光のなかで
福間健二
寒さ。そのための、いくつもの、努力と
半透明の棒がたれさがる
ふるさとの家。一晩で行って帰ってきたのに
四月、時間がなくなっている。
いない人の影を抱きしめて
待ったなし。暗くなるまでの、勝負だ。
ミステリーなんか読んでいられない。
忘れられた戸棚の、たぶん七つの
首をもつ蛇を退治するために
頭のなかの地図をなつかしい列車が走っても
鋭角、溶かすな。
光のなかで破片と化したものは
光のなかで始末する。
●Profile
福間健二
1949年、新潟県生まれ。詩人・映画監督。高校時代から文学と映画に熱中。2011年、詩集『青い家』で萩原朔太郎賞と歴程賞をダブル受賞して大きな話題になる。そのほかの詩集に、現代詩文庫『福間健二詩集』、『秋の理由』、『侵入し、通過してゆく』(すべて思潮社)など。詩論集『詩は生きている』、映画『岡山の娘』、『わたしたちの夏』など。映画の新作『あるいは佐々木ユキ』が公開中。
『あるいは佐々木ユキ』ブログ:http://sasakiyuki.doorblog.jp/
ツイッター:https://twitter.com/acasaazul
© Toshio Hirayama