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icon 2015.2.14

LLLL×セーラーかんな子×swaptv鼎談――謎多き電子音楽家とバンドの邂逅、あるいはインターネット/同時代の音楽/パンク・スピリットを巡って

HEATHAZEは、「地方/都市、日本/海外、オンライン/オフラインを超えて、エッジが効いた人や場をポップに魅せるカルチャードキュメントサイト」だそうです。なんだか、ネット以降の世界を表象したステートメントで、興味深いですね。

 

ネット上にアップされた膨大な量のアーカイヴを介して、容易に過去~現在~未来にアクセスできる世界。そこでは、タイム・トラベラーにでもなったかのような全能感を得られます。80年代に行ったら次は30年代へ飛んでいくといった具合に。

 

そうした現況においては、影響を受けた文化などの個人的背景が他人とかぶることが少なくなったと思います。一口でリアルタイムと言っても、自らの青春時代と同じ時期に生まれた表現を浴びてきた人もいれば、ネットを通して過去の文化に触れ続けてきた人もいるのだから。いわゆる細分化というものです。こうして、絶対的とされてきた歴史や文脈は撹拌され、新たな価値観や視点が生まれてくる。それが今であり、多様性にあふれた未来なのです。

 

なんてことを、今回の鼎談記事を作るなかで思いました。鼎談に参加していただいたのは、Bad Pandaから「Transcribe」をリリースしたばかりのLLLL(フォーエル)、§✝§(サス)やde!nial(ダニエル)の中心人物として暗躍するswaptv(スワップTV)、そして、§✝§のボーカルを務め、DJとしても活動するセーラーかんな子。この記事に触れたあなたが何を感じ何を思うのか、筆者にはわかりません。ただひとつ言えるのは、あなたの中に浮かび上がった風景や感情が未来だということです。それは決して、誰かのものではありません。あなただけのものです。早川義夫も言ってたじゃないですか。「全員が同じ思想を持つことは、嘘なのである」って。(取材・文/近藤真弥、写真/福アニー、写真調整/松本亮太)

 

※セーラーかんな子の単独インタビューはこちら

※swaptvの単独インタビューはこちら

 

 

音楽やってる人って真面目な人が多いので、そういうのつまらないなと思ってしまう(swaptv)

――今日は集まっていただきありがとうございます。まずは簡単な自己紹介をお願いします。

 

LLLL(以下、L):2012年からトラックを作ってます。自分のBandcampから作品を出したり、2014年はZOOM LENSというレーベルから『Paradice』を発表しました。サウンドは、J-POPに影響を受けた電子音楽という感じです。

 

2015年3月15日(日)にPROGRESSIVE FOrMからリリースされる

LLLLのセカンド・アルバム『Faithful』より「Only To Silence ft.Metoronori」

 

――これまで聴いてきたアーティストは?

 

L:SoundCloudで流れてくる曲をバーっと聴いてるので、具体的なアーティストを挙げるのは難しいです。ドリーム・ポップとかレトロ・フューチャーとか、タグ単位では聴いてますけど。あと、特定のアーティストにあまり影響されたくないので、意図的にひとりのアーティストの曲を繰り返し聴かないようにしてます。

 

セーラーかんな子(以下、かんな子):2年前の2013年からDJ活動を始めて、それと同じくらいの時期に§✝§に加入しました。

 

swaptv(以下、S):swaptv(スワップTV)と言います。今やってるのは、§✝§(サス)とde!nial(ダニエル)というバンドです。§✝§は、始めた当初はSalemみたいなウィッチハウスに影響を受けていたので、そういう音を鳴らしてました。最初はリスナーとして聴いてただけなんですが、日本でウィッチハウスみたいな音をやるバンドが出てこなかったので、自分でやりたいなと思って始めました。de!nialはエレクトロ・パンクです。ホームページにも書いてるんですが、僕はPLASTICSが大好きで、あとAtari Teenage Riotみたいな狂騒感を出したくてやってます。

 

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――§✝§とde!nialの間に相互作用はなくて、完全に別個なものという感じですか?

 

S:始めたときは完全に別個だったんですけど、最近は§✝§の活動当初に掲げていたコンセプトにも飽きてきたので、自分のなかで融合しないかなと考えてます。

 

――それからビジュアル面なんですが、§✝§もde!nialもグリッチ・アートの要素を感じました。そうしたアートの文脈も積極的に取り入れてるんですか?

 

S:de!nialではグリッチを気にしてやったことはないです。ファンシーなものが好きなので、de!nialを始めたときは、PLASTICSの80’sっぽい要素を出しながら破壊していく感じにしたかったというのはあります。見た目から想像するものを壊したいと言いますか。§✝§もde!nialもそうなんですけど、僕は音楽というよりは、ビジュアルも含めた「存在」を提示したくて、見た人が何かを感じる驚きとか裏切りたいというのが基本的にあります。

 

――ライブ活動やイベント出演を重ねるなかで、音もビジュアルも違うけれど、共通する要素を持ってるなって人たちはいました?

 

S:§✝§っていわゆるイロモノとして見られると思うし、実際やってることもそうなんです。でも、そのことを全然恥ずかしくは思ってないです。イロモノをやると叩かれることもあるから、それが怖くてみんなやらないかもしれないけど、僕はやっていきたいです。あと、音楽やってる人って真面目な人が多いので、そういうのつまらないなと思ってしまうことが多くて。なので、音楽でバカをやりたいというか。そういう感覚でいうと、あんまりいないんですよね。でもNATURE DANGER GANGとかは、やってることは全然違うと思うけど、共感しました。

 

――ライブをご覧になったことも?

 

S:確か2回目のライブを観に行って、「これだ!」と思いました。

 

L:僕にとって§✝§は、イロモノというよりコンセプチュアル・アートな気がします。舞台演出やファッションも含めてやってますし。音も音楽だけじゃなくて、たとえばWindowsをシャットダウンするときの効果音のような、音楽じゃない音を使ってたりもする。僕は§✝§をイロモノと思ったことはないです。