マンボーグ(ポスター)
icon 2014.1.5

ロックバンド「オワリカラ」のタカハシヒョウリが語る、アストロン6のZ級SF映画『マンボーグ』の世界

カナダの映画バカ集団アストロン6(五人しかいない)の作品が日本に上陸した。

その先鞭をつけるSF大作『マンボーグ』はまずキャッチコピーからして最高で感動的だ。

「総制作費、パシフィック・リムの237万5000分の1!」

日本円にして8万円だ。

  メイン

 

しかし映画がはじまれば、ふんだんに登場する往年のSF映画のようなクロマキー合成やストップモーションに加えて小気味よく使われるCGが相まって(制作費8万円とは)信じられないクオリティになっている。

舞台設定は地獄からやってきた「地獄の軍団」と人類が戦っている「地獄戦争(ヘル・ウォーズ)」という推定7歳(小2)のイマジネーションで作られた設定だが、そこはベタな展開に熱くなるのが観る側の義務というものだ。

改造されて復活した主人公「マンボーグ」は、絵に描いたようなぎこちないロボット動きとロボット風無表情で、動くたびにロボコップでおなじみの機械音やピコピコ音が鳴るレトロ仕様のサイボーグだ。

正直それだけでもう「アリ」だ。

日本的に言うとファミコンの8bit世界観、荒廃した未来都市、失踪する未来バイク、レザーコスチュームの悪魔、ピューンと間抜けな音をたてて飛んでいくピンクのレーザー光線、無鉄砲ですっごいバカな若者(※1)・・・

どこまでもバカに、80年代ビデオ映画を中心とした「俺が愛した文化たち」への愛に満ち満ちている。

自分たちがめちゃくちゃに楽しんでいるのが伝わってくる。

異様に密度が濃い映像とオマージュがあふれかえっていて、やりたいことが多すぎて詰め込みすぎたんだな、と伝わってくるのもまた愛すべき点だ。

ここには夢中になっている人間の持つ「熱」がある。

僕も日本の6、70年代特撮が好きすぎて特撮歌のカバーバンド『科楽特奏隊』をやっているのだが、海の向こうに同じようにさらなるエネルギーを注いでいる集団を見つけて感動し身が引き締まる思いだ。

ただ、意外にもしっかりとストーリーは展開し、伏線も大体ちゃんと回収して、主人公サイドどころか敵側のキャラも立たせたり(どのキャラも好きだ)するあたりは、アストロン6がただのやりたい放題のアマチュアどもでなく、すばらしいセンスも併せ持った職人集団であることが伝わってくる。

そこは、やはりそうじゃなきゃダメだね!と思う。

「問題作!低予算!」という映画には、ひたすらグダグダ自己満足映画として破綻しているものが少なくない中、アストロン6の『マンボーグ』にはエンターテイメントとしての精神と原石の輝きがあり、そしてそこにオタク全開の自分ワールドが混在しているのがこの映画を特別にしている。

 サブ2

 

アストロン6に注目し『ファーザーズ・デイ/野獣のはらわた(※2)』に出資もしているのは『悪魔の毒々モンスター』でZ級映画を日本に根付かせた映画制作会社「トロマ」の総帥ロイド・カウフマンだ。

日本でのトーキョープレミアに登場した彼は、「安藤ロイドデス!じぇじぇじぇ!今デショ!倍返シダ!」と、付け焼刃の流行語を連発し、全編冗談ばっか言ってる高田純次みたいなじいさんだった。

しかし、これこそZ級映画の精神なのだと感動した。

多少、ダメダメでも楽しませようとする気概が大事なのだ。

『マンボーグ』にはそれがある。

金は無くとも、エネルギーと愛と知恵がある!

そして楽しませたい気概が!

  サブ1

 

最後に。『マンボーグ』には、同時上映に『バイオ・コップ』という映画の予告編風の短編がついてくる。

これがマンボーグに輪をかけてバカが詰め込まれてて最高!間違ってもエンドロールで席を立たないように。(タカハシヒョウリ)

 

※1:このバカな若者役の人(アストロン6の1人)の演技が最高です。ファーザーズ・デイでもおなじくバカな若者役で登場していて感動した。

※2:『ファーザーズ・デイ/野獣のはらわた』ではより予算も大幅パワーアップ!

 

 

 

●Movie Information

タランティーノよりマニアック!バートンよりファンタスティック!カウフマンよりクレイジー!

世界を熱狂させた超刺激的な2大作連続公開!!

『アストロン6の進撃!』

 

【第1弾】

『マンボーグ』

2014年1月10日(金)まで新宿武蔵野館にて進撃のトンデモロードショー!

 

【第2弾】

『ファーザーズ・デイ/野獣のはらわた』

2014年1月11日(土)から同じく新宿武蔵野館にて地獄の初夢ロードショー!

 

HP: http://astron-troma.com/

 

 

 

 

●About the author

タカハシヒョウリ

オワリカラのボーカルギター。

 

オワリカラは2008年結成。
自主制作音源(2000枚完売)を経て、2010年から3枚のアルバムをリリース。大型フェス出演、カナダツアー、多数の独自の企画を主催するなど幅広く活動。
タカハシの歌を中心にした4人のアンサンブルは変幻自在、バンド名の終わりと始まりを意味する二つの言葉が示すとおり、2010年以降のポップとアヴァンギャルド、未来と過去、そちらとこちらの架け橋となるロックバンド。

 

2014年2月26日(水)、1年9ヶ月ぶりとなる待望のフルアルバム『サイハテ・ソングス』リリース!即完売したシングル『踊るロールシャッハ』や新たな地平を行く『サイハテソング』『マーキュリー』など、音楽に対して、自らに対して、リスナーに対して誠実なバンドの本質を色濃く反映し、今まで以上にアグレッシヴでストレートな作品群となっている。60年代から現在までのロックに造詣の深い彼らならではの激しく耽美な世界も健在!