楽隊main
icon 2013.12.17

鈴木卓爾監督インタビュー「うさぎみたいに『見続けている存在』がいて欲しい」◆最新作『楽隊のうさぎ』公開によせて

「その都度パートは違っていても『映画』をやっているだけ」

―― 振り返ってみれば、鈴木さんは自主映画集団で映画を撮り始めてから、商業映画の道も模索されたとあります。「日本映画のいま」をどのように見ていますか。そのようななかで、ご自身はどういった立ち位置でものづくりをしていきたいと思っていますか。

 

鈴木:私にとっては、一緒に映画を作る集団を誰と組むかは大きい気がします。そのとき映画を作る「理由」も大きなものです。「理由」が見えた時にいろいろなことが具体的になっていくものなのだと思っています。そこには、誰に向けて作るのかも大きな事として、含まれている気がします。それは企画が生まれた段階で見えて来る事が多いです。そういった作業を作る過程で出来ないのはしんどいし、続けられないだろうなと思っています。

 

―― 監督のほかに俳優、脚本家としても活躍され、多彩な顔をお持ちです。それぞれに通底しているものはありますか。

 

鈴木:俳優、脚本家、監督と肩書き的にはそうなっていますが、「映画」はそのいろいろなものを内包しているので、俳優をしたり監督をしたりその都度パートは違っていても「映画」をやっているだけなので、多彩ではないなと思っています。自分の中では、ひとつの事をやっている気持ちです。ドラマの脚本を書く事もあるのですが、映画をやっている気持ちと変わらないところでやっています。

 

楽隊sub8

 

――それでは最後に。映画では、原作の「うさぎ」が擬人化され、主人公を音楽室へといざないますね。鈴木さんにとっての「うさぎ」はなんですか?

 

鈴木:自分にとってじゃないかもしれないですが、いつか自分もうさぎになるときがあるのかわからないけどそれも含め、映画の場でも、音楽の場でも、それだけじゃなくいろいろな場でも、うさぎみたいに「見続けている存在」がいて欲しいなと思うんです。

 

――貴重なお話、ありがとうございました!

 

 

 

●Information

楽隊のうさぎ

渋谷ユーロスペース、新宿武蔵野館、浜松シネマイーラほか全国順次公開中

HP:http://www.u-picc.com/gakutai/

 

 

 

 

●Profile

鈴木卓爾

1967年生まれ、静岡県磐田市出身。8ミリ映画『にじ』がPFF88にて審査員特別賞を受賞。92年、東京造形大学の1年後輩にあたる矢口史靖監督のPFFスカラシップ作品『裸足のピクニック』に脚本と助監督で参加。浅生ハルミンの同名エッセイを原作とした初の長編監督作『私は猫ストーカー』(09)は、第31回ヨコハマ映画祭において新人監督賞、第19回日本プロフェッショナル大賞において作品賞と新人監督賞を受賞。漫画家水木しげるの妻・武良布枝が著した自伝を原作とした長編2作目『ゲゲゲの女房』(10)では第25回高崎映画祭最優秀監督賞を受賞した。