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LLLL×セーラーかんな子×swaptv鼎談――謎多き電子音楽家とバンドの邂逅、あるいはインターネット/同時代の音楽/パンク・スピリットを巡って

周りが自分をどう見せるかみたいなことに頭が働きすぎてる(セーラーかんな子)

――いまでこそ、音楽的文脈に限定しない様々な要素が溶解したサウンドは当たり前になりましたけど、そういうデータベース的な音楽が明確に顕在化し始めたのって90年代だと思うんですよ。だからFKA twigsにポスト・ビョークというレッテルを貼ったり、ArcaとJesse Kandaの関係性にAphex TwinとChris Cunninghamを重ねたりするのかなと。

 

S:僕が90年代にサイバーを感じるのは、デジタル技術が台頭してきて、それに伴った作品が増えたからだと思うんですけど、いまはその手の技術が行き詰まってるから、回帰してるとこもあるのかなって思ってます。

 

L:swapさんはデジタル・テクノロジーのどの部分に魅力を感じてるんですか?

 

S:単純に最新技術が好きなんです。それをどう自分の作品に出すかというのは別なんですけどね。でも、未来への憧れがずっとあるんです。スローライフとか、ああいうのとは真逆に行きたいタイプの人間なんで。

 

――最高!テクノですね。

 

S:テクノロジーが大好きなので。テクノロジーと一緒に死にたい。

 

――テクノロジーというとやっぱテクノだと思うんですけど、テクノの未来志向な精神から影響は受けてますか?

 

S:未来志向は子供の頃からの感覚だと思います。僕らの世代って小学校の頃は未来はこうなるみたいな、21世紀への夢があったんですよ。実際はその通りにならなかったんですけど、その感覚はずっとあります。

 

L:それすごくわかります。21世紀への憧れもそうですけど、ノストラダムスの大予言や2000年問題から何も起こらず、じゃあ自分たちで作ろうみたいなところはあるんじゃないですかね。

 

――LLLLさんとswapさんて年齢近いですもんね。

 

L:近いです。それと、2000年代が来てすごく失望したのを覚えてます。The Strokesとか台頭してきたじゃないですか。僕も80年代の音楽が好きだから一概には言えないんですけど、ガレージ・ロックって後ろ向きというか、The Velvet Undergroundとかそっちのほうに行っちゃうのかみたいな。

 

2.5D × ZOOM LENS主催イベント「H」でのLLLLのライブ映像

 

――たとえばDaft Punkの『Random Access Memories』みたいな方向性は好きじゃないですか?

 

L:音自体が好きじゃないから、方向性まで入り込んで聴けてないです。swapさんはどうですか?

 

S:音は良いと思いました。レトロ・フューチャーというのも好きなので。

 

――いまLLLLさんから2000年代の話が出ましたけど、swapさんは2000年代どうでした?2000年代はThe Strokesの他にも、LCD SoundsystemやThe RaptureといったDFA周辺が牽引したディスコ・パンクもありました。

 

S:まさにドハマりしてました。Radio 4とかLiarsとか。あとデジタル音楽が好きなんで、Chicks On SpeedやInternational DeeJay Gigoloというレーベル周辺とか、エレクトロクラッシュと呼ばれていた音も聴いてました。もともとパンクが好きだったので、パンクとデジタル音楽が混ざったようで最高だと感じてましたね。

 

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左からLLLL、セーラーかんな子、swaptv

 

――かんな子さんは、いまのおふたりの話を聞いてどう感じます?

 

かんな子:パンク好きです。さっきも言ったけど、時代性という感覚が薄いので、音楽を聴き始めた頃からパンク、ロック、電子音楽とかが全部並列にあって、どれを取ってもいいという感じです。それと音楽は音楽、趣味は趣味みたいな、それぞれ別であまり関係ないかなという感覚があります。

 

――いまかんな子さんが話してくれた感覚って、LLLLさんとswapさんには理解できますか?

 

S:僕の感覚とは違うと思いますね。全然理解できないです。どっちが良いというわけじゃないけど、かんな子ちゃんのような視点で音楽を聴いたりはしてないし、これからもできないと思います。

 

L:僕は99年にNapsterが出てきた頃からすべてを並列な感じで見てるので、あんまりこの時代だからこれというのはないです。聴いてる割合は、過去のやつと最新の音楽がそれぞれ半分くらいなので、かんな子ちゃんの感覚に近いかもしれないです。

 

LLLL「Drowned Fish」のMV

 

――ちなみにLLLLさんはインターネット以降を表現しようという意識はあるんですか?

 

L:古い話になっちゃうんですけど、Web2.0の何がいいって、トップダウンじゃない構造を持ってるからなんですよ。いまはみんなが発信者になれる時代だけど、そういうのってパンク・スピリット、アナーキズム、ユートピアみたいなところがあるじゃないですか?インターネットがすべての情報を平等に扱うというネット・ニュートラリティーが叫ばれたりしてるけど、それって紙媒体、ラジオ、テレビよりも強いと思うから、そういう仕組みとしてのインターネットは好きです。正直、インターネットがアートという感覚はないですね。インターネットはあくまでもツールという感じです。

 

S:Web1.0と2.0の問題で言えば、Web2.0になってからSNSとか出てきて双方向になったじゃないですか?それはそれで楽しんでるんですけど、面白さで言ったら一方通行だろうと僕は思ってるんです。その感覚は§✝§にも出てるんですけど、いまはWeb1.0の、個人の想いだけが露出したような感じが失われつつある気がします。みんなTwitterの「Fav」とかFacebookの「いいね!」ばかりを気にしてるからつまらない。僕は反応というよりは、その人が持つ熱量そのものが好きなんですけど、そういうのがSNS時代になってから薄まっちゃったかなと感じます。

 

かんな子:私は一方通行のインターネットは通ってないんですけど、周りが自分をどう見せるかみたいなことに頭が働きすぎてるというか、叩かれないようにしようと気にしすぎてる気がします。