笹口
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笹口騒音ハーモニカインタビュー◆4/12「うみのてレコ発」主催の前に

――そうだね(笑)。でも、そのサマーソニックの衝撃だったり、さっき言ってた「常に変わっていくこと」っていうのももちろんあるんだろうけど、何でそこまでRADIOHEADが好きなんだと思う?

 

笹口:何でだろう……そういえば考えたことないな。

 

――じゃあ、仮説。トムって“CREEP”っていう曲を書いてるように、マイノリティの感覚を強く持ってる人だと思うのね。笹口くんも昔友達がいなかったりとか、そういう感覚って持ってる気がする。だからこそ、「自分を表現する」っていうんじゃなくて、「描写する」っていう表現の仕方をしてて、そこは通じるものがあるのかなって。

 

笹口:でも、たぶんわりといいトコの人ですよね? OASISとかの方が育ちは悪いというか。

 

――確かに出身は中流なんだけど、生まれつき目が悪かったから、それでいじめられたりもしてたんだよね。

 

笹口:なるほど……でも、単純にかっこいいと思うんですよね……例えば、『The King Of Limbs』を聴いても思ったんですけど、「新しいことをやってくれてすごい」っていうよりは、「こういうのを聴きたかった」っていうのをいつもやってくれるんですよね。ATOMS FOR PEACEもそうだったし、いつも新しくはあるんですけど、「こういうモードだよなあ、俺も」とか……つながってるのかなあ(笑)。

 

――根底に共通するものがあるってことだと思うよ。

 

笹口:ホントに恐れ多い話ですけど……いや、一方的に僕が好きなんです(笑)。

 

――さっき僕が言った、マイノリティの視点から自分の表現がスタートしてるような感覚っていうのはある?

 

笹口:RADIOHEADの歌詞をあんまりちゃんと見たことがないんですけど……あ、でもSFっぽいのはすごい好きです。ああいうのに憧れるんで、あんまりせせこましいこと言いたくないんですよ……言ってますけど(笑)。

 

――そう、だから歌詞そのものに関してはRADIOHEADと真逆なんだよね。

 

笹口:あ、まさにそうだと思いますね。

 

――でしょ? トムの歌詞は“CREEP”以降は意味を持たせないように、どんどん抽象的になっていったから。

 

笹口:そう、意味まったくわかんない。翻訳にしても、完全に訳者の意訳入ってますよね?

 

――だね。だから、トムの目線の先にはうみのての歌詞にも通じる今の社会の暗部へ向けた目線だったりも込められてるとは思うんだけど、歌詞そのものとしてはすごく抽象的で、笹口くんの具体的な歌詞とはむしろ真逆だと。それに関してはどう思いますか?

 

笹口:歌詞はでもわかりやすい言葉をずっと使っていくんじゃないですかね……ああいう抽象的なのは苦手っぽいんで、歌詞の面ではそんなに影響を受けてないかな。うん、歌詞はこれからもわかりやすく……これ(“ロックンロール(笑)”)もそうなんですけど。

 

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――これはその極致だよね(笑)。いつ頃書いた曲なんですか?

 

笹口:これは去年の秋ぐらいかな。さっきも言ったサマーソニックの映像で曲を作りたいっていうのは前からあったんですよ。自分の原点をどうにかして歌にしたいと思ってて、最初はすごい真面目な歌だったんです。「これで人生狂わされたぜー、夢見たんだぜー」みたいな感じの曲になろうとしてたはずなんですけど……なんでこんな風になっちゃったのか(笑)。まあだから、みんなが好きっていうものに対して、逆を言うのが好きなんでしょうね。“おんがくのじかん”って曲もそうだったんですけど、あの進化バージョンっていうか……曲調は退化してるんですけど(笑)。

 

――いちいち言うのもなんだけど、ホントにロックンロールを馬鹿にしてるわけじゃないってことだよね。

 

笹口:そうなんですけど、でも実際思うこともあって、いまだに「ロックンロール!」って言ってギターソロに入る人とかいるじゃないですか? 「それでいいのかな?」って思うんで。まあ、自分にも言ってるんですけどね。最後に自分にひどいプレッシャーをかけてるわけなんですけど(笑)。

 

――ちなみに、「ロッキンジャパン(笑)」「ロッキンノン(笑)」っていう歌詞も出てきますが、うみのてで『JAPAN』の取材受けたんだよね? この話した?

 

笹口:あ!そうなんですロキノン様に載せていただいたんですが、取材の前の日に、「ロッキングオンはシャレが通じないから、こういうこと言ったら一生JAPAN系のフェスに呼ばれないよ」とか言われて、「それはヤバい」と思って、先に謝っとこうと思ったんです。「これはロックは日本にあるのか?っていう問題提起なんで、批判してるわけじゃないんで」ってチラッと言ったんですけど、すごい微妙な空気になっちゃって(笑)。言わなきゃよかったと思いました。

 

――そっかあ、「取り上げてくれてありがとう」ぐらい言ってほしかったね。まあ、RADIOHEAD好きとしては「SNOOZER(笑)」って手もあったと思うけど。

 

笹口:俺もそれは考えました。あと「BUZZ(笑)」。もう誰もわかんない(笑)。

 

――「MUSICA(笑)」ではなく、あえて「BUZZ(笑)」!

 

笹口:イベントとかに呼んでもらえたら、替え歌にしますけどね。「MUSICA様(笑)」とか(笑)。

 

――でもさ、うみのての方はロックンロールの名門レーベルであるDECKRECからのリリースなわけじゃない? そこから作品を出す一方で、“ロックンロール(笑)”っていうのもすごいよね。

 

笹口:レーベルオーナーのネモトさんは、うちの前は住所(不定無職)と倉内(太)くんをやってたんですけど、その人も真逆に行きたがる人らしくて、すごいロックンロールなのやったから、今度は真逆のをやってみようと思って、声をかけてくれたみたいです。一回「ロックンロールすごい好きですよね、すみません」みたいなこと言ったんですけど、「自分も定型文みたいなロックンロールじゃなくて、ちゃんと新しいロックンロールみたいなものが好きだ」って言ってたから、全然大丈夫そうです(笑)。

 

――さっき「自分で作って自分で売るのが好き」っていう話もあったけど、レーベルに所属して活動してみてどんな印象ですか?

 

笹口:普通にびっくりしますね。お金を自分で持たなくていいっていうのはすごい驚きです。それが一番でかいかな(笑)。あとはふつうにバンドだけでやってたらできないつながりとかきっかけを作ってくれるのもでかいですね。今回もアルバムを高校からの憧れのAxSxEさんにとってもらえたのも、ネモトさんとAxSxEさんがもともと知り合いだったというのもありまして。

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