2015年の夏。1945年に広島と長崎に原爆が落とされてから、戦後70年の節目の夏。8月1日(土)~7日(金)、東京・ポレポレ東中野で、詩人・福間健二監督の2011年作『わたしたちの夏』が再上映される。
いまの東京の夏を描きながらも、広島出身の被爆詩人・原民喜の詩を繰り返し引用することで、蝉の声や首筋の汗をも原爆の記憶やお盆の気配として見せる異色作だ。再上映にあたり、福間監督とポレポレ東中野の石川氏よりメッセージが届いた。
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日本人にとって、夏とはどういう季節だろう。メディアが戦争を特集する。お盆がある。セミがうるさい。のどが渇く。「水をください」という声がきこえてくる。死者が帰ってくる季節だ。だれでも会いたい死者がいる。暑さのなかで死者を思うことは、わたしたちの生に何をもたらすのか。わたしたち、生きている者、あなたとわたし。『わたしたちの夏』の構想はそこからはじまり、キャスト、スタッフ、汗まみれになって撮影した。
福間健二
――日本人にとって「水をください」という言葉が何を意味するかわかるでしょうか――
空襲の音が花火になり蝉時雨になる。
こんな音から始まる映画をご存知でしょうか。
福間健二監督の2011年の作品『わたしたちの夏』です。
本作は、アラフォー女性がかつて一緒に暮らした男性とその娘に再会するひと夏を描いた作品ですが、その背景には大きな「日本の夏」が存在しています。
原爆が落ちた夏、戦争が終わった夏、死者が帰ってくる夏、暑い日本の夏。
原民喜の「水ヲ下サイ」「夏の花」のテキストが繰り返し引用されながら、ストーリーは進行していきます。
日本人が抱く夏という季節をこれほどまで深く鮮やかに表現した作品は稀有なものです。
『わたしたちの夏』は、原爆が落ちて、戦争が終わってから70年間、日本人はこのような死者と対話し、かつての戦争に想いを馳せながら過ごす「日本の夏」を繰り返してきたのだろうと思わせます。
そしてこれからも、このような日本の夏を迎えられるように、戦後70年を迎える今年の夏、ポレポレ東中野では『わたしたちの夏』の再上映を行います。
石川翔平(ポレポレ東中野)
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筆者も沖縄終戦記念日に生まれたMIXED BLOODであるので、不穏な方向へひた走る昨今の日本に思うところは多々ある。死者を悼み、あなたの夏、生ける者たちの夏、そして日本の夏をいま一度考えてみてはいかがだろうか。(福アニー)
●Information
わたしたちの夏
2015年8月1日(土)~7日(金)@ポレポレ東中野
連日21:00より1200円均一
詳細:http://www.mmjp.or.jp/pole2/
※一週間限定レイトショー!
※初日は映画サービスデーにつき1000円均一
※8月1日と2日の上映前に、福間健二監督による原民喜作品の朗読イベントあり