どうも。あなたの心のすきまサイト、HEATHAZEです。2015年ももうすぐ終わりますが、いかがお過ごしですか?こちらはライターとして年末年始をチョーヤ梅酒の「CHOYA Xmas Night Cruising」プロジェクトに捧げているので、もうすぐ梅アニーになりそうです。ゆくゆくは梨が好きすぎるので梨アニーになりたいです。
さて、ここHEATHAZEでひっそりと、しかしこつこつと続けている連続特集「ぷりぷり伊能プロジェクト」。日本で初めて正確な地図を作った伊能忠敬と日本初の県民ギャグ漫画『ぷりぷり県』を掛け合わせたようなヴァイブスで、全国各地のイカした人や場を発信しています。2015年4月に始めてから、名古屋、東京、松江、宮崎と巡ってきました。きっかけは同年2月。ふと思い立って山口~宮島~広島を旅したときに、雪降る山口県政資料館前でMajiで凍死5秒前の経験をしまして(バスが通りかからなければ危なかった)、やっぱ「日本広すぎ、寒すぎ、人いないところはいなさすぎ」だと。そんな地理的にも文化的にもタフすぎる状況にあっても、「おもしろいことカマしてやるぜ」というインディペンデント・スピリットあふれる人や場は全国各地にうごめいているはず。伝えていかなきゃ。と、誰に頼まれてもいないのに変な使命感に突き動かされてしまったわけであります。そしてあわよくば、インターネットでも距離を、重さを、遅さを感じてほしいと。
とはいえあまのじゃくなので、最初から大阪や福岡のようなすでにイケてる土地を紹介してもなあという気もありました。でもそろそろいいだろうということで、測量7回目の今回は関西にロックオン!なんで関東より関西のほうが「アンダーグラウンド」「ジャンク」「サイケデリック」という言葉が似合うのだろう?顔つきやノリもそうですが、こっちの人間と血液の濃さが2段階くらい違う気がするのはなぜだろう?本当にざっくりですが、フォークにしてもパンクにしてもエクスペリメンタルにしてもインディーロックにしても、関東とは違う関西の文脈がしっかりある。京都だけ見ても京大西部講堂、どらっぐすとぅあ、立命館ロックコミューン、BOROFESTAときらびやか。いまぱっと思いつくだけでも第七藝術劇場、シネ・ヌーヴォ、CO2、birdFriend、IdleMoments、smoke、ナイスショップスー、ミネラル、Booty Tune、Terminal Explosion、POW、HOMESICK、INTEL、ki-ft、関西ソーカル、関西インディミュージック研究会とずっと気になってるものがもりもり出てくる。なんだかジェラシー。ハコはベアーズ、ファンダンゴ、火影、サンホールあたりが好きです。
そんななかでも一番気になっていたのがFalus!「海外最新地下音楽のトーク&視聴会」と銘打ち、大阪は本町HOPKENを拠点に、2015年6月にスタートしたばかりの真性音楽ディガーたちによるエグいイベントです。企画の発起人でヘビーリスナーの良心・V8(古川正路)さん、京都のレコードショップ・Meditationsの超名物バイヤーである舘脇悠介さん、国内外の先鋭音楽発信に尽力したHi-Hi-Whoopeeが休止してからはVapor Drawingsでブログを続けているLa_Repriseさんという最先端ボーイ3人からなっています。そして開催直前の最新回では、東京からスペシャルゲストとしてカセットテープのハードコアコレクターであり知る人ぞ知るブロガーのDirty Dirtさんが出演するというではありませんか。その話を先日渋谷WWWで行われたイベントBONDAID#7でDirty Dirtさん本人から聞き、Falus初回から虎視眈々と特集する機会を伺っていた身としてはこれを逃すわけにはいかないと、思い切って4人にメールインタビューを敢行。超地下からちょっと地上に出てきていただきました。普段の「ぷりぷり伊能プロジェクト」はコラムを寄稿いただいているんですが、今回は年末年始スペシャル特大号ということで対話形式でお楽しみください。自分はただのミーハーなのでアカデミックなものではないかもしれませんが、4者4様の想いを書き留めることができて感無量でした。東京、うかうかしてられないんじゃないですか!?
