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icon 2013.8.27

7/26 GRINGO MARIA “DETOX” Release Party@町田FLAVA ライブレポ

既にSIMI LABとLowPass、そしてFla$hbackSのライヴを終えた町田FLAVAは十分に出来上がっていた。皆の視線が前方に集中していて、一度前列を外れてしまった自分はもう戻れなかったが、後方からフロア全体を見渡せばステージそっちのけで談笑に興じている者が少ない事に驚いた。それだけライヴを楽しみに来たファンが多いという事だと思う。素晴らしい事だ。JUMAがオーガナイズを務めているイベント、GRINGOの第三回目であったこの日は、MARIA待望の初ソロ・アルバム『DETOX』のリリース・パーティーを兼ねていた。

 

「町田FLAVA準備はいいかい!それではミス・デトックスをご紹介させていただきましょう!!」とMCを務めていたNONKEYが横浜らしいレゲエ調の声でフロアを煽る続いて先程からステージ上でソワソワした様子のMARIAも「こんなに人集まっちゃってさぁ、ほんとにMARIA様を見に来たのかい!?」といきなりのMARIA様節だ。これにも既に盛り上がっている会場からは大歓声が上がる。女性ファンが多いのか、黄色い声が多かったが、バックDJのOMSBが「盛り上がってこうぜぇぇー!」と雄叫びを上げれば、フロアの男達が声を上げた。その歓声に重なるようにアナーキーなイントロで始まったのが「Empyre」。迫力のある低音と緩急のあるMUJO情のトラックが、音源とは段違いにハイテンションなMARIAの声と重なる。ここまで迫力のある曲だったのかと気圧されていると、「セイ、マ・リ・ア!!」のコールも男顔負け。やっぱ…MARIA様の迫力は凄い!一発のシャウトが寺の鐘を鳴らす橦木のようで、男顔負けというよりも、男よりも声量がある!

 

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「God Is Off On Sunday」から「Make It Happen Wit My Ass」へと、MARIAが醸し出すヴァイブスが徐々に妖艶なものになってゆくと、サイドMCをしていたJUMAから「ラップよりもお喋りを楽しみに来てる人もいるはずだよ」とMCを促される。すると、ちょっと書くのがはばかられる女子の下ネタのコール・アンド・レスポンスを始めるMARIA。この反応には流石に若干恥じらいが混じっていたが、「私のアルバム『DETOX』買ってくれた人、どのくらい居るー!?」と投げかけると会場から拍手の混じった歓声が沸き立ち、なんと花束まで届けられ「嬉しくって泣いちゃいそうなんだけど!」と満面の笑みだ。するとOMSBが間髪入れずに「泣いてる場合じゃねぇ!ディスれ、ディスれ!!」と茶々を入れ、それを受けて「そうだ! 私は媚を売る女が大っ嫌いだぜ!」と急変するMARIA。「ぶっ殺してやれ!」とOMSBが油を注げば「恋愛なんて正当勝負だYEAH!」となんだか変な殺意へと目覚めてゆく2人! そしてその殺意の篭ったディスの矛先は、女子力高めな腹黒女へ向けられている「Helpless Hoe」へ。回転数を落としてスクリュー気味の低い声を使ったフックのこの曲のアウトロでは、「ディス・シットはまだまだ続くぜ!私の事をな、バラバラにしようとしている奴がいるんだよ!」と叫び、lil’諭吉によるドロドロしたビートの「Tear Me Down」へ。イントロが流れた瞬間に前列ではぶち上がっている。思うに、アメリカのヒップ・ホップと日本のヒップ・ホップを分けて考えているリスナーも多いと思うのだが、SIMI LABのファンは比較的洋楽のヒップ・ホップに詳しい人が多いようにも思う。その為か、こうしてスロウで独特のノリのビートでも歓声が上がる事は、普段アメリカのヒップ・ホップしか聴かない人にも知ってほしい一面だ。その後、アルバム内で最もダウナーな曲へ。アメリカの『ベイエリアの重鎮』ことE-40、その息子であるISSUEがビートとラップで参加している「Depress」は、幼い頃の過去を「日本語だと生々しすぎる」と、唯一英語でラップしている曲だ。3曲ともスロウでドロドロとしたサウンドが続いたが、パーティー感が失われること無く盛り上がっていたのは間違いなくJUMAのサイドMCが一役買っていたからだろう。

