背景と心理的な背景に加え、個人的な色の好き嫌いや記憶もありますよね。そういった、ひとつのものに対していくつかの視点があるという意識を常に持ちながら考えるようにしています。それから、私が好きだから、で終わらせないということも大事かな、と思います。

 

――好きだからで終わらせない。

 

中山:私が作品づくりをする時は、つくらずにはいられないほどの負荷、初期衝動のようなものがあるんです。でも、個人的な感情を開放するためだけの自分に寄り添うような作品をつくっちゃうと外に向ける意味はないですよね。私がやりたいのはそうじゃなくて…いい言い方が思いつかないんですが…重力から解放されたい、上に行きたい、というような感覚があるんですが、それを周りの人も含めて上げたいんですよね。

 

――上げる、ですか。

 

中山:重い荷物を持っていて、それが一瞬楽になった瞬間、負荷が一瞬和らいだ瞬間、というようなニュアンスですかね…絶対いい言い方があると思うんですが…

 

――それを周りも含めて、ということですね。

 

中山:そこでできることって、自分のためだけに上がる時とは比べ物にならないエネルギーがあると思うんです。自分の見立てだけで作品で表現するんじゃなくて、みんなが持っている色の経験や記憶、歴史的な色彩の背景を調べて作品に反映させる。たくさんの幅と意見があった中で、「私はなにに見える」っていう自由さを、自分もお客さんも同じぐらい持てるような作品にするっていう意識はありますね。

 

――中山さんの一番最初の経験として、捨てられた墨がきれいだと感じた時には、自分の中だけの話だったと思うんですが、どうして周りの人も含めて上げようと思うようになったのですか。

 

中山:私もそういう作品に救われたからでしょうね。元々は音楽で、いま持っているものの荷物が降りた経験がいいライブや曲にあったんです。聞きたくないような音が鳴っていた時に、耳をふさぐ代わりにイヤホンをして、音楽によってそれが溶かされたり、別のところへ行けたりといった、私自身が受け手として救われた経験があったんです。

 

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