ちなみに本文中にも出てくるヴェイパーウェイヴ、それはジャンルではなくムードでありスタンスであると思ってるんですが、私のヴェイパーウェイヴは大阪なんです。国際結婚で共働きしていた両親に、なぜか夏休みになると当時祖母がいた大阪にトバされるという謎な習慣がありまして。しかも祖母は超直情的でヘビースモーカー、早朝や深夜や変な時間帯に喫茶店・ゲーセン・銭湯・スーパーマーケットに行くもんだから、合わせるのがなにげに大変。祖母と夜ふかしして深夜3時頃にふと目が覚め、ザーザーになったテレビ画面をしばらく眺めていたこと、いまでも思い出します。その感じが自分のなかのヴェイパーウェイヴなんですよね。ざらついた小学生時代でした。
またリード文が長くなっちゃいました…すみません。とにもかくにもD/P/I、YPYの次はこのPIP(ぷりぷり伊能プロジェクト)がくる。ってことでHEATHAZEからの鬼のクリスマスプレゼント、大阪はFalus特集号、受け取ってください❤そしてぜひ本町HOPKENに足を運んでみてくださいね。全国制覇まであと42道県!(HEATHAZE主宰・福アニー)
V8(古川正路)
――まずは簡単な自己紹介をお願いします。
古川正路(以下、古川):大阪で音楽を聴いているおっさんです。舘脇君、らるぷり君よりもひと回り以上、上です。
――ざっくりで構いませんので、小・中・高・大・社会人に至る音楽遍歴を教えてください。
古川:僕はヤンキーがはびこる京都のど田舎生まれで、目覚めはBOØWY、BUCK-TICK、Xとかです。でもバンドというよりはコンポーザーのギタリストに興味が集中していました。彼らは結構尖った洋楽をディグしていて、布袋からはニューウェイヴやNDWを、今井寿からはインダストリアルやノイズを、hideからは最新のオルタナやラウド系を、という感じで海のものとも山のものとも分からない洋楽ロックの伝道師的な存在として追っていました。フリッパーズ・ギターも世代的にガッツリ通ってるし、そういう大量のインプットをしている人がやるアウトプットの面白さ、というものに惹かれる傾向にあったように思います。大学を出てからはかなりブラックな風俗情報誌編集者時代や結婚もあって音楽と離れていましたが、金銭的な豊かさよりも時間があってそういう事を趣味にしている時代の方が幸せだったと思い、ちょっと楽な仕事に転職して最近現行ものを聴き始めた感じです。そういう背景なので数を聴いて大局的に楽しむというのが今でも好きですし、そういう聴き方をしている人やアーティストが好きです。
――そもそも「Falus」を始めようと思ったきっかけは?レギュラーメンバーである舘脇さんとらるぷりさんとはどのようにして出会ったのでしょうか?
古川:2013~4年くらいに新しい音楽を知るのに、MeditationsのサイトとHi-Hi-Whoopeeをよく見ていました。Meditationsに関しては舘脇君の文章が好きでショッピングサイトというよりは媒体的な見方をしていました。Torn Hawkのアルバムのライナーをされていたのもあり、Torn Hawkの映像の視聴会をしませんか、というメールを買い物のついでに送ったのが最初だと思います。そしてそこから実店舗に行ってご飯食べたり色々話をしたりして仲良くなりました。らるぷり君とはD/P/Iのライブの時に声をかけてもらったのがきっかけです。Hi-Hi-Whoopeeの人とリアルで会えるとは思わなかったです。そこで直感めいたものがあり彼も誘いました。新しい音楽のことをするならMeditationsとHi-Hi-Whoopeeの人という時点で僕の中では最高だな、と思ったんです。色々あって今は僕もメンバーに入ってはいますが、メインは彼ら。こういう音楽は若い人が伝えていった方がいい。
Torn Hawk「Acceptance Speech」
――ブログでもラジオでもDJイベントでもなく、「トークショー」というかたちを選んだのはなぜですか?
古川:2011年ごろ日野浩志郎君(YPY/goat/bonanzas)が色々スペースを使って音楽講座的なイベントをしていて、ライブやDJイベントとは違った、話と音をゆっくり聴けるイベントに興味を持ちました。酒を飲んで盛り上がって楽しむイベントもいいですが、知る楽しみがある場があってもいいのでは、と。その日野君主催のイベントで東瀬戸悟さん(forever records)のレクチャーもあり、それは僕が引き継いだのですが、徐々に新しい音楽についてやりたくなり、僕自身も知りたくなり、今のFalusに繋がっています。行った事はないですが幡ヶ谷FORESTLIMITの企画も参考に見ていました。あと演奏者でなくてもリスナーの立場でもアウトプットはできる、と挑戦してみたかった気持ちもあります。
――積極的に海外の地下音楽事情を発信するFalusは、日本の音楽を取り巻く状況が内向きになっているなかにあって、とても心強く思っています。そこに焦点を絞ったのは?
古川:まだ評価が定まっていないもの、未知なものを感じて聴く会にしたかったからです。過去の事はもう専門的な人がいるし、あんまり語りすぎてスノッブな方向にいきたくないというのもありました。「よくわからないけど面白い奴がいるからみんなで聴いてみよう」、そんな感じが見る立場ならいいな、と。別に地下にこだわっている訳でもないですが新しいところを紹介しようとすればまだ表に出てきていない所になるので、どうしても地下になってしまいます。
――イベント名をFalusという勇ましい名前にしたのは?
