icon 2013.4.10

文月悠光×福間健二◆POETRY FOR LIFE(第1回)

光のなかで

福間健二

 

寒さ。そのための、いくつもの、努力と

半透明の棒がたれさがる

ふるさとの家。一晩で行って帰ってきたのに

四月、時間がなくなっている。

いない人の影を抱きしめて

待ったなし。暗くなるまでの、勝負だ。

ミステリーなんか読んでいられない。

忘れられた戸棚の、たぶん七つの

首をもつ蛇を退治するために

頭のなかの地図をなつかしい列車が走っても

鋭角、溶かすな。

光のなかで破片と化したものは

光のなかで始末する。

 

 

 

●Profile

福間健二

福間健二

1949年、新潟県生まれ。詩人・映画監督。高校時代から文学と映画に熱中。2011年、詩集『青い家』で萩原朔太郎賞と歴程賞をダブル受賞して大きな話題になる。そのほかの詩集に、現代詩文庫『福間健二詩集』、『秋の理由』、『侵入し、通過してゆく』(すべて思潮社)など。詩論集『詩は生きている』、映画『岡山の娘』、『わたしたちの夏』など。映画の新作『あるいは佐々木ユキ』が公開中。

『あるいは佐々木ユキ』ブログ:http://sasakiyuki.doorblog.jp/

ツイッター:https://twitter.com/acasaazul

© Toshio Hirayama