Design:Tadashi Ueda
100円で見つけたCDたち
センスの良い人は買い物上手な人が多い、って本当にそう思う。
「この服500円!」
とか、
「この椅子は300円で見つけてきた!」
みたいな。
安く良いものを買うことは、単純に節約だとかそういうことではなく、本当にすごいことは「安く買った」ということより、安く「見つけてきた」ということだと思います。
安いだけの商品は世の中にたくさん溢れているわけだから、本当に良いものを安く見つけてこれるのはちょっとした才能だと思います。
僕も手前味噌で本当に恐縮ですが(本当に)、いろいろ安く良いものを見つけてくるのが得意です。
古着屋、古本屋、レコードショップ、リサイクルショップ、蚤の市などなど、こういったところにもうかれこれ10年以上は通っていると思います。
通っているというか、普通に好きなので、時間があると今でもこれらのどこかしらには出没しています。
今回は僕がつい最近100円で買ったCDたちを10枚ご紹介。
1. 「Desert Winds: Six Windblowna」Scott Smallwood (2002)
ジャケ•ジャンル買いした作品。
実験音楽/現代音楽/即興/ノイズ/ポストロック、みたいジャンルの音楽は詳細がわからなくても、安いとけっこう買ってしまいます。
以前は2000円とか3000円とかでも普通に買っていたのですが、ジャンルがジャンルだけに、本当に「??」となってしまうことも多々あり、今は安いときに気になったものをまとめ買いしています。
この作品はサウンド・アーティスト スコット・スモールウッドのフィールド・レコーディング作品。ジャケにもあるように、砂漠で録音を行っており、風により吹き飛ばされた様々なものの音を録音しています。
砂漠の音と物体が奏でる音。自然と人工の音楽集です。
2.「West Coast」junk culture (2009)
オックスフォード出身Deepak Mantenaのソロ・プロジェクト、ジャンクカルチャーの「West Coast」はアーティスト名の通り、ジャンクなカルチャー音。
デジタルサウンド、サンプリング、電子ポップ。
Prefuse 73を感じさせる曲もあれば、ファミコン的なピコピコな曲も。
こちらの「West Coast」は輸入版のみですが、日本独自企画盤「Triple’s Three Sisters」が発売されているようです。
3. 「Run Come Save Me」Roots Manuva (2001)
UKのヒップホップ•アーティスト、ルーツ•マヌーヴァの2nd。
ずっと聴きたくて、でもなぜか買ってなくて、たまたま100円で見つけることが出来た一枚。
僕は個人的にThe Streetsが大好きで、このアルバムは2001年だからUKグライムの始まり、みたいなアルバムのような気がします。多分。
UKヒップホップはあきらかにUSとは違う流れで、UKグライムのとき僕は22ぐらいだから本当にNMEとか読みあさってた時期。でもなぜか買ってなかった一枚。
無機質なビート、ガラージな音で、レゲエの要素も。
ギャングスタとか苦手な人はこういったところからヒップホップを聴き始めるのも良いと思います。そんな音です。
4. 「This Wilderlessness」yamon yamon (2010)
スウェーデンストックホルムの4人組ヤモン•ヤモンの1stフルアルバム。
透明感のある爽やかでミニマルなギターロック。
ときどきのシューゲイズと若干のエモ要素もあります。
聴いていて心地良いサウンド。
The Sea And Cake、The Incredible Moses Leroy(インクレディブル・モーゼズ・リロイ)とか好きな人におすすめです。
日本のレーベルは残響レコードです。
5.「Burn Piano Island Burn」The Blood Brothers (2003)
残念ながらすでに解散してしまったシアトルのハードコアバンド、ブラッド•ブラザーズの名盤3rd。
これもずっと買わなきゃ、と思っていて、なぜかずっと買っていなくて、たまたま100円で見つけられたので。
何を勘違いしたのか、もっとガレージ•ブルース的な音だと思ったら全然違ってました…。
オルタナティブなハードコアで、アット•ザ•ドライブ•イン的な音。
ロス・ロビンソンによるプロデュースなのでどうりで…。
ライブが見てみたかったです。
6.「Hercules & Love Affair」Hercules and Love Affair (2008)
これもなぜか買ってなかった一枚。そういうの、多いんです。
知ってるだけで聴いていない系なので、アントニー•アンド•ジョンソンズのアントニーが出ててびっくり。
もっと80’sディスコサウンドで踊れるような曲だと思っていました。
でもディスコサウンドであることに違いはないです。
ちなみに僕はアントニーが来日したときの草月ホールでのライブを見たのですが、あれは本当に素晴らしくて、見れたことを誇りに思うぐらいのライブでした。
7.「Wattenmeer-Suite」Thomas Gerwin (1996)
電子/実験音楽家のトーマス•ガーウィンの1996年の作品。
気になったので買ってみた作品です。
いろいろ調べたのですが、詳細分からずでした…。
人の話し声、鳥のさえずり、波の音、パレードのアコーディオン、船の汽笛と思われる音などが入っており、フィールド•レコーディング作品だと思われます。
8.「Melke 」kim Hiorthoy (2002)
ノルウェー出身の電子音楽アーティスト、キム•ヨーソイの様々な楽曲を集めた編集盤。
北欧のAphex Twinという評価もあるようです。
この編集盤はアンビエント要素が強く、環境音楽のようでもあります。まさに北欧的。静かな電子音です。
キムはグラフィック・デザイナー、ライター、フォトグラファー、脚本家としても活躍するクリエイター。
このアルバム、個人的なかなり好きな一枚です。
9.「ペペコ」乍東十四雄(サトウトシオ) (2010)
3曲入り自主制作CD-R。
個人の名前みたいですが、静岡県伊豆を拠点に活動している4人組バンドです。
約8年間に渡って「乍東十四雄」として活動していたが、現在は「ヤング」と改名し活動中。
ホームセンターで買った木材とドリルで伊豆の山奥にプライベートスタジオを設立し、練習からレコーディングまで全てそこで行っているようです。
3曲とも野外フェスにぴったりなポップで陽気なサウンド。
9月には「ヤング」として1stアルバムが発売予定。注目です。
10.「tetra axis」ふくろ (2011)
日本のインストバンド「ふくろ」の2nd。
toeの美濃隆章がプロデュース。
高速ガットギターによるインストサウンドを軸に、時にはアグレッシブなサウンドも展開。
何度かライブも見ています。
にせんねんもんだいやtoe好きにおすすめです。
以上の10枚です。
やっぱり安いとキズが多かったり、状態が悪かったりするのもあるのですが、僕は基本的に聴ければ問題ないので。
「安いこと」はもちろんすごく好きなのですが、安いことよりも「掘り出しものを見つける」ことの方が好きかもしれません。
安く「見つけること」。これが好きです。
そしてこれらは安く売られてしまう、100円の音楽たちだからと言っても、悪い音楽では決してないです。
むしろ、飽きがこない良い音楽ばかり。
今後も掘り出しものを見つける日々は変わらず続きそうです。
あ、でも普通の値段で買うこともありますよ。念のため。
●Profile
石崎孝多
1983年生まれ。フリーペーパー専門店「Only Free Paper」元代表。amazonにない本を紹介するnomazonなどに関わりながら、企画、執筆、選書、店舗のディレクションなど多岐に渡る活動を行っている。