文月
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文月悠光インタビュー◆4/6~4/19「あるいは佐々木ユキ」上映の前に

越境する言葉たち

 

――例えば「横断歩道」では「子どもたち!」という呼びかけの言葉があります。ここは、朗読するときに読者をハッとさせるような、詩の世界を立体的にするような効果があると思いますが、詩を書くときに演劇的な効果だったり、読まれることを前提として書いたりはするんでしょうか?

 

文月:私は会話が好きで、対談集を読むのが大好きなんです。人の語り口の独特なリズムがすごく入ってきやすい。金井美恵子さんや尾辻克彦さんの作品みたいなおしゃべりのような小説に惹かれます。

 目の前の現象を見ながら心の中で違う声が流れていることがあって、そういう内の声をどうしても詩に入れたくなることがあります。現実に対するある種の「ツッコミ」みたいなものです。朗読することを前提に書くということはないですが、推敲するときに声に出して読んだりすることはあります。

 

――単に「書く」だけでなく、様々な他の芸術形態とジャンルを超えて一緒に活動したいという思いはありますか?

 

文月:何かに影響されて自分の作風が変わることにあまり抵抗がなくて、むしろ面白いなと思います。自分一人だとどうしても同じようなイメージを繰り返し書くことになってしまう。最初はただ書くということが喜びだったんですが、最近は逆に人から課題を与えられることで思わぬイメージが出てきたりして、自分がこういう詩も書けるんだなと確認できたりもします。

 詩って本当は何にでも使いやすいものだと思うんですよ。一行でも成り立つし、データ量も軽いし。本の上に載っているものが詩という見方ではなく、詩だとも思わないような形で載っていて、でもこれも詩なんですよって言えるような形で読まれるのが理想です。

 

――最近朗読イベントのようなものが増えてきていますね。

 

文月:増えてきましたよね! ブックディレクターの幅允孝さん、江口宏志さん、オツタヤミカさんが企画した「読書のフェス」が昨年の11月にありました。午前から夕方まで行うイベントで500人以上来場者がいたようです。そんなにみんな文学者や朗読に関心があったのかとびっくりしました。私の中では東日本大震災以降、そうしたイベントが増えているように感じます。「言葉のポトラック」もその一つかなと。

 

――朗読を楽しむという文化が少しずつ広まってきているように思うのですが、中学時代から朗読を続けてきた文月さんはそうした状況をどう思いますか?

 

文月:最近「詩×(しかける)」など、詩のイベントの企画に関わるようになり、自分の朗読会のプログラムの内容を考えたりもしています。どこかしらやっぱり参加型というか、お客さんにもマイクを持ってもらいたいなという気持ちがあって、オープンマイク制を採ったり、お客さん参加のワークショップを朗読会でやるつもりです。

 ふだん詩とかあまり読まないしよくわからないという人でも、朗読を聴いたらわかった気がするという感想をいただくことがあります。やはり紙の上にあるとどうしても、意味をとらえなくちゃいけないという意識に一行一行詰まってしまって、つまずいちゃうのかもしれない。朗読だと、わからない言葉があっても、声は一方的にどんどん流れてくるから、全体を緩くとらえることもできるかなと思います。

 あと、朗読に対して寛容な雰囲気、みんなが聴いてくれる雰囲気ができつつある気がするので、そこに乗っかってなにかやってみようかなと思っています。

 

文月

 

「添え物としての言葉」

 

――他にもコラボレーションのアイディアなどはありますか?

 

文月:本当に何でも挑戦してみたい。普通に詩を書いてくださいって言われるのも嬉しいんですが、ここに言葉が欲しいけど、何がいいかなっていう程度でも全然かまわなくて、「添え物としての言葉」にとても興味があります。雑誌を読んでいても、商品の写真があってその横に商品とは何の関係もなさそうな一行が置いてあったりとかすると、なんでこれ置いたのかなとか、どうしてこれが必要だったんだろうとか考えてしまう。

 言葉で空間を演出することにも興味があります。インスタレーションもやってみたい。言葉を変える力を持つ器に詩を投げてみて、表現の変化を楽しみたいです。

 詩に対して「可愛い」とか「かっこいい」とか言わないし言っちゃいけない雰囲気をみんな感じていると思うんですよ。でも形さえ違えば詩がもっと身近なものとしてとらえられる。そのような意味で、何かと一緒になることへの興味はすごくありますね。

 単純に作品は人の目に触れる機会があった方が嬉しいし、それが自分の書くことへの負担になるということはあまり感じないので、どんどんやっていこうと思います。

 

第二詩集に向けて

 

――現在制作中の第二詩集をということですが、第一詩集『適切な世界の適切ならざる私』とはどのように違う詩集になりそうですか?

 

文月:第一詩集(『適切な世界の適切ならざる私』)に関しては、いろんな人に読んで批評していただいたので、自分のものであるという気もあまりしなくて、ただその詩集が一定の評価をいただいたおかげで今も書かせていただいているという気持ちはあります。

 第一詩集『適切な世界の適切ならざる私』のイメージが、読まれた方には強くあると思うので、それをある程度引き継ぎながらも、自分はこういう風に変化したんだということを見せられるようにしたいと思っています。ほとんどが既発表作品ですが、順番を入れ替えたり改稿したりして、まっさらな状態から何か一つのものを作っているような感覚です。作品集というよりは一冊で一つの作品というイメージです。現時点では六月刊行を目標にしています。

 

 

 

●Information

4/6~4/19「あるいは佐々木ユキ」@渋谷UPLINK

http://www.uplink.co.jp/movie/2013/7582

 

 

 

●Profile

近影正面(小)文月悠光

1991年北海道生まれ。 2008年、第46回現代詩手帖賞受賞。2010年、第1詩集『適切な世界の適切ならざる私』(思潮社)で第15回中原中也賞、第19回丸山豊記念現代詩賞を受賞。エッセイ・書評などを執筆。ナナロク社のホームページにて詩を連載中。タイツブランドtokoneに参加し、タイツに詩の言葉を載せる。2013年6月、第2詩集『屋根よりも深々と』を刊行予定。早稲田大学教育学部に在学中。
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