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icon 2014.2.15

やまだないと(漫画家)×斎藤久志(映画監督・脚本家)トークショー完全採録◆『なにもこわいことはない』公開によせて

「この映画も、わたしの『西荻夫婦』も、見ている(読んでいる)人って自分の頭の中を見ているんですよね」(やまだ)

斎藤:以前に雑誌の対談で、角川映画が好きだとお話されていました。『私立探偵 濱マイク』(TVシリーズ第10話『1分間700円』の脚本を、やまだないとが担当)を見ましたけれど、やまださんシナリオを書かれたりもするじゃないですか。やっぱり映画がお好きですか?

 

やまだ:すごく好きだし、生身の俳優さんにすごいコンプレックスがあるんです。

 

斎藤:それはどういう?

 

やまだ:映画って、演出されて俳優さんが動くじゃないですか。そこに何か新しいことが生まれるんじゃないかなって思うんです。漫画じゃ、全部自分で考えて描くから、キャラクター自体私が思わない動きをしたとか、表情をしたとか絶対にあり得ないじゃないですか?そこにずっとコンプレックスがあります。でも私、人と何かモノを作れないんで(笑)

 

斎藤:いや、そのお話を聞くと、そう感じられているっていうのは、作り方として映画的な思考ですよ。やまださん、監督をした方がいいですよ(笑)

 

 

やまだ:(斎藤さんは)演出する時、結構役者さんは野放しですか?

 

斎藤:野放しではないんですけども、さっきやまださんがおっしゃったとおりです。僕のイメージはあるんですけど、自分が考えていないことがそこに起こることが面白いんです。あと映画って心は映んないんですよ。ナレーションで、心の声を入れたりするものもありますが、僕はものすごい抵抗感がある。しかし漫画の面白いもの中には、心の声が詩的で美しい。ナレーションが良いというのもあるじゃないですか。絵と言葉ですよね。

 

やまだ:この映画は、二人の間にどういう約束があったんだとか、彼女の親とはこうなんだとか、何もセリフとしては言わないんだけど、なぜか、彼女が本を読む時は声に出して読むでしょ?おかしいじゃない、家で声を出して本を読むって。でも、そういうことをやる人なんですよね、きっと。私はそれで納得しちゃえるんだけど。そのかわり、本を読んでる時の奥さんの気持ちをすごい想像しちゃって。全然違うことを言っているのに、この人の頭の中がなんか分かっちゃうっていうか。たぶんそれは自分の頭の中なんだけど。この映画も、私の「西荻夫婦」も、見てる(読んでる)人って自分の頭の中を見ているんですよね。

 

斎藤:すごいいいこと言っていただけました。

 

やまだ:いやいや(笑)、そうだなって思って見ていたんです。自分の頭の中を見てるから、これ私の話だわって共感したり、考えたりしているんだと思う。監督が「西荻夫婦」原作で映画にしたいって言わなくてよかったなって、そう思ったのね。なんでかっていうと、監督が自分の頭の中で響いてきた状況を画にするわけだし、脚本の加瀬さんが自分に響く言葉をセリフにするわけだから、漫画の原作があろうが無かろうが、映画はその監督と脚本の人の言葉と映像になるじゃないですか。原作ってそんなに重要じゃないって思うんだけど。この漫画が好きだったって一言書いてあれば、別に原作っていちいち取り上げなくても、それは読んだ人が自分でもう一度新しい作品にしてくれればいいんじゃないかなっていつも思ってます。

 

1月12日(日) 新宿K’s cinemaにて

 

(*1)『ハルヒマヒネマ』

http://blog.livedoor.jp/nuitlog/archives/51832496.html

 

 

 

●Message from Naito Yamada

yamada

 

 

 

●Information

『なにもこわいことはない』全国リレー公開中!

公式サイト:http://kowaikotohanai.com/

2月15日(土)~21日(金)まで、渋谷・アップリンクにて上映

 

『なにもこわいことはない』アップリンク公開記念イベント上映

2月15日(土)、16日(日)、監督・斎藤久志×脚本・加瀬仁美のタッグが織りなす劇場未公開作品『スーパーローテーション』『つまさき』を特別上映!

渋谷・アップリンク公式サイト:http://www.uplink.co.jp/