古川:これは「パンパンに膨らんだ男根」という意味です。イベント名は深夜2時くらいまで舘脇君とMeditations店内で、卑猥な言葉をひたすら並べていました。VaginaなんとかとかLabiaなんとかとかCockなんとかとか、中学生かよってノリです。もともと舘脇君がチョー卑猥な名前でやっていたブログのファンなので、そういうニュアンスを残したかった為その手の言葉しか考えてなかったです。そういうひどいのを山盛り出した中から、らるぷり君がこれじゃないですか、と選んでくれました。実際は超ひ弱な三人ですが男根主義にカマしたいという思いも入っています。あとTGに敬意を表しています。
――「男根主義にカマす」ってイカしてますね!フライヤーのデザインもセンス抜群ですが、どなたが手がけているんですか?
古川:らるぷり君です。Hi-Hi-Whoopeeがコンパイルした『Meili Xueshan I&II』のジャケットは彼のデザインと聞いて。こういうデザインはプロより音楽を色々聴いててデザインもできるくらいの人の方が結果良いです。らるぷり君のこういうセンスはグッズを作るなりサイトを作るなりもっと活かしていきたいです。
――古川さんと言えばニューウェイヴということで、「俺のニューウェイヴ3曲」を一言添えて教えてください。
古川:そうなんですか!?確かに布袋寅泰の『Radio Pleasure Box』と小野島大の『UK NEW WAVE』は腐るほど読みましたけど…今は昔ほど聴かないですが、曲に絞るのも難しいのでアーティストでよければ、プロデューサー/エンジニアのConny Plank、Liaisons Dangereuses、Dieter Moebiusです。マシンと肉体性の混じった音数少なめな感じが一貫して好きです。これは今の音楽の好みにも通じてます。Liaisonsは好きすぎて「どん兵衛」ベストも持っています(『ERECT magazine』で着用)。
Liaisons Dangereuses「Los Niños Del Parque」
――2015年、圧倒的再生回数を誇る一曲またはアルバムを教えてください。今年リリースのものでなくても構いません。
古川:圧倒的というのはないですが、日本のgoat、Tyondai Braxton、L.I.E.S.のRandomerの新作、Where To Now?の作品はよく聴きました。個人的には目新しさと強度、今はこの二つしか求めてない気もします。消費されにくいものが好きというか…だから幅は狭いです。
――古川さんは他の3人に比べて女子度低めといいますか、硬派な印象を受けるのですが、音楽に限らずとも絶対に外せない女子を教えてください。
古川:ほっておいてください(笑)外せない女の子はここでは言えません。
――音楽以外で2015年にハマったことは?
古川:ここでは言えません。
――2015年12月23日(水)発売の『ERECT magazine』に「大阪特集」を寄稿したとのことですが、東京とはまったく文脈が違う大阪という土地にとても興味があります。内容のさわりだけでも教えていただけないでしょうか?
古川:大阪にも色々ありますが今回で取り上げたのはディレクターの真壁昂士君と話して、特にエッジが立った人、物作りをちゃんとしていて面白い人、場所という観点になります。birdFriend主宰・YPY(日野浩志郎)、DJ行松陽介、Wood Frame主宰・小林祐輔、Zine作家Quickcanal、Pulpディレクター田窪直樹、アーティストUC EAST、などです。あ、僕たちも賑やかしで参加してます(笑)特にシーンというシーンは考えてなくて人の軸でピックアップしました。他にも大阪にはCE$さん、buffalomckee、インベさん(naminohana records)、Newtone Records 、LVDB BOOKS、ナイスショップスーなど、まだ紹介したい人・お店があります。
YPY『Visions EP』
――他の3人について、一行のレコメンド文を書いてください。
古川:
●舘脇さん:見つける一次情報のヤバさ、それを伝える文才は随一。それと何か闇がある所。
●らるぷりさん:大局的な聴き方とバランス感覚とインターネット感。それと何か闇がある所。
●Dirty Dirtさん(ゲスト):購入数と継続力とカセット愛ではまだまだ敵なし。それと何か闇がある所。
――ぜひFalus「東京出張編」もやってほしいのですが、その予定は?
古川:Dirty Dirt戸田さんやmelting bot海法さん達のおかげで東京の方から応援のお声を頂くこともありありがたいです。でもあまりドヤドヤ感がでるのはFalusっぽくないし、僕個人はプラスもマイナスもない温度で続けていく事が最も力強い事だと思っていますので、今のところは考えていません。
――最後に、全国のみなさんに一言!
古川:温かい目で見守ってやって下さい!
※お次は舘脇悠介さんです!