gorjuke
icon 2015.10.9

熟村丈二インタビュー――ゴルジュークの始祖にしてCRZKNYの師匠、音楽と美女といま最も熱い場所・中国地方を語る

伝書鳩を飛ばし続けて1年強、ついに謎に包まれまくったゴルジュークの始祖・熟村丈二先生との接触に成功した。ゴルジュークとはインド~ネパール発祥の岩壁ダンスミュージック「ゴルジェ」と、シカゴハウス~ゲットーハウスが独自の進化を遂げた「ジューク」が合わさった音楽だとされているが、そうではない。ゴルジェとジュークの前にゴルジュークがあったのだ。順番が逆なのである。

 

という嘘かまことか、すでに都市伝説と化している話の真実を確かめるべく、先生に伝書鳩インタビューを試みた。どこにいるのか、本当に実在するのかもわからない先生との往復書簡に鳩もボロボロ。だが、音楽と美女とともにあった氏の半生、高弟・CRZKNY氏とのことや彼が住む中国地方のことなど、たっぷり聞くことができた。ただ、さすが70歳を迎えた重鎮だけあって一筋縄ではいかなかったし、謎は深まるばかりだった。これは何番目かの愛人になって、硬く尖った音とエロスの手ほどきを受けるしかないのかもしれない。(質問文/福アニー)

 

 

「SEXYであること、金のことを考えていること、コンプを使わないこと」

――まずは熟村先生、ベスト盤『THE BEST HITS OF GEORGE JUKEMURA』の発売おめでとうございます!沖縄のTea-chiさんや奈良のFranz Snakeさんらによるリリース記念コンピ『超・熟村祭』も聴き応えありました。その後、熱中症による心肺停止からの丹波哲郎ばりの復活、東京のhanaliさんや北海道のIndus Bonzeさん、大阪のD.J.Fulltonoさんや送受さんら収録の巨大ゴルジェ・コンピ『Ultimate Gorge Battle 2015』への参加、ゴルジューク作成キットつきの新作『DUMB』のリリースと、先生の動きも活発化していますね。この度、生き返った経緯からお話しいただけますか?

 

熟村丈二(以下、熟):まずは心肺停止してしまったことで心配をかけてしまい(なんちゃって)ファンの皆さんには大変申し訳ないことをしてしまったことを謝りたい。何故生き返れたのか、という質問だけれども、このまま死んでいたらいつか誰かにお部屋の押し入れに隠してある若かりし日の令嬢達との恥ずかしいブロマイドが発見される!恥ずい…というのが正直なところだね。世の男性諸君の多くが多かれ少なかれ「今死んでしまったらHDDの中の大量の恥ずかしい趣味が暴露されてしまう!」という不安と闘いながら生きている。私はその想いが人一倍強かった、ということかな。気がつくと生き返っていたんだから、人間やれば何でも出来る(万引きは絶対にダメ!)、と改めて思っちゃったね。

 

熟村丈二『THE BEST HITS OF GEORGE JUKEMURA』

 

―――確認しておきたいのですが、先生は実在しているのでしょうか?CRZKNYさん…ではないですよね…?

 

:オフコース。CRZKNY君(以下、CRZ君)は確かに私の後継者ではあるが、所詮はまだまだ鼻の青い子供に過ぎない。辛辣かもしれないが、まだ私の足下がようやく見えてきた程度の娑婆僧でしかない。

 

――別人とわかってほっとしました。先生はもともとどういったきっかけで音楽を作り始めたのですか?

 

:一番最初に聴いた音楽は今でも覚えているよ。乳母の喘ぎ声さ。そして深く、浅くシンコペートする呼吸。私は幼少の頃に乳母を抱いていた。つまり音楽を奏でたのはその時ってわけさ!ハハッ!

 

――さすが先生…先生がゴルジュークという表現に辿り着いた過程を教えてください。

 

:それはとても説明が難しいな。上手く説明出来るかわからないけれど…(と言って2時間半沈黙。内、2時間は気絶)そうだね、向こうからやってきたんだよ。私が辿り着いたんじゃない。ゴルジュークが、私を選んだ、ということ…じゃないすかね?

