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icon 2015.1.30

台北ストーリー 最終回 11月24日、25日号――あの大物俳優主演の新作短編を携え、「中華圏のアカデミー賞」に参加した宮崎大祐監督による台北紀行!

台北ストーリー 最終回 11月24日、25日号

宮崎大祐

 

11月24日

 

今日が滞在最終日なのでなにか土産でも買わないかんなと思い町をウロウロするも大したものも見つけられず。中華のファーストフード店みたいなところで辛子だれつけ麺を食べたら何もかもが冷凍ですこぶる不味く。その上結構いい値段ですっかり機嫌を損ねる。そうは言っても今日は大事な就職面接。気持ちを切り替え待ち合わせ場所に向かう。一時間に及ぶ面接。語学や私の商業性など確かに問題は色々とある。だが、ハッキリ言ってそんな瑣末なことは数ヶ月もあればどうとでもなる。解決できる。それよりも今この瞬間、私以上にこの企画に適した人材がいるのかどうかを真剣に御検討願いたい。どうしてもやりたい、台湾で。チャングーレンだろうがリーベンレンだろうが関係ない。

 

taipei8-1 鹿がカワイイ500台湾ドル札

 

面接が思ったよりも早く終わったので大量の日本人観光客と連なり、ホウ・シャオシェン監督『戯夢人生』の舞台・九份に向かう。車中昼に話し合った企画について考えていたらいつの間にか爆睡していて、目を覚ますと窓外の景色が紀州っぽくなっている。肝心の九份は、宮崎駿監督『千と千尋の神隠し』の千尋の両親が豚になるシーンまんまの景色を期待していたのだが、そんな大層な色彩でも設計でもなく。カメラアングルとフォトショの罪を考えながら帰りのバスに並ぶ。通りがかったズーズー弁のお嬢さんが妙に気になる。嗚呼またも一時間経過。行きも一時間並んだのだ。今後の予定は特にないがこんな山中でバスを何時間も待つなんて耐えられない。隣に並んでいた大人しそうな日本人観光客の方々と折半してタクシーで台北市内まで戻ることにした。車中、私が観光客目当てのナンパ師だとでも思ったのか片方の女性が非常に冷淡だったことを覚えている。西門に戻り、やれやれとオレンジ茶を飲んだ。物事がどうもうまくいかないときは守りを固めるに尽きる。と、守備的な心持ちで食べたホテルの前にある小汚い食堂の鶏腿飯が余りに美味く、偏見に翻弄される一日だったなと反省。

 

taipei8-3鶏腿飯

 

 

 

11月25日

 

そろそろ日本に帰りたいと思いはじめたころに帰国日になった。私の台北日記最後の思い出にと大事にとってあった大安森林公園を訪れた。なんとなく腰掛けたベンチの前を嗚咽しながら通り過ぎる中年女性。愛情万歳否台北万歳。

 

taipei8-4大安森林公園

 

taipei8-5おまけ

 

※トップ写真はホウ・シャオシェン監督『戯夢人生』の舞台

台北ストーリー 第7 11月23日号はこちら

 

 

 

●Profile

宮崎大祐

 

1980年、神奈川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。2004年製作の『10th Room』が、マーティン・スコセッシやジム・ジャームッシュを輩出したニューヨーク大学映画学部主催の「KUT映画祭」でグランプリを受賞。翌年、『Love Will Tear Us Apart』が日本最大級の実験映画祭「イメージフォーラム・フィルムフェスティバル」で特別招待上映される。

2010年にはベテランカメラマン・芦澤明子を迎え、長編処女作にしてフィルム・ノワールに果敢に挑んだ『夜が終わる場所』を監督。トロント新世代映画祭で特別賞を受賞したほか、南米随一のサンパウロ国際映画祭のニュー・ディレクターズ・コンペティション部門やモントリオール・ヌーボーシネマ国際映画祭のインターナショナル・パースペクティブ部門に正式招待され話題を呼んだ。2012年の国内初公開では、上映後のイベントにイルリメやGEZANらを招き、「MIYAZAKI MUSIC FESTIVAL」の様相を呈した。翌年には、イギリスのレインダンス国際映画祭が「今注目すべき7人の日本人インディペンデント映画監督」のうちの1人として選出。

そして2014年、ベルリン国際映画祭のタレント部門に招待されたのをきっかけに、アジア4ヶ国の新鋭監督が集うオムニバス映画『Five to Nine』に参加。ハードボイルドと言えばのあの大物俳優を迎えた『BADS』パートを担当している。なお、筒井武文監督の『孤独な惑星』や吉川岳久監督の『ひきこさんの惨劇』『ひ・き・こ 降臨』の脚本も執筆しており、これからの活躍が本当に楽しみな才人である。

 

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