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icon 2015.8.23

Koichi(Grimm Grimm)×Kohhei(Bo Ningen)のKK晩酌対談――ロンドン在住の日本人ミュージシャン、その盟友同士に音楽についてあれこれ聞く

アンダーグラウンド、アヴァンギャルド、エクスペリメンタル、オルタナティヴ、サイケデリック…どんな音楽かを表現する時にとても便利な言葉である。「言葉なんてただの言葉さ」とかっこつけてみても、やっぱりこのあやしい雰囲気ぷんぷんの言葉を見ようものなら「ひゃっほー!!」と飛びついてしまう自分がいる。けれども2015年晩夏、これらの言葉は読者にどう響くのだろう?

 

そんな折、Grimm Grimmが英国発オルタナティヴ・ミュージックの祭典「All Tomorrow’s Parties」のレーベル「ATP Recordings」から、ファースト・アルバム『Hazy Eyes Maybe』をリリースした。Grimm Grimmは2010年に解散したイギリスのロックバンド・Screaming Tea PartyのメンバーだったKoichi Yamanohaのソロ・プロジェクト。イースト・ロンドンで自主企画「Myths Of The Far Future」を定期開催したり、ロンドンのインディー・レーベル「So I Buried Records」からエクスペリメンタル・エレクトロ・デュオのTapersとのスプリット・アルバム『Grimm Grimm/Tapers』を限定リリースしたり、My Bloody ValentineのKevin Shieldsらが立ち上げたレーベル「Pickpocket Records」からシングル「Kazega Fuitara Sayonara/Tell The Truth」を発売したりと、精力的に活動してきた。

 

さっそく『Hazy Eyes Maybe』の資料を一読すると、ここにも「エクスペリメンタル」「サイケデリック」「アシッド・フォーク」と筆者のウハウハが止まらない言葉が踊っている。でも本人はそうした音楽について、言葉について、どう思っているのだろう?ということで、現在ロンドンの同じフラットに住む盟友であり、先日SUMMER SONIC 2015 HOSTESS CLUB ALL-NIGHTERに出演したばかりの爆音ロックバンド・Bo NingenのギタリストであるKohheiとのKK晩酌対談を敢行。あらかじめ送った質問を肴に、酒を酌み交わしながらのあれこれをテープに録ってもらった。お互いのこと、イギリス音楽事情、音楽の聴き方、果ては音楽にまつわる言葉の定義についてまで、熱いトークを繰り広げてくれたぞ。必読!(質問文/福アニー、文字起こし/TOMO(P-VINE、STYLE BAND TOKYO))

 

 

「結局人生は人との出会いでできているから」(Koichi)

――おふたりは現在、ロンドンにある同じフラットに住んでいるそうで。出会いはどれくらい前になるんですか?

 

Koichi:出会ったのはめちゃくちゃ前だよね…8年くらい前の2007年?

 

Kohhei:Bo Ningenが始まってすぐというか、始まった時だね。

 

Koichi:仲良くなってこの2、3年でいうと、隣の部屋に一緒に住んで、新曲やっても全部筒抜けだし。

 

Kohhei:くしゃみや鼻かむ音もめっちゃ聞こえる…

 

Koichi:リヴァーブがかかって。

 

Kohhei:サイケデリックだよね(笑)

 

――お互いの音楽についてグッとくるところ、逆にここをこうしたらもっとよくなるのではないかというのを教えてください。

 

Kohhei:Grimm Grimmの好きなところはたくさんあるんだけど、まず最初にただひたすら「歌」がいいところ。普遍的でありながら、革新的、聴いた瞬間に耳に馴染むのに初めて出会うような不思議な気分。で、これは単純な好奇心なんだけど、メロディを曲に落とし込むときに、どこまで極端にアレンジしたら崩壊するのかを見てみたい。

 

Grimm Grimm「Hazy Eyes Maybe」のMV

 

Koichi:個人的にBo Ningenの一番好きなところは初期Butthole SuffersやBlack Sabbathに通じる無秩序なエネルギーで、バンドが液体みたいに1つになる瞬間かな。ライブアルバムやアコースティックアルバムも聴いてみたい。

 

――今回、KoichiさんがGrimm Grimm名義であのAll Tomorrow’s Parties(ATP)のレーベルからリリースすることになったと聞いて、驚きました。

 

Koichi:結局人生は人との出会いでできているから…レコーディングだって森の中で一人で作っているわけではないし。誰かに聴いてもらってその人の人生に影響を与えられたらって思って、ポジティブな形でなにかに貢献できないかなというのがあって。知り合いを通して30通くらいレーベルに送りまくったんだけど、返事が来たのが一通だけで、しかもそこには「あなたの音楽を聴いている時間はありません」って書いてあって…

 

Kohhei:え、マジ!?すご!!(笑)

 

Koichi:その後、たまたまSpacemen 3の人がやってるバンドのサポートをやった時があって、それに出た後に外で飲んでたら、隣に座っていたのがATPの人で。音源の話したら、出そうよって言ってくれてさ。

 

Kohhei:それって一番自然な流れだよね。人としゃべって、二人とも飲んでたんだろうけど、それでいいじゃん。酔った勢いで(笑)

 

Koichi:そうそう。まだ曲も聴いてないのに、出そうや、みたいな(笑)

 

Kohhei:多分、ある程度本気に思ってないとそんなこと言う人たちではないし、嫌いなものは絶対に好きとは言わない人たちじゃん。

 

Koichi:言わないね。ATPの人たちは子どもがそのまま大人になっちゃったような人たちばかりで。

 

Kohhei:本当だよね、見た目は大人だけど。

 

Koichi:めちゃくちゃだけどそこはやっぱりおもしろいよ。

 

Grimm Grimm「Tell the Truth」のMV

 

――『Hazy Eyes Maybe』の日本盤ボーナス・トラックには、Bo Ningenをバックバンドにフィーチャーした「Knowing (Church Version feat. Bo Ningen)」が入っていますね。彼らを迎え、カトリック教会の聖堂でレコーディングした意図とは?また、実際やってみてどうでした?

 

Koichi:Bo Ningenの4人とは気づけばもう10年くらいの付き合いで、あまり説明し合わなくてももわかる生死感、結束感みたいなものが表面化にお互いにあって。

 

Kohhei:もうそんなに経つかあ。

 

Koichi:この「Knowing」は友人でミュージシャンのTim Garrettが録ってくれて、とても意味深いレコーディングになったと思う。教会でやった理由はその空間にある独特でアンビエントな雰囲気をレコーディングに込められればと思って、録ったのはHampstead Heathという高級住宅街にある教会で、レコーディング中あまりの重低音で住民たちから苦情がきてしまって。ずっと教会のドアを叩くのが聞こえてたんだけど、神父さんが凄く余裕のある人で、レコーディングが完了するまで待ってくれた(笑)

 

Kohhei:教会でのレコーディングに限らず、音響特性はもちろん、歴史であったり、場所の持つ霊性だったりが実際のパフォーマンスに影響すると思う。僕は特定の宗教を持たないけど、長い間人々が集い一心に祈る場所にはなにか特別なものがある気がするな。