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icon 2015.8.14

A,B,CIVILMAGAZINE 第2回 清水えり子(zazi)×ホンダチヒロのデザイナー対談――クリエイティブ集団・CIVILTOKYOが注目アーティストにインタビュー

「アートから始まっていて、それを服にするということで色々試しているところですね」(清水)

――お二人それぞれのことについても伺っていきたいのですが、清水さんは刺し子とドローイングで服を作っていらっしゃいますよね。始めたきっかけはなんだったのでしょうか。

 

清水:私はもともと刺し子で洋服を作るということをしていたわけではないんです。武蔵野美術大学のテキスタイルデザイン専攻にいたんですが、服づくりではなく、染色技術を使って繊維を素材にアート作品を作っていました。ファッションは大好きでしたが大学では全く勉強してないです。テキスタイルデザイン専攻にいると、紙に描いたドローイングやグラフィックを布に置き換える作業があるんですが、私はそれがなかなかうまくいかず…ドローイング自体はよくても、布に変わるとつまんなくなってしまう。なんか足りないな、と思っている時に、大学にアーティストの椿操さんがいらして、特別講義を受ける機会があったんです。椿さんは布に刺し子をして大きな絵画作品を作っている方でした。

 

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清水えり子(zazi)

 

――そこで刺し子と出会ったんですね。

 

清水:はい。椿さんの作品、すごくかっこよくて。椿さんのお人柄もあってか、刺し子にとても魅力を感じました。自分のドローイングに合うかもしれないと感じたのも大きかったです。椿さんがいらしたのが4年生の6月くらいだったのですが、「卒業制作は作家としての一番最初の作品であって、スタートだから」と言われて、それまでやったことのなかった刺し子を初めて使いました。本当に、それがすべての始まりになっていまでも続けているし、椿さんに会っていなかったらやっていなかったことなので、出会いにとても感謝しています。

 

ホンダ:清水さんの学生の時の話、初めて聞いたかも(笑)

 

清水:あんまり話したことなかったかもね(笑)

 

――zaziを始められたきっかけはなんだったんですか。

 

清水:大学4年生の、刺し子を始めるちょっと前くらいの時に、原宿のセレクトショップ「lamp harajuku」のディレクターの方に声をかけていただいたんです。お店に作ったものを置いてもらえることになり、その時はアクセサリーやZINEを作りました。そこからzaziが始まったんですが、最初は服のブランドというより、アーティストが小物を作っている、という感じだったんですよね。

 

――そのディレクターの方、とてもお目が早いですね。

 

清水:そこから定期的に商品を作っていき、一年過ぎた頃、合同展示会に出そうということになりました。せっかくなのでスカートを作ろうと、その時初めて作品が服の形になりました。そこからシーズンで作っていくようになり、また次のシーズン、とやっているうちに、だんだんオーダーが増えていきました。実は卒業後会社員をしながら両立していたんですが、zaziだけでやっていける目処がギリギリたってきたので、去年の年明けに会社を辞めました。両立していた2年間は大変でした。ボロボロでした(笑)

 

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zazi「スプリングハズカム」2014.3.1~3.31 lamp harajuku window display 外から

 

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zazi「スプリングハズカムカム」A4フライヤー

 

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左:zazi 14AW/総刺し子のウールコート、右:15AW/刺し子のキルティングコート

photo: Miyoko Fujii

 

――卒業制作もzaziの洋服もそうですが、この刺し子の量は相当なストイックさを感じます。

 

清水:zaziの服、刺し子は一番ポイントとなる要素ではあるんですが、今季はアレンジをしたいと思って色々試しています。例えば、このキルティングコートは、袖と肩とポケットは刺し子で、全身の身頃はキルティングにしています。

 

――それでもかなりの作業量だと思いますが(笑)

 

清水:去年に比べたら私自身の刺し子の手作業は減っていますが、その分職人さんの技術を取り入れています。キルティングは柄のデザインは私がして、作業は職人さんにやってもらっています。几帳面に作られているべき部分は職人さんにお願いするほうが、私の刺し子が引き立つと思いました。

 

ホンダ:去年のはちょっと境地に行っちゃってたもんね(笑)

 

清水:去年と比べて着やすくなったという意見もあるし、物足りないという意見もあります。アートから始まっていて、それを服にするということで色々試しているところですね。

 

――ファッションブランドに限らず、アーティストの作品は、洗練されるにつれ余分なものがなくなっていきますよね。zaziも新しい境地に一歩踏み出しているのかもしれませんね。

 

清水:守り抜くべき部分もありますが、新しいものを作っていかないと自分の気持ちも新鮮ではなくなってしまうし、着てくれる方にもすぐに飽きられてしまいますよね。この辺りの差し引きは難しいところですが、長く続いているブランドは、そこのバランス感覚がうまいと思いますね。

 

――最近のzaziの活動について教えてください。

 

清水:zaziの洋服は基本的に完全受注生産なので在庫はなくて、いまちょうど受注会をやっていて、サンプルが出払っているのであまりお見せできるものがないのですが…

 

――でも、今日履かれているスカートはzaziのものですよね。

 

清水:そうなんです、履いてくるのが一番伝わるかなと思って(笑)7月18日から30日まで、渋谷でポップアップショップをやります。お店の方が、今年4月の装苑さんに私のアトリエが掲載されたのを見てくださったそうで、店内にアトリエを再現することになっています。フライヤーはホンダさんに作ってもらっています(編注:取材は7月初旬だったため現在は終了)

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清水さんの卒業制作「NIKKI」。高さ2m、長さ6mの長い布のタペストリー作品。

清水さん自身が撮影した写真やドローイングをシルクスクリーンで布にプリントし、

コラージュ。そのかけらを貼り付け、周りを赤い糸で刺し子を施している。

 

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zazi「リミテッドムービングスタジオ」 goen℃ gallery store 2015.7.18~7.30

店舗内装:studio bowl

 

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zazi「リミテッドムービングスタジオ」A5ミニポスター