 

 

ここで一旦曲を止め、「みんな愛してる人いるー?」と切り出すMARIA。「私さ、失恋とかすると、いつでもその人が帰って来れる場所を取って置いちゃうタイプなんだよね!」と女子らしい一面を見せると、「別名フォルダ分けだ」とOMSB。「そうそう。女の恋愛は上書き保存って言うけど、私はフォルダ分けスタイル。だからさ、何かあったらいつでも声かけてよね!」と言って「Your Place」が始まる。とてもゆっくりしたR&B調の曲だ。スロウで、ちょっとさみしい失恋ソングを歌った後は「こんな感じでしんみり来ちゃったけど、ここからなんだよ!こ!こ!か!ら!周りの人に声をかければムーブメントは必ず起こるハズ!」と叫ぶと、USOWAやDyyPRIDEなどSIMI LABメンバー全員がステージに登場!「Movement」の疾走感あるトラックを作ったLowPassのGivvnもDJブース内で立ち上がり、一気にステージ上が華やいだ。中でもSIMI LABを引っ張っているOMSBのヴァースとなると、期せずしてフロアから大歓声が上がる。その様子は発足当初から今もSIMI LABを引っ張ってきたOMSBに対し、その場に居た全員の敬意が表れたかのようであった。次ぐオールド・スクールの名盤をサンプリングしたアップテンポなビートの「Roller Coaster」で、更にステージの熱は上がってゆく。サイドMCだけでは消化不足な様子がありありと見えたJUMAが最初にマイクを握り、ワン・ヴァースで力を出しきるかのように精一杯声を張り上げる。(ここでどうしても伝えたいのは、OMSBはライヴでもThe Clipseの「ZEN」のオマージュである、ZENだけ言って終える4小節を、何の恥じらいも無くやるという事だ! )最後のMARIAのヴァースを終える頃にはフロアは最高潮を迎え、コール・アンド・レスポンスで締める時にはMARIAも声を枯らしているようだった。

 

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「それじゃあ最後、ヒップ・ホップ、SIMI  LAB、支えてくれる皆に感謝のシットを送るぜ」とMARIAが言うと、暗いピアノの旋律が始まる。自分にとってのヒップ・ホップを歌った「Hip Hop’s Ma…」だ。自分の生い立ちとコンプレックスを吐露し、ヒップ・ホップと仲間に対して感謝の気持ちを表現するMARIAの事を、その場に居たオーディエンスはゆったりと揺れながら見守っていた。そしてMARIAは「皆手を上げて!あたしが見たかった景色なんだよ!みんな夢を諦めないで!」と言い、最後のフックを歌いあげる。会場からは暖かい拍手が沸き起こり、ライヴは終わった。

 

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去年の11月、OMSBとDJ ZAIのリリース・パーティーを行った時の第一回目のGRINGOを思い出していた。あれから1年と経たずに、一回り、いや二回りも人が集まっており、それでいて一体感のあるパーティーであった。来ている人々は、皆が地元の友人であるかのように酒を交わし、DJの選曲を楽しみながら踊っていた。もちろん、ライヴのラインナップも相当熱いものだったから、という事もあるだろう。そしてこのイベントに足を運べなかった人も、勿論ライヴを楽しんだ人も、8月31日の恵比寿LIQUIDROOMは外せない。毎年恒例のSummitによるイベント、AVALANCHEが待っている。Summitを代表するPUNPEE&GAPPERやSIMI LAB、THE OTOTGIBANASHI’SなどがSummit3周年を祝う。今回のGRINGOにも出演したFla$hbackSや、Summitからの意外性あるリリースも話題となったBLYYによる”黒い”ライヴがLIQUIDROOMで観られるだけでも、十分に価値がある。ポスト・ヒップ・ホップ的なカラーを持っていたSummitがどのように幅を広げていくのか、SIMI LABは勿論の事、Summitの動向にこれからも目が離せない。(斎井直史)

