2014年2月16日まで開催中のメディア芸術の総合フェスティバル、「第17回文化庁メディア芸術祭」。そのアニメーション部門の大賞に輝いたのが、韓国系ベルギー人であるユン監督の自伝的作品『はちみつ色のユン』だ。朝鮮戦争の影響により、国際養子としてベルギー人一家に迎えられたユンと、その「家族」の成長を描く。肌の色が違っても、血のつながりはなくても、愛にあふれる「家族」のあり方を問うた作品になっている。
第36回アヌシー国際アニメーションフェスティバルでも観客賞とユニセフ賞を受賞した本作。ユン監督が自身の半生を描いたマンガをもとに、ドキュメンタリー映画監督のローラン・ボアローとともに作り上げた。手描きやCGによるアニメーションだけでなく、現代のソウル、1970年当時のユン監督が映された8ミリフィルム、記録映画といった実写映像も交え、多彩な手法でアニメーションとドキュメンタリーの融合がなされている。
2月7日、2012年の暮れに本作が上映されたポレポレ東中野にて、一夜限りのユン監督来日舞台挨拶と、サイン会付き特別上映が行われた。会場はほぼ満員。ユン監督は舞台挨拶で、アジア人であることのアイデンティティー、そして日本の文化への愛情を語ってくれた。(取材・文・写真/福アニー)
「アジア人であることの誇りを取り戻させてくれたのが日本の文化でした」
こんばんは。誰かフランス語しゃべれますか?日本語だけ?英語があまり得意じゃないから、フランス語でしゃべりますね。
いまご覧になっていただいた『はちみつ色のユン』、ちょっと感情的で重いかなあというところがあるので、最初に雰囲気をやわらげたいと思います。本作に登場したユンの友人、韓国人養子同士のキムさん、イタリア人が好きでしたよね。彼女はずっと思い続けて、めでたくイタリア人と結婚できました。
(会場笑)
僕は映画のなかでも出てきた、ブロンドの美しい女性がいいなあと思っていたんですが、途中でアジア人に変更しまして(笑)。同じく韓国人養子の女性と結婚して、もう20年になります。原作の自伝的バンド・デシネ(※)『肌の色:はちみつ色』の執筆では、奥さんがいろいろ手助けしてくれました。映画のなかのナレーションをつけるときもすごく助けてくれて。そして僕たちには18歳になる娘がいるんですが、彼女が劇中のエンディング曲をはじめ、作曲と歌唱をしてくれました。
今回なぜ来日したかといえば、文化庁メディア芸術祭のアニメーション部門で、大賞を受賞したからです。宮崎駿さんや大友克洋さんといった著名な監督の作品が受賞しているこの賞を、自分もいただけたことにとても驚いているし、本当に喜ばしく思っています。
日本でこうした賞を受賞したことは、とても意味あることだと思っています。映画のなかでも描いたんですが、僕が子どもだった頃、日本の文化は自分の人格形成にとても影響を与えるものでした。それこそYMOやゴジラ、三船……。そういうものが僕を形作ってくれたんです。当時の僕は、自分がアジア出身であることをすごく恥じていました。すごく嫌だなあと思っていたんです。でも、アジア人であることの誇りを取り戻させてくれたのが日本の文化であり、劇中に出てくるような芸術でした。そんな国の名誉ある賞をいただけたことを、とてもうれしく思っています。
自分自身を受け入れるということに、日本の文化はものすごく必要でした。僕はずっと日本人になりたいと思っていたけれど、やっぱり韓国で生まれた韓国人。でも、日本の文化に本当に助けられました。ありがとうございます。
※バンド・デシネ:ベルギー、フランスを中心にした地域のマンガのことを指す。世界的な人気を誇るエルジェの『タンタンの冒険』や、メビウスによる作品群などもバンド・デシネ(BD)と呼ばれる。(公式HPより抜粋)
●Movie Information
第17回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門大賞受賞
『はちみつ色のユン』無料上映会
2014年2月15日(土)14時@シネマート六本木
要事前申し込み。申し込みはこちら。
公式HP:http://www.hachimitsu-jung.com/
公式Twitter:http://twitter.com/HachimitsuJung
●Festival Information
第17回文化庁メディア芸術祭
2014年2月16日(日)まで、六本木の国立新美術館にて開催