「闇ポップ」を自称する鍵盤弾き語りのシンガー・ソングライター、しずくだうみが3rd E.P.『透明コンプレックス』をリリースした。HEATHAZEではお馴染み、きのこの精の作者・星川あさこによるPVも話題となった彼女は、バンドやアイドルとの対バン、大喜利出演、日々のツイ廃活動、満員となった初ワンマンなどを経て着実に知名度をあげてきた。
そんなしずくだが約半年ぶりに放つ新作は、弾き語りを基調にしたシンプルなアレンジで、これまででもっともリアルな彼女の姿=闇ポップ成分を多くパッケージしている。そもそも彼女のいう闇ポップとは、いったいなんなのか。今回は、新作のレコーディングを担当した吉田仁郎との対談を敢行。自らのことを「性格が悪い」と称する、しずくだの内に秘めた思いを探った。(取材・文/前田将博、写真/箪笥)
※しずくだうみプロデュースのアイドルユニット、ニュートリノ温泉のインタビューはこちら。
「私のことを嫌いな人が見たらわかるような仕掛けが随所に仕込んである」
――仁郎さんは、だうみさん(編注:しずくだうみさんの愛称)の音源のレコーディングやアレンジを担当していますが、ふたりはプライベートでも仲良しなんですよね。
吉田仁郎(以下、仁郎):二年ぐらい前に自分がやっていたバンドでキーボード弾いてくれる人探してて、当時しずくだうみって名前で面白いツイートをしてる人が鍵盤弾き語りやってるっていう噂をキャッチしていたので、知り合いを通して頼んで弾いてもらいました。でも、そのバンドは一回ライブやって終わったんですよね。そのあと、飲み友達みたいになった。
――家も近所なんですよね。
仁郎:俺が去年の頭に引っ越して、家が近所になった。それからお互いに飯に誘ったりするようになったんだよね。で、それまでは会社に務めて音楽制作してたんだけど、それを去年の夏前に辞めて、ぶらぶらしていてもしょうがないから家に録音ブースを作りたいって思っていたんですよ。そういう話をしたら、「私は音源録りたい」って言っていたので、録ることになって。
――そのときに録音したのが、前作の2nd E.P.『泳げない街』ですね。だうみさんとしては、あの音源の出来は満足していますか?
しずくだうみ(以下、しずくだ):いや、まだ全然詰められますね。
――まさかの(笑)。どういうところが不満なんでしょう。
しずくだ:まあ、時間がなかったんですけど(笑)。音色とか勾配とかですかね。
――でも、今作はまた仁郎さんにお願いしたんですよね。
仁郎:今回は弾き語りプラスアルファみたいな音源にしたいから、そもそもアレンジにあまり手をつけるなと言われました。
しずくだ:イメージと全然違うものになってしまったときに収集がつかないから(笑)。あと、お客さんに弾き語りの音源が欲しいと言われていたので。だから前作よりも弾き語りメインにしつつ、一方で、音源も弾き語りだと意味がないみたいに言う人もいるので、その間を探った感じです。
仁郎:難しいこと言うでしょ?「具体的にどこなん?」って聞いたら、「頑張って」って言われた(笑)。
――そこで一緒にアレンジを練ったりはしない?
仁郎:スタジオで一緒にアレンジ考えるとかは、全然ないよね。歌って去っていく、みたいな感じ。
――じゃあ、アレンジは仁郎さんのイメージが強い?
仁郎:俺のイメージでやっていいのかわかんないから、すごい悩むんですよ。でも、今回は「さようなら」以外はライブでいつもやっている曲で、自分も何回か一緒にギターを弾いているから、本当に弾き語りに少し音を入れるぐらいでいいかなって。で、その「さようなら」は、前作に近い感じでバンドっぽいアレンジにしてます。
――今作は弾き語りメインだからか、これぞ「闇ポップ」って曲が多いですよね。
しずくだ:そうですね。「さようなら」とかは完全に闇ポップを意識しています。なんか、前回はわりと人に「これを音源にしてほしい」と言われたものだけを選んだんですよ。だから今回は私の主観で選んでいます。
――「さようなら」はPVにもなっています。
しずくだ:このPVにはメタファーをいっぱい埋め込んであります。私のことを嫌いな人が見たらわかるような仕掛けが随所に仕込んであるので、「お前ら落ち込め!」みたいな。
仁郎:あてつけPVなんだよね(笑)。