「映画業界はみんな嘘つきだから、嘘を言うのが正しい答えなんだよ（笑）」
江戸木：真面目な話をしようと思ったのにそこまでたどり着かない（笑）。今日はこれから『ファーザーズ・デイ／野獣のはらわた』の上映なので、この映画の話に戻しますね。本作を製作することになった経緯を教えてください。
ロイド：まずトロマはもうすぐ40周年を迎える、インディペンデントな映画製作会社だ。その歴史の中で、いろんな才能を発掘してきたよ。『ドーン・オブ・ザ・デッド』（2004）の脚本で注目を集め、マーベルの大作『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』（2014年公開予定）の監督を務めるジェームズ・ガン。『サウスパーク』（1997～）の監督のトレイ・パーカー。『ホステル』（2006）の監督のイーライ・ロスもトロマ出身なんだ。
津野：そして『ファーザーズ・デイ／野獣のはらわた』を製作したカナダの映像集団「アストロン6」も。
ロイド：もちろん！彼らはトロマのファンで、トロマ主催の映画祭「トロマダンス」に短編映画を出品してくれた。僕はそれを観てその才能に惚れ込み、本作への出資を決めたんだ。そのとき彼らには、次の映画を作る資金がなかったんだよ。でも『ファーザーズ・デイ／野獣のはらわた』を作って、さらに新しい映画も作ることができた。トロマがきっかけとなって彼らが活躍してくれるのは、本当に嬉しいことだよ。
江戸木：ちなみにロイドの弟のチャールズが監督した映画『マザーズ・デイ』（1980）は、トロマの古典的な作品なんですよね。
ロイド：『マザーズ・デイ』のリメイク作品（日本では劇場未公開）のプロデューサーが、『ラッシュアワー』（1999）の監督でもあるブレット・ラトナーだったんだ。それに参加していたスタッフが『ファーザーズ・デイ／野獣のはらわた』の案を持ってきてくれて、この映画を作ることに発展した。
（その後、前出のZ級映画『カブキマン』の話になる）
江戸木：なぜかいまロイドは『カブキマン』の話をしているんですけど……。まあその話はいいとして（笑）。それでは、ロイドに質問がある方はぜひどうぞ。
質問者A：『ファーザーズ・デイ／野獣のはらわた』の製作費はいくらですか？
ロイド：42億円です。
質問者A：リーアリー！？
ロイド：ハッハッハッ！映画業界はみんな嘘つきだから、嘘を言うのが正しい答えなんだよ。っていうのはジョークで、最大に見積もって1500万円くらいかな。
江戸木：まあ、そのまた十分の一くらいだと思ってもらえると……。
（会場笑）
質問者B：アストロン6とまた仕事をすることはありますか？
ロイド：彼らはもうビッグになったので、多分トロマで仕事をすることはないんじゃないかな。
江戸木：アストロン6はいま、ジャーロ映画にオマージュを捧げた『エディター』（公開未定）って映画を作ってるんですよね。ちょっと観ましたけど、また凄そうです。
質問者C：日本の監督で好きな人はいますか？
ロイド：う～ん、三池崇史かな。彼の作品に『カタクリ家の幸福』（2002）という映画があるんだけど、そこからヒントを得て、僕の作品『チキン・オブ・ザ・デッド／悪魔の毒々バリューセット』もミュージカル仕立てにしたんだ。あと溝口健二や塚本晋也も好き。僕が監督した『悪魔の毒々モンスター東京へ行く』（1989）に、漫画家の永井豪とタレントの関根勉にカメオ出演してもらったこともあるよ。
質問者D：『悪魔の毒々モンスター』の最新作はいつになりそうですか？
ロイド：『悪魔の毒々モンスター』（1987）のハリウッドリメイクが現在進行中だよ。脚本は『ビューティフル・マインド』（2002）のアキヴァ・ゴールズマンで、『ハイ・フィデリティ』（2001）の脚本で参加しているスティーヴ・ピンクが観客役で出演する。もしかしたら、アーノルド・シュワルツェネッガーも出るかも。これによって僕も大きな利益を得られるんじゃないかと期待してるんだけどね（笑）。あと『悪魔の毒々モンスター』の5作目はかれこれ4年くらい脚本を書いてるんだけど、製作が決定すれば僕が監督するよ。
江戸木：そろそろ時間が迫ってきましたね。
ロイド：トロマの大ファンでもあるクエンティン・タランティーノと話をしたときに、「次作るなら、俺が『キル・ビル』（2003、2004）を分けたように、あなたも分けたほうがいいよ」というアドバイスをくれたんだ。だから、さっき話した『RETURN TO NUKE ‘EM HIGH』はVol.1とVol.2に分けることにしたんだよ。
江戸木：『RETURN TO NUKE ‘EM HIGH Vol.1』は、2014年1月11日にニューヨークで公開されるそうです。同じ日に日本では『ファーザーズ・デイ／野獣のはらわた』が公開なんて、奇遇ですね。それでは最後に、一言お願いします。
ロイド：江戸木純、津野励木、キングレコード、パイオニア映画シネマデスク、ファンやサポーターのみなさん、トロマのビッグスター「毒々モンスター」、そして奥さん、どうもありがとう！
注：作品の年号は、日本公開年で統一しています。
●Information
タランティーノよりマニアック！バートンよりファンタスティック！カウフマンよりクレイジー！
世界を熱狂させた超刺激的な2大作連続公開！！
『アストロン6の進撃！』
『ファーザーズ・デイ／野獣のはらわた』
2014年1月24日（金）まで新宿武蔵野館にて地獄の初夢ロードショー！
『マンボーグ』＆『ファーザーズ・デイ／野獣のはらわた』
2014年3月1日（土）から名古屋シネマスコーレ、3月15日（土）から大阪第七藝術劇場にて地獄の新春ロードショー！
DVD＆BD、陽春発売決定！