 

――「ゴルジェなどというジャンルは私が1977年に提唱したゴルジュークのパクリでしかない。ジュークもまた然り。そもそも、シカゴにジュークの元になるシカゴハウスなるジャンルを生み出したのが私なのだ」という発言や、「ゴルジェ界隈は真実を隠している」という文章から先生が相当お怒りの様子が伝わってくるのですが、まずはゴルジュークとゴルジェの関係性について世間一般の誤解を解くことから始めていただけますか?

 

:そうだね、これは繰り返し言っていることだけれども、ゴルジェ、というジャンルをゴルジェ発祥の地・ネパールに根付かせたのは他でもないこの私なんだよ。それを後年、現地のDJ NANGAが広め、その音楽を、日本の若きブーティスト・hanaliがネパール発祥の音楽だ、と日本に広めたのが間違いの始まりだろう。その事実を私が公表した今もなお、日本のゴルジェ界は誤りを認めようとしない。あたしゃ許さないよ!

 

――とはいえ、ゴルジェの総本山・GORGE.INのホームページがリニューアルされたりと(http://gorge.in/)、結束はさらに強まり、勢いはさらに増している印象を受けますが。

 

:うん、そこなんだよねー。人数多いとねー、ほら、人数多いとさ、小さい声ってかき消されるじゃん?そういうのね、あるよね。ほんとどうしよーってこないだも話してたとこなんだよね、近所の知らないおじさんに。

 

VA 『Ultimate Gorge Battle 2015』

 

――ゴルジェにはGPL(編注:Gorge Public License。タムを使うこと、それがゴルジェだと言うこと、それがアートだと言わないこと。この三つに準拠すれば「ゴルジェ」である)という三原則があります。強いてゴルジュークの三原則を挙げるとすれば?

 

:SEXYであること、金のことを考えていること、コンプを使わないこと、かな。故・井上義啓氏が提唱するところの「殺し」の感覚も大事だよね。刹那の快楽とでも言うのかな、そのスリルに世の女性は濡れるんだよ。チープなスリルに身を任せても明日に怯えているようじゃダメ、ってことさ。

 

――そう考えるとゴルジュークを紐解くうえで「エロス」「モテ」は非常に重要なファクターですね。「『ゴルジェで欲情することはできるのか』。そのことだけを40年近く考え続け、私はゴルジュークを作り続け、 数多くの女性との逢瀬を重ねてきた。 ゴルジュークはSEXY MUSIC、もしくはSEX MUSICである」「ゴルジェブーティストはクライミングで生死感を磨くにもかかわらず、現実においてタナトスからエロスへの変換ができていないように感じる」という名言も残していますが、 日々エロスを高めるためになにをやっていますか?

 

:常に眼をギラつかせていることだな。この歳になっても一日最低4時間は目を引ん剝いて壁に貼ってある風吹ジュンのヌード写真を瞬きせずに眺めているからね。その後はひたすらXVIDEOSとの格闘だ。壁のピンナップを凝視しすぎて目は限界。できるだけ効率よくお目当ての動画に辿り着くためにあらゆる叡智を結集させて挑む。もちろんこれらの作業は私が営業している「喫茶サントワマミー」の営業時間外にやっている。当然寝る暇なんかほとんどないよ。だけど広瀬香美も歌っていたけれど、◎◎◎があれば大丈夫。

 

――先生はそれはそれは性豪だとご察しします。好きな女性のタイプ、いい女の条件、モテテクニックを教えてください。

 

:好きなタイプの女性は…こんなことを言うとファン(注:ァの部分を比較的強く発音)のみんなをヤキモキさせてしまうかもだけれど、女優で言うとクラウディア・カルディナーレのような女性がタイプかな。いい女の条件、これは明確だね。老いも若きも未婚であろうが既婚していようが、恋を、そして愛を心に持つ女性はいつも輝いている。これが私の思う良い女の条件だよ。モテテクニックか…こんなことを言うと驚かれてしまうのだけれど、私はモテようと思って何か小賢しいテクニックを用いたことは一度もないな。女性を口説く時は、ただ、目の前にいる素敵な女性に一心不乱に般若心経を唱えるだけなんだ。