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A,B,CIVILMAGAZINE 第3回 中山晃子――クリエイティブ集団・CIVILTOKYOが注目アーティストにインタビュー

「A,B,CIVILAMAGZINE」は、私たちCIVILTOKYOのアートワーク連載と注目のアーティストへのインタビュー連載のふたつの連載企画です。今回は注目のアーティストへのインタビュー連載。ご登場いただきますのは、アーティストの中山晃子さんです。

 

ところで時代はいま「アーティスト」で氾濫しています。誰も彼もところかまわず「アーティスト」な昨今、一時期の「カリスマ」という言葉の事例と共通するような気合いを感じます。それは以前よりも多くの人たちが、作り手に対して距離が近くなり、関心を持つようになったのと同時に、多くの人が作り手になれる環境が整ったことによって、「アーティスト」に入門するハードルが低くなったからかもしれません。

 

しかしむしろ「アーティスト」で溢れ返っているからこそ、本当に良い人はより輝く。中山さんの作品に触れた私たちは、その美しさと緊張感に一瞬で魅了されました。絵画表現領域だけでなく、装置製作やシステムプログラミングの構築までをもその活動領域とする彼女は、世間が捉えている「アーティスト」の枠を軽々と越えているのではないでしょうか。

 

2015年ではICCでの展示・パフォーマンス、TEDxHanedaでのパフォーマンスなど目覚ましい活躍をしている中山さん。その作品制作の源は「つくらずにはいられないほどの負荷、初期衝動」だと言います。しかしそれを作品にしていく過程で貪欲に他者を巻き込んでいく姿勢には、どこか儀式的な印象を受けました。インタビュー中、しきりに使っていた「上げる」という言葉の意味。本当の意味で共通に捉えることはできていないと思います。しかしそれは彼女なりの「物事にきちんと出会うための作法」とでも呼ぶべきものかもしれない、そう思いました。原体験をいまでも忘れずにまるで昨日のことのようにすらすら話す彼女に、私たちも忘れていた感覚をいまではまったく新しい感覚として思い出し、出会いました。この感覚を与えてくれる人こそアーティストである、そう再認識したのは言うまでもありませんでした。

 

01_akiko_nakayama_01中山晃子

 

色彩と流動性によって、うつろいゆく現象を絵画として描く「Alive Painting」。

さまざまな性質を持つ液体を扱い、見る者にさまざまな景色や生命を想起させる。

 

「私がワクワクするコラボは、自分と全然違うジャンルの人と関われる時」

――はじめまして。本日はよろしくお願いいたします。

 

中山晃子(以下、中山):よろしくお願いします。

 

――本日、ICCの展示(ICC キッズ・プログラム 2015「しくみのひみつ アイデアのかたち」 2015年7月18日~8月30日)を拝見させていただいたのですが、他にも最近の活動があれば教えてください。

 

中山:7月18日に羽田のTIAT SKYHALLで「TEDxHaneda」に出演しました。普段はプレゼンテーションのイベントなんですが、私はパフォーマーとして呼んでいただきました。

 

――Alive Paintingを披露されていますね。パフォーマンス中にお話をされているのは初めて見ました。

 

中山:普段は無言です。この時が初めてですね。

 

――即興のライブのような感じですね。

 

中山:本当は話すつもりはなかったんですが、スピーチ用のマイクの音の拾いがとても良かったので、リハーサルで使ってみて、これは楽しいぞと思って。リアルタイムで絵の具のコンディションやお客さんの様子を感じながら、脳のつまみをキュッと回すような感じで、アドリブでしゃべったり音の出方を調整したりと、ライブでやっていますね。

 

――インクが木の形になったりとさまざまな変化をしていますが(上記動画の2:19~)、どうやって実現しているのですか。

 

中山:この樹形図になるインクは、自分で調合しています。粒子の細かさや、油性か水性かなど、組み合わせで反応が変わります。TEDxでは、前のパフォーマンスで使った排水も使っています。排水をきれいな状態の絵の具にドロップするとうまく反応が起きるんですよ。

 

――絵の具が生きているみたいです。

 

中山:Alive Paintingでは、ここにいきもののようなものができたから、じゃあ名脇役を入れようとか、水をあげようとか、なにかのメタファーになるように絵を描いていっています。枯山水みたいな感じですね。象徴的に邪悪なものと繊細なものを出会わせたり、息を吹きかけて流れを蛇行させたり渦にしたり。最後に道をつくって泡をそこに流して…あなたがこの泡をなにに見立てるかっていうのはそれぞれの想像力にかかっています、っていうのをスピーチの締めにしています。

 

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TEDxHaneda「Borderless」/羽田国際線ターミナル TIAT SKY HALL

 

――今回、はじめましてなので、私たちの自己紹介もさせてください。私たちCIVILTOKYOは、3人でクライアントワークや作品制作を行っています。また、「CIVILMAGAZINE」というアーティストやデザイナー、ミュージシャンなど、ものづくりをしている人たち10組くらいに集まってもらい、こちらで1対1の組み分けをしてオリジナルのコラボレーション制作を行ってもらう、という雑誌を1年に1冊のペースで刊行しています。

 

中山:コラボレーションって、難しい言葉ですよね。

 

――コラボレーション、ですか。

 

中山:お互いが影響しあって共鳴するコラボレーションはやりたいし、自分の栄養になると思います。でも、そうじゃなくて絶対に関わりたくないコラボもあります。CIVILMAGAZINEは、いま見せてもらってすごく価値のあるコラボレーションだと思いますが…すごく怖い企画だな、とは思います。コラボレーション企画を立てて、説明する人の中で「コラボレーション」という言葉の意味をどう考えているのか聞いておきたいです。私は「コラボレーション」という言葉を使うのを避けるようにしていて、同じような硬さをお持ちかな、と思って…

 

――別ジャンルの人と関わることで新たな発見をしてもらえたらいいな、と考えていますが…

 

中山:でも、この本の人たちは、芸術っていうひとつのジャンルの人たちですよね。私がワクワクするコラボは、自分と全然違うジャンルの人と関われる時なんです。突き詰めて考えると、芸術っていうのもいろんな学問が栄養になってできています。私の作品の場合は水の波形や流動の現象の中でできる形態学や物理学、生物の発生に関わる生物学、色彩学、光学とかも…TEDの時に宇宙飛行士の方がいらっしゃって、いまやっていることは地球の重力下で絵が成り立っているわけですが、宇宙でやったら全然違う絵になるということを話したんです。そこまでフィールドを隔てた人とコラボするんだったら、それはいいコラボだと思うんですよね。

 

――僕たちも、ついこの間、BCL(http://bcl.io/)主催の「Bio Art Hackathon」(https://www.kanazawa21.jp/exhibit/ghost_hackathon/)というハッカソンに参加させていただいたのですが、実際に生物学や工学など、僕たちがいままで触れてこなかったジャンルの方々と制作をしたんですよ。新しく気づくことがあったし、次の発展が見えた部分はありました。

 

中山:BCLのメンバーで知り合いがいるのですが、彼らも、ひとつの軸があって活動しているわけじゃないですか。その中でいろんなコラボが生まれているんですよね。そういう風に人の中で起きてるコラボ、っていうものを見つけるのも面白いな、と思います。

 

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「AVALON」石川高×山崎阿弥×中山晃子/VACANT (東京)