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icon 2014.3.18

永山由里恵(響子役)×矢野昌幸(西森役)クロスコラム◆「イヌ」の女と「飼い主」の男の異形の関係を描く『イヌミチ』公開によせて(後編)

矢野昌幸(西森役)

 

「イヌミチ」は2013年3月10日にクランクアップした。

このコラムを執筆している今日は2014年3月11日。

 

だからちょうど一年前の今は、撮影が終わり朝まで打ち上げをして泥のようにぐっすり眠って起きて遅い朝飯を食べて「いいとも!」を観て「つるべがまたバカやってらぁ」なんて笑いながらまた眠っている頃だろう。

 

「イヌミチ」の撮影からほぼ一年が経ち、修了制作である「イヌミチ」の撮影の終了とともに第一期アクターズコースも卒業を迎え、それぞれが自分の進路に別れて、現在ではみんなが違う場所で活動をしているはずだった。

 

しかし、我々はまだ映画美学校にいる。

「イヌミチ」の劇場公開を控え、宣伝部としてここ三ヶ月間ほぼ毎日映画美学校で活動をしているからだ。語弊がないように書くと“我々”というのは、アクターズコース生の事ではなく、映画美学校の色々なコースに通う“「イヌミチ」をヒットさせる”という有志によって集った『映画「イヌミチ」宣伝部』のことだ。

 

「イヌミチ」を取り上げてくれそうなマスコミに連日電話、メールで交渉をする。もちろんみんな普段の生活があるから合間を縫って宣伝活動をしてくれているわけだが、「イヌミチ」宣伝部の中でも「イヌミチ」主演・宣伝部隊長の永山由里恵の仕事量はとてつもなく多い。彼女は日中仕事をしながら、休憩時間にメールで宣伝をしながら、そのあとは映画美学校に来て、終電まで宣伝作業をしている。休日ももっぱら宣伝活動。あげくは有給休暇まで使って宣伝活動をする始末だ。もちろん彼女の主演としての義務感がそうさせている事は想像に難くない。私は、宣伝部の下っ端として彼女の傍らでその姿を見ていて、「イヌミチ」から一年経った今、彼女は撮影時よりも「黒瀬響子」に近づいたように思う。アクターズコース卒業から一年経ち、いま「イヌミチ」の宣伝活動に関わっているアクターズコースは半数、その中でも毎日夜遅くまで活動しているのは永山と私だけである。孤立無縁な作業を続けている二人であるが、私もそろそろ限界だ。私が倒れたあとも、永山由里恵は「イヌミチ」のラストの響子のように、孤独に、一人で宣伝活動を続けていくのだろう。

 

31年間続いた「笑っていいとも!」も今年の3月で終わり、いいとも!メンバーでさえ解散だ。

二年間みんなと同じ学び舎で過ごしたアクターズコースを卒業した時、私は「このままずっと変わらず一緒にいるんじゃないか」という幻想を抱いていたが、この世の常、共同体はいつか解散する。さよならだけが人生だ。

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