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icon 2013.5.8

木村文洋×山戸結希×高橋和博クロストーク採録◆4/20「愛のゆくえ(仮)×あの娘が海辺で踊ってる(完全版)」上映を終えて

アツいぜ!対バン『愛のゆくえ(仮)×あの娘が海辺で踊ってる(完全版)』上映レポート

 

「HEATHAZE」創刊時に、木村文洋監督と山戸結希監督の対談が掲載された『愛のゆくえ(仮)×あの娘が海辺で踊ってる(完全版)』の上映会が、4月20日(土) にSpace&Cafeポレポレ坐でおこなわれた。

 

この上映会は、バンドのLIVE、つまり「対バン」ではないか。両方の作品の共通性や関係性といった意味合いを強調するよりも、「面白いからやってみたい」「セッションしてみようよ」という衝動。単独の上映では創り出せない磁場を生むには、お互いの映画と観客をぶつけてみるしかない。

前回のvol.1『へばの+愛のゆくえ(仮)』(ともに木村文洋監督作品)の上映が、企画の幕開けを告げるワンマンLIVEだとすれば、vol.2の今回からはガチンコの対バンLIVE。

当日は冷たい雨がそぼ降る中、100人を超える観客で会場はいっぱいになり、「上映会」を超えた熱気が充満した。

 

上映後の高橋和博(『愛のゆくえ(仮)』プロデューサー/撮影)×山戸結希(『あの娘が海辺で踊ってる』監督)×木村文洋(『愛のゆくえ(仮)』監督)クロストークは、観客を巻き込みながら話題が大きくカーブを描き、『あの娘が海辺で踊ってる』上映封印の真相が語られるという予測不可能な着地点へ向かっていく。

いま一番勢いのある映画監督・山戸結希、第1期完結と言っても過言ではない貴重な発言をここに採録!(取材・文・写真/加瀬修一(contrail))

 

 

木村文洋(以下、木村)今日は山戸監督に色々とお伺いしたいと思います。上智大学の哲学科に入学後、映画研究会を立ち上げて活動を始められたということですが、『あの娘が海辺で踊ってる(完全版)』(以降『あの娘』表記)を制作するきっかけをお訊きしたいんですが。

 

山戸結希(以下、山戸)はい、なんか、凄い熱気ですね。お腹空いてる方とかもいらっしゃると思うんですが(会場笑い)、どうか少しのお時間お付き合いください。よろしくお願いします。大学2年生くらいまで、哲学研究者になろうと思って勉強していて、それは簡単に言うと「本当のことを知りたいから、本当のことを言葉にしたいから、言葉にしながら本当のことを見つけたいから」という気持ちからだったのですが、2年生の終わり頃に、「言葉だけでは表現できないものがある」と感じていました。そのタイミングと同時に、3年生春に映画研究会立ち上げの勢いで人を集めて、夏に『あの娘』を撮影しました。翌4年生(2012年)の初夏に「東京学生映画祭」で上映されて賞(審査員特別賞)を頂き、その後、秋にポレポレ東中野、今年2月のオーディトリウム渋谷を経て、今日、最後にここで上映して頂いたという状況です。

 

高橋(以下、高橋):本当に『あの娘』は封印しちゃうんですか?

 

山戸:はい、もう今日が封印上映です。漬物石をここに置いて…!

 

高橋:漬物石(笑)

 

木村:本当にそうなんですか!?

 

山戸:東京では、この映画が誰の話題にもあがらなくなる頃まで上映はないだろうなぁと思います。

 

高橋:それじゃ、せっかくの機会なので、もう質問とか感想をうかがいながらお話を進めましょうか。

 

山戸:えっ、いきなりですね(笑)、みなさん大丈夫ですかね、どんなご意見でも、是非お聞かせ下さい。

 

観客①:今回の2本立ては、関連性があまりわからなかったです。あと『あの娘』の衝撃が強すぎて、ちょっと厳しい言い方かも知れませんが、『愛のゆくえ(仮)』は、僕の中ではゆくえ知れずになってしまいました。

 

木村:(仮)のまま、どこかに飛び去った感じでしょうか。

 

観客①:はい。『あの娘』は今日が2度目なんですが、それくらい衝撃が残りました。

 

山戸:そんな…ありがとうございます。

 

観客①:封印しないでください。

 

山戸:あはは、みなさんがころりと忘れた頃に再上映をやるつもりで考えていますので…

 

高橋:なかなか忘れてくれなんじゃないですか。

 

山戸:世間はきびしいですから、もうすぐにみんなの記憶から無くなると思います。

 

高橋:(笑)

 

木村:ありがとうございました。そちらの方、どうぞお願いします。

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観客②:今日は『あの娘』を目当てに来たんですが、僕は『愛のゆくえ(仮)』好きでした。何の前情報もなく拝見して、登場人物2人の会話も脚本が緻密でしたし、長回しの効果もホント凄いなと思いました。山戸監督の作品は、処女作の自由さというか、柔軟さがドドーンと僕に畳み掛けてきました。かたや『愛のゆくえ(仮)』は、カッチリと作られている感じがして、この2本立て上映はありだな!と思いました、という感想なんですが(笑)。

 

木村:ありがとうございます。いま処女作というお話がでました。哲学科で言葉による表現を2年間くらい考えていたわけですよね。実際の出身地ではない熱海を舞台に、17歳の高校生でAKB48に憧れる女の子というのは、モチーフとして長い間考えていたことなんですか。

 

山戸:それまでは、AKB48とかも特に意識的に見ていたわけではなくて…モチーフが先にあったというより、3年生の春にたまたま熱海に行った時に「容器っぽい土地」という感覚があって、あ、ここ映画になるな、と思いました。その容れ物に対して、風景や女の子や音楽を詰め込んで瞬発的にドラマを作ったのがきっかけです。初稿は一晩で書き上げたので、直そうかと思っていたんですが、初めての撮影の準備に追われてしまいあれよあれよで、結局そのまま撮影して今に至っています。ただその分、その日その時に考えていたことが強く反映された脚本だと思います。

 

木村:この作品を初めて拝見した時に、映画の背後にたくさんのスタッフの存在を感じたんです。撮影時のアルバムを見せて頂いたら、助監督の方たちと合宿していましたよね。撮影は、山戸監督がされていますが、実際スタッフの方はどのような関わり方をされていたんでしょうか。

 

山戸:熱海で3日間の撮影だったんですが、スタッフみんな女の子だったので、「人様の大事な娘さんを2泊3日なんて泊められないわ」と思って、助監督と役者さん以外は1泊2日で帰ってもらうシフト制みたいな感じでした。みんな順番でマイクを持ちあって、順番にお寿司を食べにいくという…

 

高橋:寿司食べに行くって、食事に出るってこと(笑)?

 

山戸:そうですね。本当はご飯とか食べるより今照明がもう一人欲しいって時もあったんですけど、みんな「結希先輩が撮ってるこれがまさかほんとに映画になるのかな?」みたいな感じもあったし、せっかく熱海まで来たんだからお寿司食べようっていう雰囲気がどうしても…

 

高橋:レジャー感覚で来てる(笑)

 

山戸:いや、もちろん自分は真剣に映画になると思ってやってたんですけど。

 

高橋:ちょっとダマして?って感じ。

 

山戸:いえ、はい、そうですね(笑)。「熱海でお魚食べ放題」って言って誘ったので、義理は果たさないとなぁと思ってました。でもスタッフのみんな、現場では本当に辛抱強くがんばってくれました。大学入ったばっかりの子たちが右往左往しながら、一生懸命働いてくれましたね。