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KILLER-BONG×マヒトゥ・ザ・ピーポー(下山)対談◆4/10「HERE AND THERE」出演の前に

――一昔前、新宿ならATGや蠍座、渋谷なら西武文化やジァン・ジァン、青山なら草月といったように、街ごとにスタイルや匂い、色があったと思うんですけど、いまって……

 

K:そのひとが行くところにそのスタイルが生まれるんじゃないか?土地のスタイルだって言われたら、俺はやらないだろうね。BLACK SMOKERのスタイルは俺らが作ったものだからやるけど、それはそのひとのものであってさ。そこにいるからそのスタイルってわけじゃないと思う。

 

――でもこの前「泡盛のルーツを探るトークショー」の手伝いに行ったんですけど、酒も音もあの世とこの世を結ぶ旅で、土地に根付いた「うぬい(思い)」から歌が生まれるって。

 

K:きみやっぱり頭おかしいね(笑)そのルーツと俺たち一緒にすんなよ。あの世とこの世があったら、神様がいたら、俺たちこんなことしてねえだろって。絶対そんなん信じないからな。あの世見せてみろよ、丹波哲郎だよ。イベント当日、きみが「うぬいの歌」でも作って歌えばいいんじゃないの。俺ボイパでもボイスギターでもスクリューボイスでもやってやるから。テープで切って途中で編集して、ループさせてやるよ。

 

M:ほんと俺、土地や名前に思い入れないからね。10回以上場所変わってるし、4回苗字変わってるしさ。ここにいるのもなんの意味もないよ。ただ速度早いし、ハードだし、臭いからってだけだよ。

 

K:「うぬい」は気分でしょ。

 

――それなのになんでおふたりは東京にいるんですか?

 

K:東京は絶対やってやりたいからここにいる。俺巨人大っ嫌いだし。そんな感じ。

 

M:いやーほんとそう。東京は日本の癌なんだよ、やるならその中心に行かないと。大阪で振り回してても仕方ないと思ったもんね。顎の下まで行かないとだめなんだって。巨人嫌いだし。

 

――じゃあいまこの時代にこの東京で、新しい歌を轟かせるには?

 

M:新しいって概念がわかんないもんね。まわりの環境や反応が決めるんじゃない?

 

K:俺もわかんない。はやりじゃない?流れていくものが新しいものでしょ。

 

M:それが自分にとっての新鮮な発見だったら、全部新しいよ。60年代の音楽だろうがエチオピアジャズだろうがさ、初めて聞いたとき新しかったよ。なんでこんな日本の演歌みたいなジャズやってんの?わけわかんないって。

 

K:あーそうだよね。「リンゴ追分」みたいなのばっかりなんだよね。島国や魂のことって演歌になりがちなんだろうね。

 

M:もともと音楽は宗教歌だからね。

 

K:新しいものってやっぱり流れていくもんで、服でも本でもなんでもそうじゃない。古いものも、新しく発見したものも、流行してるものも、同じくらい好きだね。いまはやってるものをやらないのが自分のやり方ではあるけどね。

 

M:好きなもん聞いてるだけだよ。カテゴライズも整理もできてないし、一緒くたに鼓膜にぶち込んだり、興味持ったりしてるから。

 

――逆に、リスナーの方が住み分けがすごいのかもしれませんね。どういうひとたちに音が届けばいいと思ってますか?

 

K:俺が昔から知ってる100人くらいのファンに届けばいいんじゃない。売ろうとしてないもん。そいつらが嫌だって言うんならつまらないことになっちゃうけど、困るようにやってやりたいし、常に裏切ってる。あと俺は褒められるのとか、金があるのとか絶対嫌だから。そういう気持ちじゃなんにもやりたくなくなる。その日その日の気分に合うようにやってるし、かっこつけんの無理。いいじゃん歯がなくたって、いいじゃんズボンに穴あいてたって、だけど「舞踏会に行きたい」みたいなもんなんだよ。小汚い格好でそこに呼ばれたいんだから、そのためのパスポートとして自分がやりたいことやるっていうのが必要なんじゃないの。「だから呼ばれたんだな」って立場と、「行きたいからお願いして行った」って立場は違うと思うんだよね。

 

M:確かにそうだね。

 

K:今日どうなのかってことなんだから。そうでしょ?明日どうなるかわかんねえじゃねえか。今日だってあと7時間後に大地震が起きたら、なにもかもなくなっちゃうんだよ。だから部屋にだってなんにもいらねえわけだよ。

 

M:俺はそれプラス、根本にイライラがあるよね。音楽の扱われ方しかり、なんでこれがこんなことになってんの?っていう。そこはもう燃やすしかないし、その間は鼻っ柱に飛び込むけどね。

 

K:俺は金がねえこととかさ、不満があって、腹が立ってるからやるっていうのもあるよ。でも自分に合う金が必要ってだけで、数億あったら音楽もなにもやらないんじゃない?旅して○○やって女と遊んで。まわりは質にこだわるからなかなか出なかったり、優柔不断だから時間かかったりするんだろうけど、俺が欲しい金は明確だから、文句言われてもいいものだから、明日出そうと思えばすぐ出せるんだよ。あとさ、いまの時代は音質のクオリティすらも作ったほうがおもしろいんじゃないか。悪けりゃ悪いほどよかったりするのかもしれないし。やりたきゃ自分でやりゃいいんだ、誰だってできるんだから。

 

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――そういえば、下山はもうゲリラしないの?

 

M:やりたいけど機材ないんだもん。こっち来るとき売っちゃったから。

 

K:なにゲリラって?

 

M:道頓堀とかでアンプ並べて、告知なしでよくやってたんですよ。それで警察が来て止められたら終わるっていう。

 

K:俺なんか機材全部借りもんだよ。機材買う金ないなら、ライブ会場で下山のテープ売ればいいんじゃない?俺は金なくなったら、アルバム作ってすぐ持ってくよ。1800円で5枚売れば1万円くらいになるじゃん、それでまたCD買って次の日50枚焼くの。

 

M:なるほど。ほんと金ないわー。結構速度もてあましてるんで、遊びたいね。

 

K:気軽に録れるひとがいればいいんじゃない。俺もいないからカセットテープに録るけど。俺もう韻踏みたくないもん、つい踏んじゃうけど。

 

M:あと大阪いたときは神戸とかに好きなレコード屋がいっぱいあって、よく行っては店長に音源聞かせてもらうっていう楽しみがあったんですけど、こっちは……

 

K:俺は普段、音楽全然聞かないよ。聞いてるとこの野郎こんなことしやがってって、腹立ってくるんだよね。

 

M:俺はほかに楽しいことないんで、ほんと聞きたいんですよねえ。東京はレコード屋さんがユニオンで片付いちゃうみたいなところあるよね。セレクトショップも高いし……行きつけのところがなくなっちゃった。

 

K:ものに対する愛着心が全然ないからなあ。いつもきょろきょろしてるよ。ハードだよ。

 

――ヒップホップってワルそうですねー。

 

K:ワルくないよ。

 

M:正直ってことだよ。

 

K:なになに中学のなになにっているじゃん。そのなになにが音楽家になってるのが多いんじゃない。