「デザイナーとして自分が好きな人やもの、その魅力を伝えるお手伝いがしたい」(ホンダ)
――ホンダさんがデザインを始めたきっかけを教えてください。
ホンダ:母が美容師をやっていた影響で、映画の特殊メイクやヘアメイクなどに興味がありました。なので美容学校に行く!と決めていました。でも、絵も描きたいし、映像も作りたい。そんな話をしていたら、当時の高校の先生から、そういうことが好きなら美術大学というものがあるよ、と教えてもらいました。それだー!と思って、美大を受験する準備をして、一年浪人して多摩美術大学に入学することになりました。
ホンダチヒロ
――そんな経緯があったんですね。学生時代はどのように過ごされましたか。
ホンダ:大学時代は真面目でしたね。課題は徹夜してでも全部出しました。最初からグラフィックデザイナーになりたいと思っていたわけではないんです。特殊メイクをやりたかったぐらいですし(笑)授業は、写真、イラスト、デザイン、分野の違うものを取っていました。どれも自分にとっては表現するという意味であまり違いがなくて。なのでいまデザインをしているのも、そんな自分のなかの一部なのかなあと思っています。
――その中でデザインはホンダさんにとってどんな仕事ですか。
ホンダ:私、何事も結局は人だと思うんです。清水さんと一緒にやるのも、清水さんも清水さんから生まれるものも好きだからだし、そういう人の魅力を最大限出したい。色々なデザインがありますが、私はデザイナーとして自分が好きな人やもの、その魅力を伝えるお手伝いがしたいですね。自分の表現ももちろんしていきたいと思っていますし、します。
――キギのお二人(http://www.1101.com/kigi/)との出会いや入社するきっかけはなんだったんですか。
ホンダ:就職活動をしている時に、二人がドラフト(編注:宮田識が代表を務めるデザイン会社。グラフィックデザインや広告宣伝をベースに、多方面にわたりデザインを行っている)から独立するから会いに行ってみないか、とある方からお話をもらったんです。もちろん二人のことは知っていましたし、私にとって「天の上」の存在でした。そんな人たちに会えるなんて、なかなかない機会だから面接ということは忘れて作品だけでも見てもらいたい!と思い、二人を訪ねました。そんな心持ちで、リラックスして楽しく小一時間お話ができたのでそれだけで大満足でした。そうしたらしばらくたって、まずは引っ越しを手伝ってねと連絡をいただきました(笑)
――ということはホンダさんはキギの立ち上げメンバーだったんですね。
ホンダ:立ち上げというのはちょっと恐れ多いですが、最初は二人の膨大な量の作品たちを段ボールに包むところからスタートしました。その頃学校では卒業制作が始まっていて、キギから帰ってきてはひたすら絵を描く、出力かけながら眠る、という生活を送っていました。卒制も絶対いいものが作りたかったし、すべてが必死でした。
清水:卒業制作って本当に大変だった。私もその時期のこと、思い出に残ってます。
――その作品、ホンダさんのtumblrで見ました。「本 A3変形 “8kg”」っていうとんでもないやつのことですよね。
ホンダ:そうです。タウンページみたいな(笑)
ホンダさんの卒業制作「センチメンタルガールズ」 本 A3変形 8kg、ポスター B1
清水:タウンページよりすごいですよ!もっと長くて、大きくて、ぶ厚い。
――ホンダさんも相当ストイックですよね。
ホンダ:やらないと悔しいというか…卒制は1000枚じゃないといけなかったんです。私の名前には千が入っていたから(笑)実はイラストを、卒制までは発表したことがあまりなかったんです。なんとなく恥ずかしくて、でも好きで描いていて。発表できる時っていましかないかもと。やるなら思い切ったことやらないとかっこ悪いし、大好きなデザイナーさんに相談しに行ったところ、このイラストは量だとアドバイスをいただいて、だったら1000枚だ!と。そしたらこうなりました(笑)そしてキギもその頃通っていたので、場所が近いから見に行くよ!と言われて、これはまずい、本当によいものを作らなくちゃというプレッシャーもありました。(渡邉)良重さんが見に来てくれた時に、私がたまたまいなくて電話をくれたのですが、よかったよ、と言ってくれた時には少し泣きましたね。
――会社では、どのように仕事をしていらっしゃるんですか。
ホンダ:基本的にはアートディレクターがいて、その下でデザインをしています。二人は常に新しいことを探していて、そして楽しそうなんです。楽しそうにやる、ってほんとできそうでできないですよね。そして判断がとても速い。どうやったらそんな表現にたどり着けるのだろう、ということを言われたりします。そこで自分なりにどう答えるか、探していくことで可能性を広げてくださっているのだと思います。刺激的な毎日で、まだまだ日々必死ですね。
水内実歌子さんの個展「タイムスクープ」A5フライヤー
PASS THE BATON 商品 らくだ生地のマフラー
ホンダさんがイラストを寄稿したリトルプレス「dm」
取材当日にお持ちいただいたお二人の作品
――最近、お二人で一緒に活動されたものはありますか。
ホンダ:直接一緒になにか作るわけではないのですが、私が去年イラストで参加した「dm」という雑誌に、次号は清水さんも参加することになっています。私は次は映像を作ることになっていて…
――ホンダさんは映像も作れるんですか。
ホンダ:大学の頃にアニメーションを作ったりしていたことがあって、それ以来ですね。できるかな…(笑)
清水:ホンダさんの映像、すごく楽しみにしてたよ(笑)
――za本としてのこれからの活動の予定はありますか。
清水:いまは二人とも目の前の自分の仕事をがんばっているところなので、アイデアを温めている段階です。
ホンダ:ギャラリーでの展示なども魅力を感じますが、もうちょっと後でもいいかな、と思います。
清水:でも、いつかはやりたいと思ってます。
――ぜひ。お二人の活動、これからも楽しみにしています!
※A,B,CIVILMAGAZINE 第1回 CIVILJOURNALはこちら。
※A,B,CIVILMAGAZINE 第3回 中山晃子(アーティスト)インタビューはこちら。
●Information
zazi
2015年8月20日(木)まで、インディーズバンド「杏窪彌」による展示「来来!!不夜城アンアミン」@lamp harajukuにて衣装提供。
2015年8月17日(月)まで、「武蔵野美術大学×伊勢丹~U-35 若手クリエイターによるアート・デザインの現在~」@新宿伊勢丹参加。
キギ
2015年7月に OUR FAVOURITE SHOP を白金にOPEN。
●Profile
清水えり子
zaziデザイナー。1988年東京生まれ。
武蔵野美術大学工業工芸デザイン学科テキスタイルデザイン専攻卒業。
2011年在学時よりzaziをスタート。現在年2回コレクションを発表、完全受注生産で販売を行う。
ホンダチヒロ
キギデザイナー。1989年神奈川生まれ。
多摩美術大学美術学部グラフィックデザイン学科卒業。
2011年在学時よりキギ在籍。個人でもイラストやデザインをして活動中。
http://hondachihiro.tumblr.com/
za本
服を作るzaziとグラフィックデザイナーのホンダチヒロが、それぞれライフワークとして日々続けているドローイングを共に発表する場としてza本を結成。
2014年9月 東京アートブックフェア2014出展。
2015年1月 ROCKETクリエイターズ福袋に参加。