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icon 2013.5.14

komori(壊れかけのテープレコーダーズ)インタビュー◆5/24、25自主企画「Document & Monument」の前に

サイケデリックな轟音を響かせながらも、その上に乗ったオルガンと男女のツイン・ヴォーカルにより、どこか優しくノスタルジーな情景を思い起こさせるバンド、壊れかけのテープレコーダーズ。彼らは2007年の結成以来、東京のインディーズ・シーンにおいて独特の存在感を放ち続け、凄まじい熱量を帯びたライヴでは観るものを圧倒してきた。そんな彼らのライヴに対する思いを、リーダーのkomori(Vo、Gt)に聞いた。また、彼らの自主企画には、灰野敬二やZoobombs、THEラブ人間、山口県在住のフォーク・シンガー佐々木匤士など、世代やジャンルを超えて実にさまざまなアーティストが出演する。そんな自主企画が、『結成6周年 2DAYS企画 at 東高円寺「Document & Monument」』と銘打たれ、5月24日(金)、25日(土)に2日間に渡って開催される。今回のインタヴューでは、自主企画の展望と、結成6周年を迎えるバンドへの思いなども、存分に語ってもらった。komoriの音楽やライヴに対する熱い思いを感じてくれ!(取材・文/前田将博、写真/福アニー)

 

 

――ずっとお聞きしたかったんですけど、バンド名の由来を教えていただけますか? いまやっている音楽とすごくフィットしているバンド名ですよね。

 

komori:バンド名の由来は、徳永英明の「壊れかけのRadio」ではないです(笑)。ダニエル・ジョンストンていうアメリカのローファイなミュージシャンがいるんですけど、その人が初期に作ったカセット・テープで録音した音源が、すごいチープな酷い音なんです。しかも彼はちょっと変な人で、カセットのダビングを知らなくて、人に渡すのに毎回その場で歌って録音してたっていう(笑)。

 

――それはすごいですね(笑)。

 

komori:その人の初期の録音集を聴いてたら、カセットの音がすごい切れ切れになっているんです。そういう儚いイメージが、自分の作りたかった音楽に対してあったんですよ。消え入りそうだけどなにかが聴こえていて、まさに壊れかけたテープレコーダーから聴こえてくるような音だと思いました。それで、壊れかけのテープレコーダーズという名前をつけたんです。あと、「~かけの」っていうどっちともつかない言葉がいいなと思っていて。「壊れた」でも「壊れてない」でもない、過程にあるような言葉っていうか。

 

――壊れかけの前にやっていたバンドの名前も「未だ定まらズ」なんですよね(笑)。

 

komori:なんかニュアンスが似てますよね(笑)。

 

――僕の長年のバンド名への疑問が解決できました。先日リリースされたシングル『踊り場から、ずっと / 羽があれば』についてうかがいます。表題となっている2曲は、歌詞や曲調も含めて、どちらも希望が見える内容の曲ですよね。

 

komori:2011年の震災のあとくらいに全然曲ができなくて何を作ってもパッとしなかったんですけど、あの2曲だけが残ったんです。でも、『ハレルヤ』に入れたい曲は決まってたからそこには入らないし、自分の中であの2曲は浮いちゃってて。羽とか、踊り場から空を見るとか、そういう合致するイメージがあって、その時の自分が見ていた景色があの2曲にうまく集約されている気がして、両A面シングルっていう形で出そうと思いました。あの2曲はセットになっているというか、アルバムが8曲とかで1つの作品になっているのと同じで、2曲で1つの作品だと思っています。

 

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――震災があって曲が書けなかったとおっしゃっていましたが、この曲にはkomoriさんなりの震災への思いが表れているのでしょうか。

 

komori:めちゃくちゃ表れてますね。なにを歌えばいいかとか、どんな言葉を発するかとか、たぶん誰もが意識したと思うんです。何も真実味が帯びないような気がしちゃって、「歌う声はからっぽだろう」って歌詞のとおり、からっぽと空がテーマな気がしています。確実なものを我々はなにか持っているのかっていう、不安や疑問、諦めが表れているんですかね。でも、「箱舟は来なかった」にも近いイメージがあるし、世界観自体は昔から変わらない部分もあります。どこかに希望を残したいんですよね。曲調のきらびやかさやキャッチーさでもいいし、テンポの軽快さでもいい。全部をダウナーな感じにはしたくないですね。

 

――今回のシングルには、ライヴ音源も収録されています。壊れかけはこれまでデモとして何枚かライヴ盤を出されていますが、プレスしたCDに収録するのははじめてですよね。

 

komori:前回のワンマンを収録した『HALF-BROKEN ANNIVERSARY』をCD-Rで作って、いまは廃盤になってるんですけど、やっぱりワンマンみたいな特別なライヴは残しておきたいなって思ったんです。あと、今回のシングルに入れた曲は、いままで出したアルバムのなかから1曲ずつ、ワンマンのテイクで気に入った曲を残しています。

 

――いままでのライヴ盤も個人的にすごく大好きなのですが、廃盤にしている理由はあるんですか?

 

komori:過程的なものがあっても面白いんじゃないかなって。僕らみたいなバンドって、ライヴでやった曲を盤にするっていう流れが強いから、未完成な段階のものをデモとして売るのも面白いかなって思います。