 

 

 

●Live Information

AVL3_フライヤーLIQUIDROOM 9th ANNIVERSARY
SUMMIT Presents. “AVALANCHE 3″
日時:8月31日(土)
場所:恵比寿リキッドルーム
料金:¥4,500(ドリンク代別)
時間:OPEN 15:00 / START 16:00~ 22:00

 

Live :
PUNPEE & GAPPER
SIMI LAB
MARIA
THE OTOGIBANASHI’S
METEOR
BLYY
Fla$hBackS

 

MC KOMICKLINICK
PARIS=HELL↓TONE(菊地成孔/大谷能生/OMSB)

 

DJ :
EVISBEATS
SUGARKANE(Chopped & Screwed)
VaVa (CreativeDrugStore)

 

23:00〜 - Official After Party -

 

 

LIQUIDROOM 9th ANNIVERSARY SUMMIT Presents. “SIMI LOUNGE SP”
日時:8月31日(土)
場所:Time Out Cafe & Diner[LIQUIDROOM 2F]
料金:entrance free *1st drink charge 1,000yen(include music charge)
時間:START 23:00~ 05:00

 

Special DJ’s :
PUNPEE
大谷能生
wardaa
and…SIMI DJ’s!!!(OMSB,MARIA,Hi’Spec,DJ ZAI,JUMA,USOWA,etc…)

 

*20歳未満の方のご入場はお断り致します。年齢確認のため、顔写真付きの公的身分証明書をご持参ください。

 

(You must be 20 and over with photo ID.)

 

info
SUMMIT http://www.summit2011.net/
Time Out Cafe & Diner 03-5774-0440 http://www.timeoutcafe.jp/
LIQUIDROOM 03-5464-0800 http://www.liquidroom.net/

 

 

 

●Album Information

maria_detoxArtist:MARIA
Title:Detox
Price:¥2,600(tax in)
Format : CD
No.:SMMT-28
Label : SUMMIT
Release Date:2013.7.12

 

 

 

 

●Profile

MARIA_アー写SIMI LABのメンバーとしても活動するMARIA。

2011年のSIMI LABの1stアルバムを発表以降、OMSBやDyyPRIDEなどのクルーメンバーのソロ作品への参加のみならず、DJ PMX「HIPHOP HOLIC」や、BLACK SMOKER RECORDS初のコンピレーションアルバム「LA NINA」、JUKEとHIPHOPのコラボ作品「160 or 80」や粗悪ビーツの作品など、様々な作品にもゲストMCとして招かれている。

2013年7月、遂に初となるソロアルバム「Detox」を発表する。本作では、盟友SIMI LABメンバーをはじめ、Cherry Brown, TAKUMA THE GREAT, OMSBの作品にも参加していたDIRTY-DやISSUE, LowPassのGIVVN, MUJO情, Earth No Mad, 東海地方の新鋭ビートメイカーC.O.S.A., Roundsvilleでも活動しているJUGGなど、幅広いアーティスト達が参加している。

仲間と遊び、夜には獲物を物色し、時には自分と向き合い繊細な言葉を紡ぐ。

その歌詞は、聴く者それぞれに「気付き」を問いかけてくれる。

自分にも人に対しても、常に真摯であろうとする彼女の姿勢に共感する人は多い。

こんなラッパー居ただろうか?

 

Photo by Mayumi Hosokura