イベントが捌け、我々はSnackbar店内で簡単に打ち上げをした。オースティンのTEXMEX料理に、すこし胃もたれ気味になっていた自分には、Snackbarの薄味の魚料理はたいへん助かった。オープンテラスから夜風が吹き込み、上機嫌で飲んでいると、トムが赤ら顔で我々に「SAKEは好きか？」と訪ねてきた。聞くと、テキサスで日本米から育てて醸造した日本酒があるとのことだった。ここまで世話になって、酒まで振る舞ってもらうのはさすがに少し気が引けたが、好意は素直に受けることにした。出されてきたSAKEは、鶴の描かれたラベルに堂々と『TEXAS SAKE』と大書された瓶に入っており、飲んでみると非常に上品な、すっきりとした味で、普段醸造酒が苦手で焼酎ばかりの自分も、これは多いに気に入り、早々に一本空けてしまった。
うまい、うまいとSAKEを飲んでいる我々を、トムたちはにこにこと眺めていた。自分はこの新しい、素晴らしい友人たちに、なんとか感謝の気持ちを伝えたいと思った。もちろん、今朝合流してから「サンキュー」の言い通しではあったわけだが、それでは足りないような気がした。 自分は機材車に走り、愛用の改造ファズを取り出してきて、たったいま飲み干した『TEXAS SAKE』のラベルを剥がしてその上に貼り付け、トムたちにそれを見せた。自分の感謝の気持ちが、うまく伝わったのかはわからなかったが、彼らはそれを見て笑い、またオースティンで一緒にライブしよう、と言ってくれた。
トムたちと別れ、皆が車に荷物を積み込んでいるとき、自分は隣のコーヒーショップの壁に、大きく『i love you so much』と落書きされているのを見つけた。ちょっとした観光名所になっているのか、その前で記念撮影をする若いカップルなどが多くいるようだった。そこで十代くらいのアジア系の姉妹らしき二人がちょうど記念撮影していた。それを見て、自分は「なんかいいなあ」と思い、今夜の記念に写真に収めておきたいと思った。普段であれば、当然そのような度胸は無いのだけど、アメリカ滞在三日、フレンドリーでオープンマインドなアメリカの人々に揉まれ続けた自分は、完全にアメリカナイズされており、なんだか妙にフランクな人物に変貌していたため、恐れず、極々自然に、その姉妹らしき二人に「キャナイテイカーフォートー？」と声をかけていた。
当然、「ヨォーウェルカーム！」パシャッ！といった展開を予想していた自分をよそに、二人は一瞬、顔面を凍り付かせると、「超ド級の変態が来たわ。エスケイプしましょう、お姉様」「ええそうね。こういった規格外のガイキチはリーブイットアローンに限りますことよ」といったアイコンタクトを残してそそくさとランナウェイしてしまった。残された自分は一人、肩をすくめてオーウと嘆いた。
その直後に、「なにこれイイ感じじゃーん」と上機嫌ののりお氏、溝渕氏と、壁の前で記念撮影をした。石原の心に負った傷がありありと見て取れる、とてもいい写真になったと思う。
今回のSXSW出演は、そもそも、メンバー三人の「なんかよくわかんねえけどアメリカでライブしてえ」という、単純かつ浅はかな考えから始まったことだった。勝手に書類を作って応募し、勝手に出演を決めてきてしまった。もちろんメンバー主導で渡航することを前提に決めたことだったが、もともとがだらしない三人であるため、結果的には多くの人の厚意に支えられてやっと実現したものだった。
特に、今回記事にしたトムやテイラーを紹介してくれたtoddleの愛さん、渡航準備、ビザ関係で相談に乗って下さったズボンズのドンさん、mothercoat、LAGITAGIDAのみんな、limited express （has gone?）の飯田くん、nestスタッフ吉丸さん、SXSW ASIAのオードリーさん、現地でもいろいろと気にかけてくれたthe morningsのみんな、そして、有志の自腹覚悟で同行してくれた写真家の岬くん、マネージャーのグル•グンジ（ふたりは五日間、安モーテルの狭い部屋で我々と一緒に雑魚寝してくれた）には、この場を借りてお礼を申し上げます。
All Photo by Misaki Ichimura
●Information
6/12(Wed) 3rd Album「ubik」out！！！！
5/11(Sat) 青山 月見ル君想フ
So So Modern farewell party 「So！So！long！」
open/start 19:00/19:30 adv/day：2,500/3,000(+1D)
w: So So Modern (ニュージーランド) / the mornings
info:月見ル君想フ 03-5474-8137(16:00 ～ 21:00)
6/2(Sun) 恵比寿 LIQUIDROOM + LIQUID LOFT
ATF presents ｢TOKYO CAMP 2013｣ supported by TOWER RECORDS
open/start 12:00/12:30 adv/day：1,980/3,000(+1D) [ P:197-573 / L:75108 / e+ ]
w: 快速東京 / KEYTALK / キュウソネコカミ / Sawagi / シャムキャッツ / Czecho No Republic / skillkills / and more!
DJ: FREE THROW(弦先誠人 / 神啓文 / タイラダイスケ) and more!
info: ATFIELD inc. 03-5712-5227(平日13:00-19:00) info@atfield.net
6/9(Sun) ぐるぐるTOIRO2013 @さいたまスーパーアリーナ TOIRO
1day/2day：3,500/4,000(+1D) [ P:1day 623-261,2day 988-138 / L:1day 78179,2day 78184 / e+ ]
info: DISK GARAGE 050-5533-0888 / gurugurumawaru(dot)info(at)gmail(dot)com
7/12(Fri) 渋谷o-nest
SuiseiNoboAz 3rd Album 『ubik』 release party
open/start 18:30/19:00 adv/day：2,500/-,—(+1D) ［ zero / P:201-000 / L:78879 / e+ ］
opening act: トリプルファイヤー / DJ MEMAI
info:nest 03-3462-4420
●Profile
石原正晴
ロックバンド「SuiseiNoboAz」のギターボーカル
https://twitter.com/SuiseiNorecoRd