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icon 2014.1.10

『ファーザーズ・デイ/野獣のはらわた』トーキョー・プレミアレポートVol.1◆その男、レジェンドにつき~ロイド・カウフマン新宿を行く~

『悪魔の毒々モンスター』といえば、泣く子も黙るカルト映画の金字塔。たとえ観たことはなくても、インパクトのあるタイトルとメインビジュアルは、きっとレンタルビデオ店の棚で、カルチャー誌の片隅で見かけた覚えがあるはずだ。そして、その映画を制作したトロマ社と代表のロイド・カウフマンの名前は、もはや映画以上に有名になっている。

また特筆すべきは、映画1本1本のファンというよりも、「トロマ」自体の熱烈なファンを獲得している点だ。そのファンはミュージシャンやデザイナーなど、映画以外のジャンルのクリエイターにも影響を与え、いまも世界中で新たなファンが生まれている。そう、「トロマ」はひとつのブランドを超えた価値観として、アメリカ・インディペンデント映画の歴史に確固たる足跡を刻み込んでいるのだ。

 

ロイド・カウフマンは、教師になるべくイェール大学に通っていたが、映画マニアだったルームメイトの影響で、チャップリンや溝口健二の映画など往年の名作との出会いをきっかけに映画制作を始め、1974年にトロマ・エンターテインメントを設立した。以来40年に渡り、低予算のインディペンデント体制で、エロ・グロ・バイオレンス&コメディを満載した娯楽作を作り出し続けている。彼が新しい才能との出会いを楽しみ、その後押しをする姿勢は、もしかしたらかつて教職を目指していたからかも知れない、なんていうのは的外れな見解だろうか?今回は、そんな彼が新たに才能を見出したカナダの新進気鋭の映像制作集団「アストロン6」が監督した『ファーザーズ・デイ/野獣のはらわた』トーキョー・プレミアにゲストとして緊急来日した!

 

 『ファーザーズ・デイ/野獣のはらわた』は、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2013で『父の日 ファーザーズ・デイ』というタイトルで1度だけ上映され、観客の「やば過ぎる」「もう1回観たい」という反応と、いち早く輸入ソフトで観た方々の「日本で一般公開は無理」という感想を見かけた。そんな問題作を劇場公開に導いたのが、『悪魔の毒々モンスター』を日本に紹介し、カウフマンとも長きに渡って親交がある配給プロデューサー・映画評論家の江戸木純さん。そしてお正月興行のラインナップに入れた新宿武蔵野館の懐の深さにも脱帽だ。とまれこの作品の上映自体がチャレンジを超えた事件であるから、そのプレミアとなれば必見である。ネット上では、トロマ・ファンは言うに及ばず、ホラー映画ファンに80’sカルチャー・フォロワー、Z級映画マニアからシネフィルまでが「カウフマン来日!」に沸いていた。

 

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2013年12月17日の夕方。翌日に『ファーザーズ・デイ/野獣のはらわた』トーキョー・プレミアを控えながらも、ロイド・カウフマンはいまだ東京に降り立っていなかった。配給プロデューサーの江戸木さんでさえ、「冗談ばっかり言っていて、いつ着くかハッキリわからないんだよね。夜には着くと思うんだけど」という状況。折しも寒波が日本に到来し、イベント当日の天気予報は雪。最悪、飛行機の運航に支障が出かねない。無事来日するのか?そんな不安と「さすがドキドキさせるぜ」という期待。レジェンドな男の演出は、もうここから始まっていたと言っても過言ではない。

 

明けて12月18日、トーキョー・プレミア当日。お昼過ぎに無事来日の連絡が入る。一行は宿泊先のホテルの近辺を軽く散歩したそうだ。イベントは20:20開幕。夜は厳しい寒さとなったが幸い雪にはならず、ファンを安堵させた。会場に続々と集まる観客、心なしかみんな嬉しそうな顔をしている。イベント開幕15分前、外がにわかにざわつき始めた。ゾロゾロと人だかりが近づいてくる。その先頭に、クリスマス仕様のネクタイを締めた紳士が笑顔で歩いている。ビデオカメラを片手に奥さんと毒々モンスターを、そしてサインを貰おうと待ち構えていた多くのファンを引き連れて、会場である新宿武蔵野館に現れたレジェンドの男は言った、「ドウモアリガト!!ロイド・カウフマンデス」。

 

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ロビーに集まったファンの言葉に耳を傾け、笑顔でサインをすると開幕ギリギリ。控室に荷物を置くと殆ど打ち合わせもなく会場の3番スクリーンへ向かう。ドアを開ける。満員の客席。レジェンドの男はファンに向けてどんな第一声を投げかけるのか。「皆サンコンバンハ。安堂ロイドデス。ジェジェジェ!イマデショ。バイガエシダ!」。さ、流石、レジェジェジェンドの男だ!場内は大喝采!観客の心をわし掴みにした。さっきまでのインテリジェンスな姿からは想像もつかない飛ばしっぷりに舌を巻く。もうあとは独壇場だった。

 

しかし、このいきなりの先制攻撃、「もしかしたら、軍師・江戸木純の仕込みではないか?」と一瞬頭をよぎったが、それはまさに映画の神のみぞ知ることである。

 

To be continued!

 

次回Vol.2は、ホットでクレイジーなトークを完全採録!乞うご期待。(取材・文/黒澤喜太郎、写真/Keiko Hirano)

 

 

 

●Movie Information

タランティーノよりマニアック!バートンよりファンタスティック!カウフマンよりクレイジー!

世界を熱狂させた超刺激的なやつら、ついに日本上陸!!

『アストロン6の進撃!』

 

『ファーザーズ・デイ/野獣のはらわた』

2014年1月11日(土)から1月24日(金)まで、新宿武蔵野館にて地獄の初夢ロードショー!

 

HP: http://astron-troma.com/