taipei4-4
icon 2014.12.28

台北ストーリー 第4回 11月20日号――あの大物俳優主演の新作短編を携え、「中華圏のアカデミー賞」に参加した宮崎大祐監督による台北紀行!

台北ストーリー 第4回 11月20日号

宮崎大祐

 

11月20日

 

いろいろあって今日も寝不足で死にそうである。どうにかこうにか失礼がない程度に午前の会合を済ませ、近所の食堂で日活のKプロデューサーと昼食。ホントどうにかなると良いんですがねえ……どうにも難しいのです。そしてここの牛肉麺もまた味が薄くお湯の中に伸びた麺が浮かんでいる。無性に日本のラーメンが食べたくなるのを堪えてバスで企画展の授賞式に向かった。

 

taipei4-1

FPP閉幕式

 

台湾人が1人もおらず、中国人1人+華僑が2人+その他というスタッフで参加している私たちが何かしらの賞をいただけるわけがないのだが企画自体はどうやら結構な話題になっていたらしく、今回のFPPはアジアのアート・ハウス映画界隈への本企画の周知という意味では悪くない結果だったのではないか。ここに来てようやく日本チームの方々とお会いできたので、ご挨拶。折角だからとFlash Forwardの打ち上げに一緒に向かう。

 

taipei4-2

MIDI Z監督と

 

taipei4-3

MIDI映画を支える俳優の吳可熙さん、フー・アンさんと

 

辿り着いた店の内装は端的に言って日本のキャバクラのような下品なものであり、最後の打ち上げにここはどうなのだろうと思わなくもなかったが、食事をしているカップルたちの辿々しい手つきと神妙な面持ちを見ていると、どうやらオシャレで有名なレストランのようなので黙した。酒をかっくらって散々騒いだものの、それでもまだ20時前後だったので台湾の若手No.1女性監督と言われるCJの真っ赤なSUZUKI車にリーと共に飛び乗り、廃工場のあとに建てられたオシャレエリア・松山文創園を案内してもらった。

 

個人による松山文創園區の紹介映像

 

戦前戦後の街並が敢えて残されているこのエリアは映画的な空間が非常に多く、台湾映画の巨匠たちがどういった景色や日常から映画的インスピレーションを受けていたのか、若干ながら得心することが出来た。突然の停電もまったく無視して3人で散々飲んだあとはCJの人生・恋愛相談を聞きながら近所のマラソン・コースを歩いた。最初は「こりゃ、ツァイ・ミンリャンっぽいな」と嬉嬉として歩いていたが、オチがないのに感情的な話を聞きながらコースを何周も何周もする内に、この気まずさってミンリャンというか(リチャード・)リンクレイターかホン・サンスじゃないのと思ったので、「せっかくシネマチックな夜なんだから、良いオチをつけろよ」とリーに囁き、タクシーに飛び乗り、朝日を浴びながら独り帰った。ということにしておこう。

 

ツァイ・ミンリャン監督引退作『郊遊<ピクニック>』のトレイラー映像

 

リチャード・リンクレイター監督『6才のボクが、大人になるまで。』のトレイラー映像

 

ホン・サンス監督『自由が丘で』のトレイラー映像

 

※トップ写真はニューウェイヴなリーとCJ

台北ストーリー 第3 1119日号はこちら

台北ストーリー 第5 11月21日号はこちら

 

 

 

●Profile

宮崎大祐

 

1980年、神奈川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。2004年製作の『10th Room』が、マーティン・スコセッシやジム・ジャームッシュを輩出したニューヨーク大学映画学部主催の「KUT映画祭」でグランプリを受賞。翌年、『Love Will Tear Us Apart』が日本最大級の実験映画祭「イメージフォーラム・フィルムフェスティバル」で特別招待上映される。

2010年にはベテランカメラマン・芦澤明子を迎え、長編処女作にしてフィルム・ノワールに果敢に挑んだ『夜が終わる場所』を監督。トロント新世代映画祭で特別賞を受賞したほか、南米随一のサンパウロ国際映画祭のニュー・ディレクターズ・コンペティション部門やモントリオール・ヌーボーシネマ国際映画祭のインターナショナル・パースペクティブ部門に正式招待され話題を呼んだ。2012年の国内初公開では、上映後のイベントにイルリメやGEZANらを招き、「MIYAZAKI MUSIC FESTIVAL」の様相を呈した。翌年には、イギリスのレインダンス国際映画祭が「今注目すべき7人の日本人インディペンデント映画監督」のうちの1人として選出。

そして2014年、ベルリン国際映画祭のタレント部門に招待されたのをきっかけに、アジア4ヶ国の新鋭監督が集うオムニバス映画『Five to Nine』に参加。ハードボイルドと言えばのあの大物俳優を迎えた『BADS』パートを担当している。なお、筒井武文監督の『孤独な惑星』や吉川岳久監督の『ひきこさんの惨劇』『ひ・き・こ 降臨』の脚本も執筆しており、これからの活躍が本当に楽しみな才人である。

 

http://www.daisukemiyazaki.com/